Mコメント(12-4) 
 
 Mさんから下記の青字の回答をいただきましたので、それに対するコメントを記しておきましょう(番号は筆者)。
 通常は、ブログ上の回答欄に記せばよいのですが、非常に重要なことを述べますので、この本文への記載としました。
 「①分かりました。29℃の高水温で一部のカキが斃死し、その腐敗したカキを分解するために大量の溶存酸素が消費され、連鎖的にその他のカキを連鎖的に斃死させたということですね。
 ②アメリカのAUBURN大学のBOYD教授の解説によれば、飽和溶存酸素の濃度は温度と塩分濃度と気圧の関数で、水温30℃、塩分3.5%、気圧760mmの時の飽和酸素濃度は5.610 mg/Lとかなり低くなります。
 ➂水産庁のサイト「カキの生息環境における問題点と改善技術」によれば、カキの生息可能温度は0~30℃、最適な水温は15~25℃、DOは6.5 ~ 8.6 mg/Lとのことで、5.610 mg/Lはかなり低く、しかも腐敗物の分解でDOが減れば、水域全体のDOがかなり低いレベルになると思います。
 ④光マイクロバブル発生器を設置すれば解決するでしょう。「プランクトンが少ないかも知れない」といったのは、地元の漁業組合の人ですが、4つの川が流れこんている状況なら多分プランクトン不足は起きないと思います」 

 ①について:

 これに関しては、前記事において示した、次の私の見解を再録しておきましょう。

 「8月の中旬からの海水温の異常高温化によって、海水温が29℃を超える日々が続き、その過程で、成貝のひとつが弱って斃死し、そのカキ殻のなかの身が腐敗することによって、無酸素状態になり、その無酸素水塊が流れ出し、周囲のカキを斃死させる原因となり、大量斃死の引き金となる。

 この引き金によって、カキ筏のカキが連鎖反応的に斃死に追い込まれていった。

 その後、大きなカキが入っていた殻は空っぽになり、そこに最後の放卵による妖精が付着して、小粒の半成貝が成長した。

 これを1月になって収穫し、カキ小屋のカキとして商品化した」

 この考察に関しては、次の2つの体験的学習が参考になりました。

 1)1998年の広島湾における赤潮の発生によって、カキの大量斃死があり、総額で45億円という壊滅的被害がもたらされました。

 このとき、公的機関から主張されたのが「密植説」であり、それは、カキを多く作りすぎて海が汚れたために、新種のプランクトンが発生し、それで大量に斃死したという、とんでもない見解でした。

 これに対して、被害現場の江田島湾におけるカキ養殖業者は、このように主張していました。

 「水深2m以下、すなわち、吊るされていた2mから10mのカキは全滅したが、2mよりも浅いところのカキのほとんどは生きていた」

 このことは、何を意味していたのか、現場のカキ養殖漁師と一緒に、この議論を詰めていきました。

 これは、水深2m以下と以上で、カキの生き死にが明確に別れていたという事実を述べていました。

 新種のプランクトン(ペテロカプサ・サーキュラリスカーマ)の大量発生(これを赤潮と呼んでいた)は、カキ筏の水深の浅い深いに関係なく影響を与え、それが心臓に入り込むと斃死するとされていました。

 また、このプランクトンの影響は、水深に関係なく、カキ筏に吊るされた水深10mにわたるカキに影響を与えていました。

 しかし、水深2mまでのカキはかなりのものが生きていて、それ以下は、全滅していたのです。

 それらは、明らかに水深2までと、それ以上において異なっていると推察されていましたが、その後者におけるカキの大量斃死の原因が究明されていませんでした。

 この水深2m以下のカキの大量斃死は、ヘテロカプサによって斃死したカキが腐敗し、さらに、そのヘテロカプサの大量死によって酸欠になったことが合わさって、すなわち両方による酸欠によってほとんどのカキが大量斃死したものだと考えられました。

 2)この大量斃死は翌年の夏にも発生し、光マイクロバブルを与えていなかった周囲のカキはほとんど斃死し、光マイクロバブルを与えたカキのみが生きていました。

 この事実を現場で確認し、光マイクロバブルの素晴らしさを改めて認識し直しました。

 この背後には、前年と同じように、その植物プランクトンが発生していたにもかかわらず、それが詳しく公表されていなかったことから、この斃死問題が明らかにされていませんでした。

 いつもそうですが、都合の悪い情報は常に秘匿され続けるのです。

 この現場では、大きなカキの殻のなかには身がないものが多くありました。

 また、最近死んだという腐敗したカキの身が流れ出しているのも目撃しました。

 これは、ヘテロカプサ赤潮プランクトンによって斃死したカキの群れが、腐敗し、それによって周囲の溶存酸素成分が吸収され、その結果として大量のカキの斃死現象が起きたことを示していました。

 今回の生浦湾におけるカキの大量斃死の引き金は、異常高温に伴う斃死が誘起され、さらに、そのカキの斃死の群れによって酸欠現象が発生したことにあるのではないかと推察したのでした。

 ②と➂について:

 これはご指摘の通りです。

 溶存酸素濃度が低下して4㎎/ℓ程度のなるとカキは、約3日しか生命を維持できません。

 また、1㎎/ℓでは、一日も持たずに死んでしまいます。

 広い海ですので、そこでの溶存酸素濃度を急速に改善することは容易ではありません。

 また、それを達成するには、非常に大規模な光マイクロバブル発生装置が必要になります。

 ここで非常に重要なことは、溶存酸素濃度が低下している海域において、それを改善することがカキの斃死防止には必要なことですが、それは容易ではなく、時間を要することなのです。

 溶存酸素濃度の改善は、呼吸活動の手助けにはなりますが、それによって生物活性作用が生起し、低溶存酸素濃度下の海であっても、生き抜くことは難しいということです。

 すなわち、溶存酸素濃度の改善は、酸素呼吸に有用であるが、生物活性には結びつかない、低溶存酸素濃度下において、生命活動を活性化させることには強い寄与をもたらすことができないのです。

 もっと簡単にいえば、酸素には、生物活性要素が認められない、といえます。

 また、溶存酸素不足の海域において、溶存酸素を改善していくことは有用ですが、逆に、豊富な溶存酸素下の海においては、それ以上に溶存酸素濃度を増やしても、その水生生物の活性化には結びつかない、ということでもあります。

 以上のことをよく踏まえ、より科学的で、正しい理解をよろしくお願いします。

 ④について:

 別稿でにおいてコメントしていますので、ここでは省略します(つづく)。

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英虞湾真珠筏において発生させた光マイクロバブル(木原英雄カメラマン撮影)