「一隅の灯」は宝になるか(10)
D君との共同実験が進んでいます。
先日来、家族に新型コロナウイルス感染者が出ていたとのことで、しばらくの間、この実験を中断していたものの、その安全性を確認してから、この実験を再開させました。
すでに述べてきたように、この実験における焦眉の探究課題は、光マイクロバブルフォームに関する物理科学的特性を明らかにしていくことにあります。
シャンプー洗浄の問題点
すでに述べてきたように、光マイクロバブルフォームとは、その溶液のなかに界面活性剤を含んだ状態において光マイクロバブルを発生させることによって形成されます。
界面活性剤は、親水性と疎気性を有する液体であり、これを水面に注ぐと、その親水性の成分が水面に接し、そして疎気性の成分が空中に向かって並ぶという性質を有しています。
しかし、もう一つの重要な性質は、水よりも重いという特徴を有していることです。
そのために、水表面上に広がった界面活性剤をかき混ぜると、その成分は、水中のなかに沈んでいきます。
それをさらにかき混ぜると、親水性によってより混合が促進されます。
この現象をイヌの洗浄を専門とするトリマーに則して考えてみましょう。
周知のように、イヌの毛はヒトより3倍小さく、かつ3倍多いことから、しかも、イヌは自分で、その被毛を洗うことができませんので、それをトリマーに洗ってもらっています。
この汚れを放置すると、その脂質の汚れに微生物が繁殖し、それが嫌な臭いの発生源になることで飼い主さんは困ってしまいます。
脂質の汚れは、水に馴染みませんので、単に水をかけて洗浄してもきれいにはなりません。
そこで、この洗浄を上手く行うためにトリマーはシャンプー(界面活性剤溶液)を使用します。
このシャンプーは、水によく溶けますが、その溶液だけでは、イヌの汚れを落とすことはできません。
そこで、そのシャンプーを水に浸されたイヌの被毛に振りかけながら泡立てを行います。
この泡が被毛の汚れに吸着して、それを被毛から剥がしてくれるので、この泡立てが非常に重要な技能でした。
いかに多く、しかも細かい泡を短時間に作り出せるかが、かつてのトリマーの腕の見せどころだったのです。
厄介な壁
この作業には、次の厄介な壁ともいってよい問題が付随していました。
①水で濡れた被毛にシャンプーを振りかけて、それを手で揉みながら泡立てをする作業が大変でした。
素早く指を動かして揉まないと泡立てができなかったからでした。
このよって、指を傷めてしまうトリマーも少なくなく、手荒れの原因となりました。
その傷にシャンプー成分が沁み込んでいくと身体によくないことは明らかでした。
②この泡立ては可能なかぎり多い方がよく、その大量の泡によって汚れを落とすことができたからでした。
しかし、この大量の泡立てそのものが容易ではありませんでした。
まず、シャンプーの使用量が少ないと、思うような泡立てが難しく、より多くの泡立てを行なうには、当然のことながらより多くのシャンプーを使用しなければなりませんでした。
しかも、シャンプーの使用量を多くしても、その泡立ての技能が優れていなければ、思うような泡立てを実現することはできませんでした。
すなわち、シャンプーの使用量を増やすことと、トリマーが指で泡立てることが深く結びついてこそ、大量の泡立てが可能になったのでした。
③しかし、これらの両立は、容易なことではありませんでした。
シャンプーを多く使えば、それだけ経費が嵩むことになり、素早く、そして力強く手もみをすれば、それだけ指を傷めやすくなり、薬代や病院代が必要になったからでした。
残念なことに、少なくないトリマーが、この手荒れのために仕事を断念せざるを得なくなっていたのでした。
これらの問題は、長い間、トリマーにとっては重大で深刻な問題として指摘され続けてきたことでした。
画期的なブレイクスルー
これらの難問を大きく改善させたのが、光マイクロバブルフォーム技術でした。
その特徴は、次の3つにありました。
1)わずか0.1%のシャンプー濃度において、大量の泡(光マイクロバブルフォーム)を発生可能にした。
2)従来のシャンプー使用量を極端に減少させ、大幅な節約が可能になった。
3)しかも、大量に発生した光マイクロバブルフォームをかけ流すだけで、しつこい油汚れを短時間に洗浄可能にした。
これは、トリマーのみなさんにとっては、「革命的ブレイクスルー(打開)」といってもよいほどの画期的な出来事でした。
なぜ、このようなブレイクスルーが可能になったのか?
この究明が、長い間、不十分な段階に留まっていました。
この入口を抉じ開け、その奥の方を覗いてみよう!
この端緒は、光マイクロバブルフォームの正体を探ることからしか始まらない、こうおもって、上記のD君との共同実験が始まったのでした。
この探索は、光マイクロバブルフォームに関する実験を丹念に繰り返し、その正体を見定めようという試みからなされるようになりました。
そしてまず、粘り強い実験を重ねて、
「光マイクロバブルフォームは、光マイクロバブルと比較してかなり小さい!」
という印象を得ることができました。
この印象を科学的に検証し、それを裏付ける実験を行ってきました。
「実験がいいかげんで、曖昧な結果であれば、だれも信用しません。
しかも、そのデータが少ないと、それにもケチをつけられます。
だれからも、文句をいわれることのない、そして科学的に認めざるをえないという実験とデータを蓄積していきましょう!」
これが、D君にいい続けてきたことでした。
こうして、たしかな実験の繰り返しとデータの蓄積が十分になされるようになりました(つづく)。
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