非常識の塊
光マイクロバブルの流儀における第1の問題は、自らが小さくなっていく気泡だったことでした。
この光マイクロバブルのことを初めて学会で発表したときのことを今でもよく覚えています。
光マイクロバブルは、小さくなっていく気泡ですよ、というと、これについては、みなさんがまったく無反応でした。
後で、その訳がわかりましたが、それまでの研究者のほとんどのみなさんは、大きくなっていく気泡のことを取り扱っておられました。
自ら小さくなっていく気泡のことは、非常識そのものであり、見たことも聞いたこともなく、ましてやそれを研究した事例もなかったのです。
なぜなら、発生直後から自己収縮するという光マイクロバブルを大量に発生させる装置そのものが開発されていなかったからでした。
ここに、光マイクロバブル発生装置を開発した最初の意義がありました。
ここから、次の非常識問題が浮上してきました。
それは、その非常識の自己収縮する気泡が、いったい何に役立つのかに関することでした。
そこでまず、酸素溶解効率が問題になりました。
これは、文字通り、気泡中の酸素成分が、どの程度の効率で水中へと溶解していくのかという比率の問題でした。
たとえば、直径1㎝のマクロな気泡が極細分化され、1000分1㎜になったとしますと、それらは、表面積の圧倒的増大によって、その溶解効率も飛躍的に増大しますので、とにかく、気泡を何とかして小さくしたい、これが1980年代の関係研究者たちの切なる願望と意図でした。
しかし、これはなかなか容易なことではありませんでした。
せいぜい、極微細化できても、その直径は0.1㎜程度であり、これが小さくない限界として立ちはだかっていました。
この壁をどうブレイクスルーするのか、これが世界中で非常に重要な喫緊の課題となっていました。
今振り返ると、例えば20㎛のマイクロサイズの気泡を生成させるには、それだけ小刻みに切断する「ハサミ」のようなものが必須になります。
このハサミは、その20㎛よりも一桁小さな切り口を有していなければならないので、そのようなハサミを人工的に作り出すことは非常に難しいことでした。
そのために、世界中の人々が、そのハサミを創造しようと大変な苦労をされていましたが、当時の私は、そのことを知りませんでした。
この装置の開発は、別稿において述べてきたように、じつに20回の試行錯誤を経ての改良によって、そして15年の歳月を経てようやく達成されました。
この過程において、それこそ偶然と必然が入り混じった改良の結果として、そのブレイクスルーが成し遂げられたのでした。
こうして自分で収縮するという光マイクロバブルを発生することを可能にする発生装置を開発したのですが、それは、非常識の最初の関門に突入したことにすぎませんでした
たとえば、次のような問題点も明らかになりました。
光マイクロバブルの発生によって、たしかに、その酸素溶解効率はかなり向上しましたが、化学工学における攪拌技術や下水道工学における酸素溶解技術においては、その溶解量が圧倒的に不足していました。
光マイクロバブルの発生量は、せいぜい毎分1リットル程度ですが、それらの実用においては、その100~200倍が必要とされていたからでした。
ここから、次の非常識問題が浮上してきました。
それは、その非常識の自己収縮する気泡が、いったい何に役立つのかに関することでした。
そこでまず、酸素溶解効率が問題になりました。
これは、文字通り、気泡中の酸素成分が、どの程度の効率で水中へと溶解していくのかという比率の問題でした。
たとえば、直径1㎝のマクロな気泡が極細分化され、1000分1㎜になったとしますと、それらは、表面積の圧倒的増大によって、その溶解効率も飛躍的に増大しますので、とにかく、気泡を何とかして小さくしたい、これが1980年代の関係研究者たちの切なる願望と意図でした。
しかし、これはなかなか容易なことではありませんでした。
せいぜい、極微細化できても、その直径は0.1㎜程度であり、これが小さくない限界として立ちはだかっていました。
この壁をどうブレイクスルーするのか、これが世界中で非常に重要な喫緊の課題となっていました。
今振り返ると、例えば20㎛のマイクロサイズの気泡を生成させるには、それだけ小刻みに切断する「ハサミ」のようなものが必須になります。
このハサミは、その20㎛よりも一桁小さな切り口を有していなければならないので、そのようなハサミを人工的に作り出すことは非常に難しいことでした。
そのために、世界中の人々が、そのハサミを創造しようと大変な苦労をされていましたが、当時の私は、そのことを知りませんでした。
この装置の開発は、別稿において述べてきたように、じつに20回の試行錯誤を経ての改良によって、そして15年の歳月を経てようやく達成されました。
この過程において、それこそ偶然と必然が入り混じった改良の結果として、そのブレイクスルーが成し遂げられたのでした。
非常識入門
こうして自分で収縮するという光マイクロバブルを発生することを可能にする発生装置を開発したのですが、それは、非常識の最初の関門に突入したことにすぎませんでした
たとえば、次のような問題点も明らかになりました。
光マイクロバブルの発生によって、たしかに、その酸素溶解効率はかなり向上しましたが、化学工学における攪拌技術や下水道工学における酸素溶解技術においては、その溶解量が圧倒的に不足していました。
光マイクロバブルの発生量は、せいぜい毎分1リットル程度ですが、それらの実用においては、その100~200倍が必要とされていたからでした。
ここで、非常に重要な究明は、酸素そのものに生物活性の成分が含まれていなかったことでした。
たとえば、海域の低層が酸欠状態になっているときに、酸素を供給することは必要なことですが、その上層においては、通常の場合、溶存酸素濃度は非常に高いことから、ここに光マイクロバブルを供給しても、それによって生物活性が起こりませんでした。
そう簡単に、柳の下にはドジョウはいなかったのです。
そこで、私は、ドジョウ以外の魚を探し始めたのですが、そのころに広島にいた大学時代の友人から電話がありました。
それは、広島の江田島湾において赤潮が発生してカキ漁が大きな被害を受けたので、なんとかならないかという打診ではなく、その要請には、なんとかせよという強制めいたものまで含まれていたように感じました。
これに引きずられながらも、カキ養殖に取り組むことは「非常識」そのものでしたが、地元カキ漁師の要望もあり、この非常識に挑むことになりました。
非常識だからできません、ではなく、非常識であってもやってみようか、確かめてみようか、という気持ちが勝った結果でした。
類は友を呼ぶ、といいますが、非常識の類が、同じ非常識の友を呼ぶ、このような事態へと展開していったのでした。
このカキ養殖への非常識取り組みは、その後の私の人生を根本的に変える「非常識」となり、光マイクロバブルにおいても「非常識的発見」に到達していくことになりました(つづく)。
広島江田島湾におけるカキ筏で発生した光マイクロバブル(朝日新聞小林記者撮影)
そこで、私は、ドジョウ以外の魚を探し始めたのですが、そのころに広島にいた大学時代の友人から電話がありました。
それは、広島の江田島湾において赤潮が発生してカキ漁が大きな被害を受けたので、なんとかならないかという打診ではなく、その要請には、なんとかせよという強制めいたものまで含まれていたように感じました。
これに引きずられながらも、カキ養殖に取り組むことは「非常識」そのものでしたが、地元カキ漁師の要望もあり、この非常識に挑むことになりました。
非常識だからできません、ではなく、非常識であってもやってみようか、確かめてみようか、という気持ちが勝った結果でした。
類は友を呼ぶ、といいますが、非常識の類が、同じ非常識の友を呼ぶ、このような事態へと展開していったのでした。
このカキ養殖への非常識取り組みは、その後の私の人生を根本的に変える「非常識」となり、光マイクロバブルにおいても「非常識的発見」に到達していくことになりました(つづく)。
広島江田島湾におけるカキ筏で発生した光マイクロバブル(朝日新聞小林記者撮影)
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「酸素そのものに生物活性の成分が含まれていなかった」。たしかに、人間は24時間呼吸し酸素を取り入れていますが、元気な人もいれば病気の人もいます。魚介類は通常よりも多くの酸素を与えると「新陳代謝が向上し、成長速度が速くなる」「健康状態が改善され、病気に対する耐線が向上する」ことが欧米で観察されています。
夏場の池では藻類の繁殖で日中はDOが飽和濃度の200%に達することもあり(夜間は30%程度に落ちる)、過飽和による魚介類のストレスとなることもあります。
大船渡湾のDO濃度は水面から海底まで6~8 mg/LのDO濃度で、これがカキの速い成長と健康の増進をもたらしたものと思われます。江田島湾も漁師が驚いたとのことで、このレベルのDOが達成されたのかも知れません。
以下、上記の文章ごとに回答します。
①江田島湾におけるカキ養殖研究は、その後の光マイクロバブル技術の研究に小さくない光明を与えました。それは、セレンディピティーとも言えますね。
②問題は、その酸素濃度の濃さにあると思います。その濃度が低い場合よりは高い方がよいのですが、それが高すぎても効果はあまりないようです。その意味で酸素濃度が最高の活性物質にはならないと思います。
➂魚は、過飽和状態になるとガス病を発病しますので、従来より、その危険性が指摘されています。光マイクロバブルの場合には、酸素の過飽和状態にはなりません。そこがおもしろいところです。
④大船渡湾における光マイクロバブルによるカキの成長促進における酸素濃度の改善効果は主要な要因ではないと考えています。もともと酸素濃度が豊富なところでしたので、その効果よりも別の要因があったと考察しています。ただし、酸素濃度の改善は、光マイクロバブルの拡散状況を追跡するには有効でした。