①三重県鳥羽市のカキ養殖場で大量のカキが死んで地元の人たちが大変困っています。大成先生の出番だと思います。2025年1月20日YAHOOニュース・FNNプライムオンラインの報道です。
●重要な情報の提供、ありがとうございました。早速、下記の報道を含めて検討を行いました。
②目の前の生浦(おいのうら)湾で育てた「生浦カキ」の蒸しカキや焼ガキの食べ放題が人気だそうですが、2025年は例年よりカキの成長が遅く、身が小さめ、死んだカキも増えている。多いときは7割が死んでいる。三重県の養殖カキの生産量は減り続け20年前に比べると3分の1ほどに減少している。水産研究・教育機構の栗原健夫主幹研究員「水温が上がることによって、特に夏7月前後ですね。マガキの産卵期ですので産むのに相当なエネルギーを費やしてしまって、死んでしまうと言ったことは懸念されています」。
●まず、カキが7割も斃死するという深刻な事態について考えてみましょう。
このカキの様子を映像で拝見しました。カキの殻は平年並みに大きいにもかかわらず、身の方は非常に小さいことが指摘されていました。
最初に注目すべきことは、カキの殻が大きく成長していることです。
このカキの殻は、カキの成長とともに形成されますので、そこまで大きくなるには2年前後の時間を経過しているといえます。
ここで現場の漁師の証言によれば、大きいカキほど早く、かつ多く斃死していることが明らかにされています。
これは、ある意味で当然のことであり、小さくて若いカキは強く、大きなカキほど弱く、s斃死しやすいのです。
自分の体力を維持するために、まず溶存酸素を吸収し、そして餌のプランクトンを摂取しなければなりません。
この物質代謝活動が不可発になると、カキは衰弱し、最後には斃死していくことになります。
これが斃死してしまうと、カキの身はドロドロに溶けて流れ出し、カキ殻だけが残ります。
そのカキ殻に再び、カキの妖精が付着し、そこで生息しながら成長をしていきます。
しかし、その時には、すでに夏が終わって秋に向かっていますので、カキは、水温の低下と共に最後の放卵を行います。
じつは、広島湾のカキ養殖もそうですが、8月のお盆過ぎにかけてカキの放卵が起こるのが正常な現象です。
カキも、これから水温が下がるので、そろそろ放卵を終えて、子孫を残そうとするのです。
この放卵後は、一遍に身体が痩せてしまいますので、それを補おうと身入りに専念する、これがカキの習性です。
なぜ、カキが小さいのか?
テレビの映像では、大きなカキの殻で、みすぼらしい、親指くらいの小さなカキを、みなさんがいただいていました。
もっと大きなふくよかなカキを食べたいという顔をなさっていました。
この小さなカキから何がわかるか?
これを推察することが重要です。
この小さなカキの成長具合を観察して、ここまでのサイズになるには、おそらく3カ月前後を要したでしょう。
それを考慮すると、カキが放卵して、その妖精がカキ殻の内面に付着して、そこから成長をしてきたと考えられることから、その放卵の時期は8~9月前後の時期だったと思われます。
周知のように、じつは、この時期に海の温度は最も高くなりますので、それによって、海洋生物は生命の危険を感じるようになります。
「海は広いな、大きいな!」の歌にあるように、そのために海の温度はなかなか上がらないのですが、近年、夏場の異常高温によって海の温度が上昇し始めています。
たとえば、富山湾においては、かつてないブリの豊漁が続いています。
南の海にいたブリが、海水温の上昇とともに北上していったからでした。
魚であれば、泳いで冷たい海の方へ移動しますが、貝は身動きできません。
大量斃死による生産額の激減
さて、カキの7割が死に、生産額が3分の1に減少したということは、非常に重大な問題です。
三重県は、的矢カキを始めとして、かねてよりカキ養殖が盛んで全国的にも普及して広く好まれてきました。
これをどう防ぎ、抜本的な改善によってかつて以上の生産額を確保していくことを何よりも優先して考える必要があります。
そのためには、この大量斃死の現状の原因解明と有効な対策が必要になります。
たしかに、研究員のご指摘のように、カキは産卵から放卵によって大量のエネルギーを消費しますが、それは古来より自然に行われてきたことでもあります。
問題は、その自然の生殖活動が、なぜ困難になってきたのか、その困難とは何か、これらを本質的に究明する必要があります。
そのために、この生浦湾の地理的条件、降水量、海水温、カキ養殖の方式などを詳しく調査する必要があります。
同時に、夏場の異常高温が、どこまでカキの生殖活動にどう影響しているのか、この究明も重要と思われます。
大量斃死と生産額の激減という問題は、単なる「懸念」という言及で済む問題ではありません。
次回は、下記の➂~⑤の問題に関する回答を含めて、より詳しく分け入っていくことにしましょう。
③栗原研究員によれば、ポイントは海水温の高さである。カキは夏に産卵して秋以降に栄養を蓄えるが、水温が高いと夏に何度も産卵してしまい力を使い果たしてしますのではないか。また、弱ったことで他の魚に食べられたり病気にかかりやすくなったりするのではないか。地元の漁協関係者「多分エサ不足が一番の原因と思いますね。カキが食べるプランクトンがいなかった。」(東海テレビ)
YOUTUBEの動画もあります。https://www.youtube.com/watch?v=n0pgcmDKdzA
④身が小さかった、死んだカキが多かった」というのは、要するに『カキの代謝活動が不十分だった』ということで、その原因は産卵に相当なエネルギーを使ったり、プランクトンが減ったりしたことが原因かも知れません。水温が異常に低かったということは無さそうです。水温に問題が無い場合、代謝を活発にするためには、溶存酸素レベルを上げ、エサを供給することですが、先ず水中の溶存酸素レベルの測定から入るべきだと思います。
⑤栗原さんは長崎の水産技術研究所の「養殖部門」の主幹研究員です。大成先生は有明海のノリの研究で水産技術研究所とはおなじみだと思います。一度栗原さんに大船渡のデータを見せたらビックリすると思います。光マイクロバブルを吸収したカキの心臓の血流は2倍に増加しています。血流の増加はカキの細胞の代謝の活性化が原因であり、通常は水温12℃以下ではカキは成長しないのですが、大船渡の8℃の水温(1月の平均水温)でも成長を続け大きくなりました。日本混相流学会の研究報告書とYOUTUBEの動画を見れば、ビックリするはずです。
(つづく)。生浦湾のカキ(鳥羽市観光協会公式サイトから引用)
コメント
コメント一覧
① 鳥羽の養殖場に行ったが、大きな川がなく水深8、9メートルくらいで底まで透き通っており、これではプランクトンは少ないかもしれない。
② 「三倍体牡蠣」という産卵しない種類のカキがあり、夏でも産卵しないので1年中出荷できる。値段が高いので食べ放題は無理かも知れない。
「三倍体カキ」を調べたところ、東かがわ市で養殖を開始したところがありました。吊り下げ方式でなく、縦横1メートルくらいのかごに入れる「シングルシード方式」で、欧米の方式だそうですが、カキの状態を用意にチェックできること、かごをひっくり返すことで、カキ同士がこすれ、摩擦によりホヤなどの稚貝が付きにくくなるという特長もあります。24年から開始し、25年2月に初出荷だそうです。
上記①の専門家の生浦湾の観察は、いつ行われたのですか?
②の三倍体カキは1年中出荷できるとありますが、本当に出荷されていますか?夏でも出荷可能といっておられますが、そのカキは細菌検査においてパスしていますか?
三倍体カキ養殖によって子孫が得られなくなると、どうなりますか?
3倍体のカキはコストが高いので食べ放題は無理だろうというのは、生浦湾のYOUTUBEに対する専門家らしき人のコメントです。
鳥羽は視察に3回ほど行ったのでほんまに気の毒としか言いようがないです••• 見た感じですが、内湾で大きな川もなく牡蠣筏が多いので水深8〜9mぐらいでも底が見えるぐらい透明度があったので、これでよく牡蠣が育つなぁ?と思っていましたが、今となってはやっぱりか〜と••• 仰る通りこれからはシングルシードが主流になるかも?しれませんが、値段が高くなるので消費者が付いてくるか?ですね? 今までのように牡蠣食べ放題とかは無理かもしれませんね? 牡蠣は安くて美味しくいっぱい食べれるイメージが定着してますから💦 牡蠣だけではなく海産物全般に言える事ですが😥
広島県廿日市市の宮島でカキの成育不良が深刻だ。夏場の猛暑による海水温の上昇が原因とみられ、宮島漁協では全体の6割がへい死。2月の恒例のかき祭りも新型コロナウイルス禍から5年連続で中止となった。水産技術研究所廿日市庁舎の松原賢さん(45)は「昨夏以降、高温が長く続いたため、カキが例年より多く放卵、放精を繰り返して疲弊した可能性がある」と説明。「水深を下げて養殖するか、場所を移すかが対策として考えられる」と話している。1998年の江田島湾の奇跡が全く忘れ去られているようで誠に残念です。水産技術研究所も不勉強ですね。
大船渡湾では光マイクロバブルが未成熟カキの産卵を抑制し、無放卵カキ、バージンオイスターを創り出したこと、江田島湾では地元の漁師が驚くほど大きくしかも短期間でカキが育ったことは、酸素自体に細胞の活性化作用が無いとすれば、DOの上昇によりカキの細胞が活性化されたことを示しています。産卵しても体力があれば斃死しないでしょう。
カキは冷血動物なので、水温により代謝率が変動します。水温が上がれば(新陳)代謝は向上します。下がれば低下します。しかし代謝の向上は諸刃の剣です。代謝(異化作用:食物を酸化しエネルギーを生み出す過程)の向上は餌と酸素の需要を増加させます。
一方、水温上昇により、代謝(同化作用:エネルギーを使って内臓や血液の細胞を作り出す過程)が活性化すると、エネルギーを多量に消費します。エネルギーが十分に供給されないと、代謝の向上はカキを痩せて不健康にし病気にかかり易くします。
斃死したカキが腐敗する過程で酸欠状態を喚起し、産卵後で体力のないカキが水温上昇による同化作用の活性化により更にエネルギーを消耗し連鎖的に大量斃死を起こしたものと思われます。
現場の漁師がDOの測定器を持っていれば、この仮説が正しいかどうか確認できたはずです。
高温化で、二枚貝の代謝活動が停止するという現象を観察したこtがあります。それはアコヤガイの場合であり、その限界高温は29℃でした。光マイクロバブルを供給しても、呼吸が促進されず、したがって代謝も起こっていないようでした。しかし、この場合、溶存酸素濃度は十分,高く飽和に近い濃度でした。この事実から、まず、溶存酸素濃度は、生物活性を引き起こさない、不足した場合の呼吸の手助けになることを理解しました。
また、29℃が28℃に下がると、呼吸を始めました。この時の溶存酸素濃度は飽和に近く十分な濃度でした。この状態で、光マイクロバブルの供給を止めると、普通に呼吸する状態となり、血流促進は起こりませんでした。
このことからも、溶存酸素濃度が高くなっても、血流促進は起こらず、生理的活性は起こっていないと判断しました。
すなわち、溶存酸素濃度は呼吸に有用であり、その限りにおいて物質代謝を進める作用を有するが、血流促進を起こすような活性作用はない、これが私たちが到達した知見でした。これらをよく理解していただけますと幸いです。