Mコメント(12-3) 
 
 Mさんから下記の青字のコメント(文中の〇番号は、筆者によるものです)に関する回答の続きです
 以下(●印の黒字の文章)が返信です。
 ④「身が小さかった、死んだカキが多かった」というのは、要するに『カキの代謝活動が不十分だった』ということで、その原因は産卵に相当なエネルギーを使ったり、プランクトンが減ったりしたことが原因かも知れません。水温が異常に低かったということは無さそうです。水温に問題が無い場合、代謝を活発にするためには、溶存酸素レベルを上げ、エサを供給することですが、先ず水中の溶存酸素レベルの測定から入るべきだと思います。

 ●この死因に関する考察に関しては、上記のものとは異なる見解を有しています。

 まず、カキが小さかったことと斃死との関係を考察してみましょう。

 カキがいずれも小さかったということは、成長期間が短いことを意味しています。

 すでに、そのことを述べてきましたが、その小粒のカキは、9月下旬以降に妖精が定着して育ったカキであろうと推察しています。

 その頃になって水温が低下し始め、ようやくカキの妖精の定着が起こり、そこからカキが稚貝へと発育し、その延長で小粒のカキばかりが発生して今日に至ったのだと思います。

 すなわち、小粒のカキとは、生後数カ月しか経過していないカキであるといえるのではないでしょうか。

 そこで、7割が死んだ、とくに大きなカキが斃死したと述べられていますが、その証拠が、大きなカキの殻として残っています。

 この大きなカキの殻に、真に小粒のカキが入って成長している様子も映像で示されていました。

 これは、もともとそのカキ殻で育っていた大きなカキが斃死し、それが腐敗して流れ出し、無くなった後に、放卵されたカキの妖精が付着して育っていったことを示唆しています。

 これらをまとめると、以下の推察が可能になります。

 8月から9月にかけて、29℃以上の異常高温が続き、カキの物質代謝が不可能になり、その一部が斃死して腐敗し、その腐敗水塊、すなわち無酸素水塊が大量に形成され、それによって連鎖的に大量斃死へと向かっていった現象が発生したのではないか。

 それによって、大きなカキのほとんどが斃死し、カキ殻のなかは空っぽになって、そこに新たな妖精が付着して育ったために、小粒のカキしか生産できなかったということができるでしょう。

 たしかに、産卵に、あるいは放卵に体力エネルギーを費やすことは事実ですが、それによって、カキ自身が大量に斃死してしまったという見解には無理があると思います。

 なぜなら、カキの産卵には数か月を要しますので、それを放卵した後に再び産卵するには、それに近い期間が必要になります。

 カキは、夏になって一旦放卵を終えると、身体はペシャンコになって痩せますので、そこから身入りをし始め、まずは、自分の身の成長に努めます。

 この成長には、餌を摂取しながら物質代謝を行なうことが必要になります。

 この時に、海水温が29℃を超えると、その物質代謝能が低下しますが、それでも、その産卵とそれに続く放卵によって、自らの命を失うまでには至らず、それが低下したままに生命を持続させたのではないかと推察しています。

 したがって、海水高温化の持続によって、産卵と放卵が繰り返すことによってカキの大量発生が生起したという説には、かなりの無理があるように思われます。

 このカキの大量斃死は、非常に重大な問題ですので、この真の原因を科学的に究明することが大切です。

大量斃死問題の本質は?

 この観点に基づいて、私が、この大量斃死問題を推察すると、次のようになります。

 「8月の中旬からの海水温の異常高温化によって、海水温が29℃を超える日々が続き、その過程で、成貝のひとつが弱って斃死し、そのカキ殻のなかの身が腐敗することによって、無酸素状態になり、その無酸素水塊が流れ出し、周囲のカキを斃死させる原因となり、大量斃死の引き金となる。

 この引き金によって、カキ筏のカキが連鎖反応的に斃死に追い込まれていった。

 その後、大きなカキが入っていた殻は空っぽになり、そこに最後の放卵による妖精が付着して、小粒の半成貝が成長した。

 これを1月になって収穫し、カキ小屋のカキとして商品化した」

餌不足で大量斃死が発生するか?

 さて、もう一つの論点は、プランクトンが少なすぎて、飢餓状態になってカキの大量斃死に結びついたという見解についてです。

 この問題では、そのプランクトンの発生が少なかったという判断が、いつの時点でなされたかが重要です。

 生浦湾では、小さいながらも4つの河川があります。

 ここからは、降雨があるたびに、地上の栄養物質が湾内に流れ込みます。

 また、この湾の最奥部には、たしかに川は存在していませんが、周囲の山間部から流出してきた雨水が、この湾内に集中的に流入してきます。

 これらの河川と雨水の流入によって、生浦湾は、的矢湾と同様にカキの好養殖場となってきました。

 ここで重要なことは、その春夏場、すなわちカキの成長期においてプランクトンの発生が十分あったのかどうかを明らかにして、その斃死問題を考察することです。

 冬場になって、上層と下層の温度差がなくなると、海水の透明度が高まりますが、それをプランクトンが少なかったといったのであれば、それはかなりの見当違いの見解といえます。

 繰り返しますが、最も重要なことは、春と夏場において、プランうトンの発生があったのか、なかったのか、そして後者であったならば、それが大量斃死に結びついていたのかどうか、この科学的調査結果が示される必要があると思います。

 私は、このエサ不足によって、カキの大量斃死を招くことは、おそらくないであろう、と推察しています。

 なぜなら、貧栄養の海であっても、全国的には、カキが育っていて、餌不足によるカキの大量斃死が起こったという事例を見聞したことがないからです。

 以上が、私の考察結果です。

 このカキの大量斃死問題の究明と改善を地元漁協と自治体が中心になって、みんなで取り組む必要がありますので、そのことを付記しておきます。

 なお、下記については、コメント不要と思われますので、よろしくご高配ください。

  ⑤栗原さんは長崎の水産技術研究所の「養殖部門」の主幹研究員です。大成先生は有明海のノリの研究で水産技術研究所とはおなじみだと思います。一度栗原さんに大船渡のデータを見せたらビックリすると思います。光マイクロバブルを吸収したカキの心臓の血流は2倍に増加しています。血流の増加はカキの細胞の代謝の活性化が原因であり、通常は水温12℃以下ではカキは成長しないのですが、大船渡の8℃の水温(1月の平均水温)でも成長を続け大きくなりました。日本混相流学会の研究報告書とYOUTUBEの動画を見れば、ビックリするはずです。


(つづく)。

aki
 生浦湾で育った立派なカキ(再録、鳥羽市観光協会公式サイトから引用