うつ病と認知症(1)

 和田秀樹『70歳が老化の分かれ道』を拝読して、私が強く興味を抱いたことは、70歳代になると、うつ病や認知症になる確率が増してくることでした。

 精神科医として多くの患者のみなさんを治療してきた実績を踏まえての見解は、非常に説得力のあるものでした。

 あの頭脳明晰で、情熱と志を持って3000冊以上の小説を世に出してきた作家の森村誠一さんも、このうつ病と認知症を患い、それとの「闘いの日々」を示されていて、それらの著作を拝読しました。

 これらの著作に接し、うつ病や認知症は、老化と共に起こる病気であり、それらを患うことは、一定の確率で生起することであり、そのような状況に陥った場合には、それらをどう克服していくかが重要であることを理解しました。

 その意味において、和田秀樹氏や森村誠一さんの同著作は、非常に有益で重要な示唆を供与してくださる文献と考えてよいでしょう。

 和田さんによれば、日本人のうつ病患者数は人口の3%いて、それが65歳以上になると5%に増えるそうです。

 この病気は、セロトニンという脳内で生成される神経伝達物質の分泌量と関係しています。

 これは40歳代になると減り始め、70歳代ともなるとさらに減少が進みます。

 これが豊富だと気分がよく、安定していて、感情も豊かになり、幸福感を覚えやすいことから「幸せホルモン」とも呼ばれています。

 しかし、これが逆に不足してくると、何かと不安感を覚え、意欲を低下せる症状が出てくることから、うつになるリスクも高めてしまうのだそうです。

 このセロトニンの減少を防ぐ方法については、すでに叙述してきましたので、ここでは詳しく触れませんが、日光浴をする、お肉を食べる、アウトプット型の思考や仕事をする、適切な運動をすることなどが推奨されていました。

 さて、和田医師が指摘するうつ病の危険信号は、次のような現象だそうです。

 1)夜眠れない

 2)食欲がなく、食べられなくなった

 3)気分が晴れない

 4)やる気がわかない

 これらをよく正してみると、思い当たるふしがありそうです。

 これらは、自分が弱いから、あるいはダメだから、そうなるのではなく、病気の兆しであることから、精神科医に相談したらよい、これがかれの「すすめ」なのです。

「うつ」の撃退方法

 そこで、これらの問題がより切実にならないようにするために、有効な工夫の余地があるのではないでしょうか。

 それらを次のように考えてみましょう。

 1)については、あることを考えてしまい、夜眠れなくなったことがありました。

 そんな時は無理して寝ずに起きて作業をする、テレビを視る、パソコンを覗くなどのことをしていると自然に眠くなり、それを待って寝ることで十分にカバーすることができました。

 また、寝やすくするために、手足の運動や深呼吸をして十分に身体をリラックスするとすっと寝入ってしまうことも可能です。

 2)については、そのようなことも時々ありますが、そんな時は、自分が美味しいという料理を食べる、食材を選ぶ、安物ワインよりも少し上質のワインを飲む、このようなことをして、食事を家族と一緒に楽しむことができるようになります。

 このよい食習慣を身につけるように心がけることが大切ですね。

 3)気分が晴れないならば、気分の晴れることをすればよく、私の場合は、そのために、まずは本ブログ記事を認めるようにしています。

 書くことは簡単ではありませんが、それによって気分が晴れるのであれば、それはよいことです。

 しかも、書くためには、かなり考えることが必要になりますので、それも厄介ではあっても、じつは、それを考え抜いて、書き抜いた時には、それなりに楽しいものではないかと思われます。

 4)については、志を持てるかどうかの問題に行き当たります。

 大きくて真摯な志を持てば持つほど、それを遂行しようとしてやる気が誘起されます。

 その場合、大きすぎる志であれば、そこに接近するためにより現実的で、より可能な範囲で、階段を上っていくようにステップアップしていくことが大切です。

 歳を重ねると、このステップアップの方法に長けてくるようで、焦らず、地道に大志を目指す、この方法をいかに上手くあみ出すか、これを探るようになります。

 こうして上記の1)~4)を遠くに追いやる、これが「うつ病」の鬼を退散させる方法であるように思われます。

 「鬼は外、福は内」ですね(つづく)。

kii-11
                那覇市久茂地にて