「一隅の灯」は宝になるか(8)

 前記事において、光マイクロバブルと光マイクロバブルフォームの定義を次のように示しました。

 光マイクロバブル:その発生時において直径1~65㎛の自己収縮運動を行う気泡である。

 光マイクロバブルフォーム:その発生時において直径1~65㎛の自己収縮運動を行う、界面において界面活性溶液を含む(あるいは覆われた)気泡である。

 これらを図示して、よりわかりやすく解説しておきましょう。

光マイクロバブルフォーム-1

 光マイクロバブルおよび光マイクロバブルフォームは、いずれも単独で形成された極微小な気泡のことであり、それらは、水と空気の海面において界面活性溶液を含むか、あるいは含まないかの違いにあります。

 これらの定義からも明らかなように、光マイクロバブルフォームの特性は、基本的に光マイクロバブルの特性に依拠しています。

 それを踏まえて、界面において界面活性溶液が含まれると、界面と気体内部において、どのような変化や違いが得られるのかが重要な特徴となります。

 それでは、光マイクロバブルの基本的特性とは、具体的に何を意味するのでしょうか?

 それらを包括的にいえば、1)物理科学的特性と2)生物的機能性の2つです。

 より具体的には、この1)と2)が、光マイクロバブルフォームにおいても、同様に、あるいは、そこに別の特性として固有のものが発揮されるのかどうか、これらが問題になります。

 そこで、上記の定義に従って、そのより具体的な特徴についての検討を始めることにしましょう。

 その第1は、両定義の冒頭において「その発生時において」という用語が示されていることに関することです。

 「その発生時」とは、光マイクロバブルおよび光マイクロバブルフォームの発生した時、すなわち発生直後のことを意味しています。

 わざわざ、このように時間的概念を示しているということは、それが時間的に変化していくことを示唆しています。

 つまり、光マイクロバブルと光マイクロバブルフォームは、それが発生したときには、上記のようなサイズを有しているが、それは時間経過とともに変化していくということを示唆しています。

 生まれた直後のサイズは、1~65㎛であるとあります。

 小さい方から説明しますと1㎛以下であれば、ナノサイズの気泡になりますので、マイクロメートルサイズであるとすれば、それは1㎛以上ということになります。

 しかし、実際には、このように極々小さなマイクロバブルの発生確率は非常に小さいといえます。

 また、大きい方は65㎛という数値が示されていますが、その根拠は実測値によって確かめられていることにあります。

 また、その気泡径が65㎛以上になると、収縮運動を行わず、逆に膨張してしまうという特徴を有していることから、この65㎛というのは、収縮か膨張かの臨界値と換言してもよいでしょう。

光マイクロバブルフォームの自己収縮

 すなわち、自己収縮を可能にするマイクロバブルの発生は、私どもが開発した超高速旋回式発生装置によって可能になりますが、これにおいては、直径が65㎛以上の気泡はほとんど発生せず、しかも、65㎛以内のマイクロバブルにおいて自己収縮運動が開始されるのです。

 自己収縮とは、光マイクロバブル自身が、何の外部力も加わらないで収縮していくことでああり、それが、比較的に短時間の経過とともに小さくなり、1㎛以下の気泡になっていくのです。

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光マイクロバブルの自己収縮と収縮限界

 それでは、このような光マイクロバブルの収縮運動特性に照らして、光マイクロバブルフォームにおいても、同様のことが起こるのかどうか、これが新たな問題として浮上してきました。

 まずは、ご少量の界面活性剤(犬用シャンプー、1ml)を9リットルのお湯に入れて(34℃)、光マイクロバブルフォームを大量に発生させました。

 この動的挙動を顕微鏡で観察して、その光マイクロバブルフォームが自己収縮していく様子を観察することができました。

 これは、一つの重要な発見でした。

 界面活性剤溶液が、光マイクロバブルを覆っていても、光マイクロバブルと同様に、すなわち光マイクロバブルフォームとして自己収縮していくことを確かめたのです。

 これによって、上記の光マイクロバブルフォームに関する新たな定義の正しさが証明されたということができました。

 この発見と観察結果は、新たな光マイクロバブルフォームの科学に関する小さくない扉を開けることに結びつきました。

 これを共同研究者のD君とともに、ささやかでしたが、共に喜ぶことができました(つづく)。
水と油を混ぜると油滴が多数形

成されてチェリー界面が広がるチェリーセージ