国東ワカメ
国東半島の森のおかげで、国東沖、別府湾は豊かな漁場であり続けています。
しかも、瀬戸内海のように汚濁物質が流入し、海底にヘドロが堆積して、かつての豊穣な海を無くしておらず、海の幸が存在し続けています。
おかげで、新鮮で、それこそ生きた海の幸を、しかも安くて手に入るのですから、ここは魚好きにとっては天国、あるいは竜宮城みたいなところです。
すでに何度か、その新鮮な魚のすばらしさと安さを紹介してきましたが、たとえば、安岐港の競りで買えば、大分、別府で市販されている価格の約3分の1で得ることができます。
さらに、地元のスーパーで買っても、その価格は、市場で競り落とした額の約2倍です。
それゆえ、たとえば500円で競りで買えば、地元のスーパーでは、それが1000円、大分、別府に行けば、それが1500円に跳ね上がるという具合です。
東京や大阪などの大都市では、さらに高価格化していくでしょう。
仲買、流通によって、その価格帯が増加していっているのです。
こんな話を元NHKの伝説的なカメラマンのKさんと話をしていたら、かれが悔しがって、そうであれば、
「チルドで送ってください。その送料を出しても安く、それに、東京では、そんな白身の美味しい魚は手に入りません」
こういわれ、しばらくの間、こちらの新鮮な魚を送り続けたことがありました。
たとえば、こちの競りで買ったオオグチカレイは、約5000円でしたが、それは体長約50㎝、肉付きもよく、みごとな魚で、しかも生きていました。
これを受け取ったKさんは、小躍りして喜び、近所のみなさんを集めて宴会を開いて国東の海の幸を自慢されました。
おそらく、そのカレイを東京で買うとすれば、2万円はしたであろうと仰られていました。
さて、そのこの上もなく素晴らしい国東の海の幸をお隣のMさんの奥様が届けてくださいましこ。
彼女は、歌が好きで、かつては地元のカラオケ教室に通っていたそうです。
その彼女に家内が新たに製作した7枚目のCDを差し上げたことで大喜びされました。
このワカメをいただいた折に、家内が歌の練習をしているのをいつも楽しみにして聞いているそうでした。
この「クニサキワカメ」は、新鮮で見るからに艶があり、張りもありました。
早速、これを小鍋に入れて温めると、それが濃い緑色に変わりました。
頃合いを見て、それを鍋から摘まみ上げていただきました。
出汁は、醤油のカトレアと沖縄の完熟シークヮサーにしました。
何ともいえない柔らかさとコクのある味に感激しました。
この汁とのコンビが格別によく、次々にワカメを摘まみ上げました。
「これはいけますね!すばらしい」
ワカメは、意外に柔らかく、しかし、張りとうま味があり、これこそ、最高水準の味だとおもいました。
「これは、国東でないと味わうことができないね。
Kさんが生きていたら、さぞかしうらやましがることでしょうね!」
こうして1回目の試食をうれしく終えましたが、今家内に尋ねると、まだたくさん残っているそうです。
今夜もワカメの鍋、そして自家製の野菜も入れて、私にとっては、この上もなく豪華で素敵な寄せ鍋をいただくことにしましょう。
改めて、Mさんと国東の海の幸に感謝申し上げます(つづく)。

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