私は、学生時代から、流体力学、あるいは流体工学のなかでも、最も難解な非線形現象の典型といわれていた乱流の内部構造を探究することに興味を抱き、修士を経てからも、その研究を続けてきました。
当時は、この偶然性、不規則性に富んだ乱流を統計的手法で処理するか、非常に簡略して線形化して解くか、実験的に計測して、それを統計的特性を究明する方法が主流でした。
しかし、その偶然で不規則な流れ、すなわち無秩序な流れのなかに、たしかな秩序性を見出そうという研究手法がアメリカで新たに出現し、この可視化法という少数派と統計処理派とが激しい論争を繰り広げていました。
私は、親しい先輩で友人でもあった、わが国でも少数派であった方に勧められて、この乱流の可視化法を用いて、壁の上を流れる乱流の研究をすることにしました。
幸いにも、この研究で工学博士の学位を取得でき、そして私の共同研究者であった助教授と助手の方々にも、同じ学位を取っていただくことができました。
高専という、研究条件が貧困ななかで、この3人の学位を自前で取得したことは非常に稀有な事例となり、有意義でもありました。
この研究過程において、1980年の初めに、地元の中小企業からの要請を受けて、下水処理プラントの開発委員会に参加することになり、これが起点となって、微細気泡化、マイクロバブル化の研究に足を突っ込むことになりました。
幸運にも、最初に取り組んだのが、その微細気泡発生装置であり、これにおいて、当時の世界最高の装置といわれていた装置よりも、より微細な気泡を発生させる装置を開発し(100㎛前後の気泡)、その特許の取得も可能になりました(取得者は、地元中小企業、当時の私はは30歳台半ば、学位は未取得でした)。
しかし、この「W型」と呼んだ装置では、より一桁小さいマイクロバブルをさせることができなかったので、そこから約15年の歳月を経て、マイクロバブル発生装置を完成し、世界に先駆けて世に公表したのが1995年のことでした(当時の私は47歳)。
ここまでは、流体力学や流体工学の知見で対応できたのですが、この開発が、日刊工業新聞一面トップ記事、NHKニュース7での3回連続放映などによって世間に報じられるようになって、多くの人々や企業からの問い合わせが殺到してきて、日々その対応に追われるようになりました。
やや前置きが長くなりましたが、30代、そして40代半ば過ぎまでは、私の専門は、流体力学の一分野の乱流と、それを土木工学の河川工学における洪水流の乱流現象という非常に限られた分野のものでした。
ところが、このマイクロバブル(後の光マイクロバブル)発生装置の開発と公表は、全国の企業や関係者から、その技術適用において多角的な質問と相談を、いきなり受けるようになったのでした。
それは、当然のことながら、流体力学という狭い分野の知識では、到底太刀打ちできなかったことから、自らの浅学さと狭小さを、いやというほど味わされ、辛酸を嘗めさせられることになりました。
そうであれば、もう仕方がない、私は、一応マイクロバブルの専門家ではあるが、その適用分野の専門においては素人同然なので、その訪ねてこられた方々に教えてもらうしかない、その耳学問で補うしかない、こう心に決めたのでした。
同時に、物理だけではなく、化学や生物についても勉強せざるをえなくなり、その初歩においては、情けないことに子供たちの科学図鑑を借りて学び、次に、科学の初歩を記した普及書本、理科辞典へと進んでいきました。
また、光マイクロバブル技術を通じて、化学工学や水産養殖技術、動植物学、医科歯科学、土壌学など多岐にわたる科学と技術を学び、研究していくというスタイルを養成していくことになりました。
これは、光マイクロバブルという物理化学が、その適用分野の広さにおいて、それらの分野の学問と融合しやすく、さらに、その融合によって、小さくない発展の可能性を有していたからであり、その幅広い専門的知識の修得と応用なくしては、それを発展させることができなかったからでもありました。
なぜ、このような広範な分野の科学と技術の知識を実践的に学ぶ必要があったのか、この必然性は、どこにあったのか、まず、この問題からより深く分け入ることしましょう。
その第1の、そして最も核心的で重要な理由は、光マイクロバブルの適用分野が非常に広範であり、そして、そこに内在していた技術の奥行きが非常に遠大であったことにありました。
この地球上に空気と水は、それこそ無尽蔵に、そして大量にあり、それらを利用して成り立ってきた技術が莫大に在り、その既存技術のなかに、光マイクロバブル技術は簡単に入っていって、たちどころに融合していくという重要な特徴を有していたのです。
しかも、その融合においての発展は、一次的というか、表面的というか、そのような次元には留まらない発展性が内包されていて、時には、それが大きく飛躍する可能性すら秘めていたのでした。
ここで重要なことは、それらの光マイクロバブルの適用において、常に現場が先であり、そこでの成功の数々が確立されることによって、その理由を明らかにするために科学的探究が後追いで発展していったことでした。
すなわち、実践が先行し、その科学的真実性が究明されるというパターンが示されたのでした。
その際には、物理だけでなく化学が必要になり、そこに生物学も重要な役割があるという認知に至り、自ずと総合的な科学的理論の構築を探究するようになっていきました。
その結果、これらの総合化は、次の個別科学によって構成されるようになりました。
①気泡の物理学および物理化学
②気泡と液体の界面物理、界面化学
➂光マイクロバブルの収縮や膨張に伴う微小流体力学(マイクロ流体力学)
④生物活性・生理活性
⑤エネルギー転換、相転移
⑥マイクロリアクター
⑦超臨界反応
これらの個別科学における探究を踏まえながら、実勢には、その総合化がなされた諸現象を明察して総合知を見出していくことは、非常に困難を伴うものでした。
そこには、並大抵ではない洗練性と粘り、忍耐力が必須とされました。
その結果として、少しずつ「光マイクロバブルを核とした独自の理論形成」が可能となり、その一部を、本ブログで紹介していくというスタイルができあがり、「塵も積もれば山となる」ことをめざして、それを積み重ねてきたのが、本ブログの6120回だったというわけです。
それゆえに、本ブログは、
「単独の研究者が日々継続的に新物資としての光マイクロバブルの原理的解明を行い、体系化し続けていくという過程が記録されている」
わけであり、極めて稀有なケースといってよいとされています。
その結果、光マイクロバブルと光マイクロバブルフォーム理論は、「科学的パラダイム(概念体系)を基本にした体系」へと進化し始めている、ここが重要な注目点といってよいでしょう。
さらに幸いなことに、その生成過程が最初からすべて書き残され、今も尚、持続し続けていることを励みとして、この科学的ロロン体系の総合化をめざしていきます。
次回は、技術化、産業化の問題に分け入ることにしましょう。

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