「一隅の灯」は宝になるか(5)
小実験を週3回のペースで積み重ねていくうちに、新たな糸口にいくつかが観えてきて、そしてそれらを検証する課題も明らかになり始めています。
このように、その糸口が見え始め、それを抉(こ)じ開けていく課題が明快になってくると、それらを更新していく実験には楽しさと魅力が芽生えてくるようになります。
すでに、述べてきたように、当面のメインテーマは、界面活性剤がわずかに注入されたときの光マイクロバブルの発生や、その発生直後の挙動を観察することです。
この界面活性剤を含む液体において発生させれた光マイクロバブルの気体と液体の界面の液体相には、その界面活性剤が含まれていると推察されます。
この界面活性剤を、その界面に含有された光マイクロバブルと、淡水において発生させられた光マイクロバブルを比較すると、その界面活性作用によって微妙な違いが生じてくるのではないか、そう推察されます。
この特別と思われる界面活性作用を究明することが重要であるように思われます。
なぜなら、この作用の究明が、界面活性剤を含んだ液体において光マイクロバブルが大量発生することによって、優れた洗浄力に発揮が期待されるからです。
油と界面活性剤の関係
界面活性剤は、さまざまな生活や産業のなかで使用されています。
台所の洗剤、歯磨き粉、シャンプーなど、その使用途はたくさん存在しています。
このなかで、最も主要な用途のひとつが、油落としやその油を含む有機物の汚れの洗浄です。
油脂成分は、水となじまない、あるいは、水を弾きますので、水だけでは、その脂分の汚れはきれいになりません。
そこで界面活性剤の登場となり、その脂分を即座に落としてくれます。
なぜ、このような洗浄力を有しているのでしょうか?
その理由は、界面活性剤が水に親しみやすい親水基と逆に親しみやすくない疎水基という2つの機能を有していることに関係していまっす。
親水基とは、水に浸み込み、混ざりやすく、溶けやすい機能のことです。
また、疎水基とは、水に溶けにくい、浸透しにくい機能のことです。
一方、油の方は、すでに述べてきたように、水になじまず、混ざりにくいのですが、界面活性剤は、油に浸透しやすく、混ざりやすいという性質を有しているので、これは親油基の機能を持つといわれています。
水を弾いて、界面活性剤が油のなかに浸み込み、混ざり合う、ことによって油の洗浄が可能になるのです。
ここで、油が厚く付着したフライパンを洗剤で洗浄する場合を想定してみましょう。
「これは、けっこうヤバイな!しっかり洗剤を注がないときれいにならないかもしれない?」
こう思われて、あなたは、洗剤をかなりの量、そのフライパンに注ぐでしょう。
その結果、フライパンにこびり付いていたしつこい油成分は、みるみるうちに剥がれ落ちてきれいになり、それを水で注いで終わりになるでしょう。
それとは反対に、洗剤の量が少なかったらどうでしょうか。
洗剤を多く使うと、それが下水に流れ込んで、下水処理に好ましくない影響を与えます。
また主婦の方であれば、手荒れの原因にもなる可能性もあります。
そのため、可能な限り、洗剤の使用量は少なくしたい、これが主婦のみなさんの思いでもあります。
しかし、それでは、しつこい油汚れは落ちにくく、ごしごしと時間をかけてフライパンの脂汚れをスポンジやブラシで落としていくということになります。
ここで、この主婦の方は、洗剤の量はできるだけ少なくしたい、しかし、油汚れは速やかに落としたいと思い、油汚れの度合いを考えながら注ぐ洗剤の量をどうするかを思案なさるのではないでしょうか。
残念ながら、この要望にこたえることができる洗剤は、未だ、この世のなかには出現していません。
さて、上記の問題を考察する際に重要と思われる、水、界面活性剤、油の三者に関する基礎知識を述べておきましょう。
それらは、次の4つです。
1)可溶化
水に溶けにくい油性物質を界面活性剤のミセルの内部に取り込むことをいい、油性物質が少量の時に起こる現象であり、外観は透明化する。
2)乳化
水と油を混ぜると油滴が多数形成されて界面が広がり、白く見える現象のことである。
3)分散
固体粒子の表面に界面活性剤が吸着して、水の中に粒子が散らばって安定する現象である。
4)起泡化
水中で界面活性剤と気体が混合された際に泡が多数形成される現象である。
周知のように、光マイクロバブルは気体と液体が超高速でせん断されることによって形成される極微細なマイクロサイズの気泡のことです。
この液体中に、界面活性剤が含まれると、上記の1)、2)、4)がどのような変化が起こるのか、それが非常に重要な問題となります。
おそらく、この1)と2)そして4)が同時に発生し、その結果として、何が起こるのか、そして、それがどのような特徴と機能を発揮できるようになるのか、ここに究明すべき本質的課題が横たわってるのだと思われます。
本研究所としては、これらの科学的な究明を行い、それをより高度で新たな洗浄技術として確立していくのか、そのことを当面の重点課題の一つとしています。
おそらく、その基礎から応用まで、そして実験と理論化に至るまでに、かなりの検討が必要と思われます。
すでに、その重要な足掛かりと初歩的究明が可能になってきましたが、いずれ機会を得て、それらの系統的な内容と到達点を明らかにすることができるでしょう。
それまでは、なお一層、一歩一歩のなかで着実に前進していくことができるとよいですね(つづく)。
チェリーセージ(前庭)
水と油を混ぜると油滴が多数形
成されてチェリー界面が広がるチェリーセージ

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