ホタテの大量斃死の素因問題(20)

   読者の森悦郎さんから、下記のコメント(青字)をいただきました。

 これに関する回答は、コメント返信欄に付記しておきましたが、この本文においても、その続きを披露しておきましょう。

 「
大船渡湾のカキ養殖場復興プロジェクトで、光マイクロバブルを供給したカキの心拍量が2倍以上になり、代謝率の大幅な向上効果が証明されました。
 大船渡湾では8月から2月まで連続して光マイクロバブルを発生させた結果、復興が成功したわけですが、24時間の供給で、その後ホタテを海に戻すのでは、素因(高水温、貧餌)が解消されない限り、漁師さんたちの期待には応えられないのではないかと思います」


 真に重要なご指摘をいただき、ありがとうございます。

 また、陸奥湾のホタテ漁に関して、親身な心配をしてくださり、感謝申し上げます。

 以下、より丁寧に解りやすく回答します。

         大量斃死の誘因と素因(11)

 まず第1に、この対策は、期間が3月から6月までの第一期における緊急対策的措置であることをよくご確認ください。

 この時期は、陸奥湾の水温が7~20℃であり、異常高温化がなされていない時期に相当します。

 したがって、この時期には、当然のことながらホタテの大量斃死は発生していません。

 しかし、その異常高温化が始まる前の対策が非常に重要だと判断し、このアイデアをおもいつきました。

 長期の異常高温化に備えて、それまでに可能なかぎりホタテを活性化させ、元気よく成長していく大切にしていく、これが、この時期の最大の狙いです。

 この時期において、ほとんど有効な対策が取られていなかった、これが、この三年間の壊滅的状況だったのではないでしょうか。

 第2は、大船渡湾とは大量斃死の状況が大きく異なっていることです。


 仮に、そこと同じ光マイクロバブル発生装置の配備を行ったとしても、それで救えるホタテの量はわずかであり、それでは、多くのみなさんが困ってしまいます。

 大船渡湾は、陸奥湾と比較して水深が浅く、せいぜい10~20mしかありません。

 また、東西方向には1~2㎞しかなく、ここに、最上流の盛川から河川水が流入してきますので、それと海水との混合水が南北方向に流下していきます。

 これと引き潮が合わさって、湾の入り口付近まで流れていきます。

 逆に滿汐の時は、上流に向かって遡り、河川水が上層、海水が下層という密度流になります。

 このように、大船渡湾は、上下流の河川水と海水の混合と拡散がなされている内湾ですので、陸奥湾のような二枚貝の大量斃死は起こりにくいのです。

 すなわち大船渡湾は、高温化しても、その海水を下流に流してしまいますが、陸奥湾では、それができないために、その高温水を、その東湾に溜めてしまうのです。

 水深は40m前後もありますので、これでなんとか高温化の被害を緩和してきたのですが、それが、この3年において限界に達し、良好な高温海水でホタテを育んでいたシステムが、逆に反転して、今度は大量斃死という「仕返し」をしてきたのです。
  
 したがって、大船渡湾における光マイクロバブル発生装置104機というシステムは採用できないのです。

 第3は、誘因と素因の明確化の問題です。 
 
 これらを明確にしておかないと、その対策法においては小さくない問題が発生します。

 陸奥湾における長期高温化は、大量斃死の素因ではなく「誘因」です。

 すでに、その理由については詳しく述べてきましたので、ここでは詳しく述べませんが、たとえば、2025年の異常高水温長期化においては、10月の分散時まで稚貝は生きていました。

 そして、無事分散が終了した後に、しかも水温が下がった後に、その大量斃死が起きたことから、それは誘因でしかないことは明らかなことです。

 万が一仮に、これを素因だとすると、この素因を解決することは、陸奥湾の長期高温化そのものを解決に導く必要性が出てきます。

 陸奥湾の面積は、1668㎢です。

 この広大な面積を有する陸奥湾の高温化を低温化することは不可能です。
 
 それでは、陸奥湾の海水は、その下層の低温領域にホタテ筏を沈めればよいのではないか、こう考えたくなります。

 すでに、この3年間において、そのような措置をなされた方々もいたそうですが、それはあまり有効ではなかったようです。

 なぜでしょうか?

 それは、陸奥湾においては、西湾から東湾に向かって海水が浸入してくる際に、西湾からの海水は、約2℃だけ低温になっており、反対に東湾の海水は2℃ほど高温化されていますので、その下部に侵入してきます。

 これが、東湾の上層の高温海水によって、その西湾から侵入してきた海水を温め、上も下も同じ海水温度になってしまうのです。

 こうして10月には、完全に上も下も高温水域になってしまいます。

 また、餌不足も誘因であっても、大量斃死の原因、すなわち素因にはなりません。

 これも、2025年の10月には水温が低下するとともに、餌不足も改善しかかったときに、被害の大量斃死が起きました。

 したがって、餌不足が大量斃死の素因にはなりえないのです。 

 ここで改めて、その誘因と素因を示しておきましょう。

 誘因1:異常高温
 誘因2:餌不足
 素因:ホタテ斃死による無酸素水塊の連鎖反応的拡散(仮説)

当面の対策問題(6)

 ①無酸素水塊の発生に伴う連鎖反応的斃死をどう防ぐのか?
 ②異常高温下においても、ホタテの体力低下をどう防ぐのか?
 ➂餌不足であっても、物質代謝量を増やし、ホタテの各部位の損傷をどう防ぐのか?
 ④陸奥湾は広大であり、養殖ホタテの量は莫大であり、それらの量的問題をどう解決していくのか?
 ⑤必要な緊急避難的措置をどう講じ、初期および中期的対策をどう練り上げるのか?
 ⑥これらは、平内漁協のみなさんをはじめとして、多くのホタテ漁師や関係者のみなさんの理解と協力なしには遂行できないことであり、それらをどう可能にしていくのか?
 
緊急避難的措置と初期および中期的対策(2)

 すでに、この問題については考察の途中ですので、可能なかぎり、それを重複させないように検討を進めます。

 まず、第1期における緊急避難的措置の問題の議論を続けましょう。

 これに関して、非常に重要なことは、陸奥湾が1668㎢という広大な海域であること、そして、そこでは膨大な量のホタテ漁がなされていることを考慮しなければならないことです。

 そこで、可能なかぎり、この広さと量の多さに関して有効な対策を考えよう、こうして考究した方法が、陸上における光マイクロバブル水槽供給方式なのです。

 この利点は、次の5つにあります。

 ①ホタテの稚貝をかなりの量いれても、光マイクロバブルを発生させておれば、大量斃死はほとんど起こらない。

 ②大量に発生した光マイクロバブルが、個々のホタテの生理活性(3倍開口、海水と餌取り込み、心拍波形の2倍化、成長促進などの作用)を誘起させ、ホタテに活力を与える。

 ③常に陸上から監視と観察ができるので、漁師や関係者のみなさんが、その作用効果を確認することができ、それを納得した場合には、この方式を連鎖反応的に増やしていくことが可能になる。

 ④漁協には水槽があり、それを借用でき、また、電源(100ボルト)の確保も容易である。電気代は1日144円、光マイクロバブル発生装置と200Wの小型ポンプがあればよい。これは非常に安価なシステムである。

 ⑤第二期以降の高温長期化に入ったときには、そのまま、これを活用できる。また、そのシステムに小型冷却器を配備することも容易に可能である。 

 しかし、ここで「24時間でホタテを入れ替える」という問題は検討の余地があります。

 なぜなら、光マイクロバブル水槽の中に、可能なかぎり長時間ホタテを浸潤させた方がより効果的なことは確実だからです。

 たとえば、ある漁協の管轄で、その光マイクロバブル水槽実験を行うとした場合に、漁師のみなさんは、おそらく「懐疑的」になっていて、「そんなことで上手く行くのか?」とおもわれるはずです。

 それでも関心は低くなく、その水槽実験が始まると、少なくない方が観察に来られるでしょう。

 そして、それが上手く稼働していると、自分のホタテも試そうとなさるでしょう。

 この時に、その投入ホタテの数と時間が必ず問題になります。

 そこで、ある程度充分に光マイクロバブルを供給させ、その活性の作用効果を誘起させるようにする、その最低の時間を24時間としたのです。

 これによって、自分のホタテを入れてくださいという漁師のみなさんの要望にある程度応えることができるようになります。

 おそらく、この時に問題になるのが、どこまでホタテの量を投入できるかであり、これを長万部の経験から、その目安として4万個にしました。

 実際は、これよりも多く入れたい、あるいは、4万個は多すぎるので減らした方がよいなどの意見が出るかもしれません。

 その具体的な数値は、現場の試験において確かめていけばよい、それが一番漁師のみなさんにとってよく、納得していただく方法ではないかと推察しています。

 「漁師の期待に応える」とは、陸奥湾の現地に則して、漁師のみなさんが納得し、信頼できる対策を提示することであるようにおもわれます。

 次回は、第二期についての緊急避難的対策について、より総括的な考察に分け入ることにしましょう
 (つづく)。

mutu126
AI画像(参考程度のイラストです)