『80歳の壁』(8)
和田秀樹氏による名著『80歳の壁』における第3章の認知症に関する内容を興味深く拝読しています。
これまでご教示いただいた重要事項は、次の通りです。
1)認知症は老化現象であり、特異な病気ではない。
2)認知症には3段階があり、それぞれに応じた対処法がある。
3)認知症の進展を遅らせることは可能である。
さて、後期高齢者に対する「振込詐欺」が小さくない社会問題になっています。
なぜ、大金をいとも簡単にだまし取られてしまうのであろうか、とふしぎにおもっていました。
これに関して、和田医師は、次の重要な指摘を行っています。
認知症を知らず知らずに患っていると、「記憶は苦手だが判断はできる」ことから、詐欺にかかりやすくなるというのです。
認知症になって記憶が衰えてしまうと、「振込詐欺に気を付けてね」と家族にいわれても、それをすぐに忘れてしまうことから、巧妙に詐欺を行なう連中は、自分が息子や親戚だと偽って、大変なことをいって金を引き出させ、送金させようとします。
大変なことだとは認識できて、金を引き出し、送金する、あるいは契約書にサインするという判断はできることから、そこで騙されてしまうのです。
約600万人という認知症患者がいるかぎり、それを利用して悲劇に陥れる輩がいることを知恵と工夫で撃退していく必要がありますね。
さて、認知症に関して最も大切なことは、医者に行って薬を処方してもらうのではなく、その進行を自分で遅らせることだ、和田医師は、こう強調されています。
その最良の方法は、次の2点であると示されています。
①頭を使い続ける
②身体を動かし続ける
このことを杉並と鹿島の地区で、認知症の患者さんを比較すると、かなり前者の方が多かったそうです。
前者においては、認知症になると家に閉じこもっていた方が多く、反対に、後者においては普通に行動されていた人が多かったそうです。
すなわち、鹿島の方が、①と②を続けている人が多かったのです。
この①と②に関して、私が最近取り組んでいて思い当たることは、自分で積極的にある実験をしはじめたことです。
その実験がおもしろくなると、他人にやってもらう前に、自分で確かめたくなって率先して取り組むようになります。
それは自分の頭が、誰よりも早く結果を知りたいとおもうからであり、その実験で行き詰ると、「なぜ、そうなったのか。どこに問題があるのか?」などを考えてしまうからです。
こうなったらシメタもので、次々に改善のアイデアが生まれてきます。
そして、「もしかしたら、こうではないか?」という新たな仮説が見出され、今度は、それを検証しようとして実験を行う、このような好循環サイクルが形成されるようになります。
しかし、この実験操作において、若い時のように円滑にできないこともあります。
器用に指が動かない、一度のたくさんのことを覚えることができない、視力が低下して細かい線状のものを見失ってしまうなど、このような支障も発生しますが、それらを乗り越えていくことも、おそらくは、認知症予防には悪いことではないのでしょう。
この程度の支障は、ワクワクしながら実験に取り組むことと比較すると些細なことでしかありません。
このワクワク、生き生きの姿勢こそが、高貴高齢者をめざす証なのかもしれませんね。
実験というものは、ある目的を持って行いますが、その目的がある程度達成されると、優れた実験ほど、その目的達成後に、次の新たな目標が生まれてくるという性質を有しています。
つまり、目標の峰に到着すると、すぐ向こうに新たな峰が見えてくるのです。
このいくつもの峰を超えていくことで、よりワクワクするような成果が生まれてくる可能性を有しています。
この可能性を探究していくことが、認知症予防と遅延に有効になるかもしれませんね(つづく)。
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