未来は青年のもの (19)
  
竜王戦(2)

 藤井聡太七冠が、佐々木勇気八段の挑戦を退けて竜王四連覇を達成しました。

 結局、第六戦において藤井七冠の4勝となりましたが、稀にみる熱戦でした。

 それは、佐々木勇気八段が、ほぼ互角で奮戦したからであり、第4戦までは、互いに先手が勝利して2勝2敗という競り合いだったからでした。

 とくに、佐々木八段が先手の場合には、事前の研究の成果が如実に出て、最初から優勢のままで勝利するという、みごとな戦いぶりでした。

 一方の藤井七冠が先手の場合には、がっぷり四つの戦いになり、そこから藤井七冠の実力が発揮されて徐々に優勢になるという、いわゆる藤井曲線といわれる展開で、最後に勝利するという結果になりました。

 その結果、藤井七冠が3勝2敗で第6局の戦いになりました。

 ここでも先手の佐々木八段が優位な戦いとなり、攻め込まれた藤井七冠は長考を繰り返していました。

 しかし、このまま佐々木八段優勢のまま、初日の封じ手の前の3手がやや不味かったようで、ここから、その優勢状態が逆になって藤井七冠の優勢へと展開していきました。

 2日目からは、この藤井七冠が長考の結果を踏まえて読み通りの指し手で、その優勢を拡大していきました。

 この時の解説者が中村太地八段であり、かれがすばらしい推察を行って、藤井七冠の読みと心理を解りやすく述べていました。

 これまでの解説者の多くは、棋士の心理までを、このように深く洞察して解説することはほとんどなかったことから、この中村八段が真に鋭く深い名解説を行っていたことが光りました。
 
 結局、佐々木八段は、そのまま攻め続けていくしかなく、その途中で有効な指し手の順番を間違えたことで、その劣勢を挽回することができませんでした。

 初めてのタイトル戦でもあったことから、そして、それまでは、ほぼ互角の戦いを繰り広げていたことから、反省の多い一手を指してしまったことで、かれの表情は一変していました。

 方や藤井七冠は、何事もなかったように指し続け、終局までの指し手を読み通り続けて勝ち切ったようで、その様子と心理を、上述のように中村八段が解りやすく説明することで、この終盤の熱戦の醍醐味が語られていました。

四連覇

 これで藤井七冠は、竜王戦4連覇を果たし、押しも押されもせぬ「竜王」となりました。

 叡王戦に敗れて八冠から七冠へと移行しましたが、その後のタイトル戦においては、その実力をいかんなく発揮されて、ほぼ危なげない戦いでタイトル防衛を続けられています。

 その顔つきもやや変化し、徐々に大人化されているように思われました。

 ところで、挑戦者の佐々木八段は、初挑戦ながら藤井七冠に2勝し、がっぷり4つの前半戦であったことから、その感想において「悔いのない戦いをすることができた」という素直な思いを示されていました。

 おそらく、佐々木八段が、再び勝ち進んで、次の竜王戦に挑むことになれば、今回よりもさらに白熱した戦いをしてくださるでしょうから、これからのかれの奮闘が期待されます。

 なお、今回の竜王戦において、少々驚いたことは、佐々木八段の大食漢ぶりであり、かれが注文した食事とおやつは、常に藤井七冠の注文された内容の2倍以上でした。

 これらを食べつくして勝負のためのエネルギー補給を行おうという彼の意思には、恐れ入りました、これぞ若者だと思いました。

 今どき、このような若者は非常に少なくなりましたので、その大食ぶりを観て、食べることに関しては負けていない、がんばれ、といってやりたくなりました。

 共に、フェアーな戦いにおいて精魂を尽くす若者の姿は美しく、周囲を励ましていることに素晴らしさを覚えました。

 このような若者こそ、将棋界だけでには留まらない未来を切り拓く原動力といってよいように思われます(つづく)。

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