「一隅の灯」は宝になるか(3)
若手社員のD君との共同研究が、週3回のペースで進んでいます。
いずれも、17時過ぎから時間帯で1時間前後の討議と共同実験が、系統的に実施されるようになりました。
このなかで、徐々に研究課題が明確になり、それを達成するための具体的な方針も定かになり始めています。
その第1は、界面活性剤と光マイクロバブルの相互関係を明らかにすることでした。
周知のように、水の中に界面活性剤を少量注入させて溶解させると、その混合液の表面張力が低下することによって、大量の光マイクロバブルを発生させることが可能になります。
ここに非常に重要な界面活性科学に関する問題があるのではないかと思います。
表面張力の低下能
表面張力とは、界面の面積をできるだけ小さくしようとする力のことです。
葉っぱの上に落ちた水滴が丸くなっているのを見られたことがあるでしょう。
その界面に表面張力が働いて、丸まろうとしているからです。
その水滴の表面張力が低下すると、どうなるのでしょうか?
すると、この水滴は、横に拡がって丸い状態から横に長い形状にかわります。
こうなると、水面と物体の接触面積が広がりますので、この現象を「濡れやすくなった」といいます。
表面張力とは何か
この洗浄力の大小を決定づけるのは、泡の大きさです。
ここで最初に重要な問題となるのは、表面張力が低下した液体において光マイクロバブルがなぜ大量に発生しやすくなるのかという問題です。
光マイクロバブルは、超高速旋回式と呼ばれる発生装置によって発生させられるマイクサイズの自己収縮する気泡のことです。
この発生原理は、秒速500回前後の旋回速度で、気液に二相流体が旋回し、その中央部に旋回気体空洞部が形成され、それを上下流の旋回速度差によって旋回・粉砕することにあります。
この旋回切断・粉砕点に、表面張力が低下した液体が流入することによって形成された光マイクロバブルの数が毎秒500回転ごとに増加していくことで、その大量発生が可能になったのではないかと推察されます。
おそらく、その大量増加は、界面活性剤の濃度と注入量に依存しますが、それがわずかであっても数倍から10数倍の大量化が実現されているように思われます。
ここで、おもしろい比較を行ってみましょう。
たとえば、約9リットルの水道水のなかに、わずか2ml(㏄)のシャンプー液を入れてみたとしましょう。
これを手で混ぜた時に、たくさんの泡が出てくるでしょうか?
おそらく、わずかにやや大きな泡だちができるだけだと推測されます。
しかし、光マイクロバブルの装置を用いて、光マイクロバブルを発生させると、その水は白濁化して、奥の方がまったく見えなくなります。
そのうち5分もすると、その泡がたくさん集まって、高さ10㎝を越える泡の層が形成されてしまいます。
この違いは、いったい何を意味するのでしょうか?
非常にわずかな表面張力の低下能によって、このように小さくない現象が生まれてしまうのは、なぜでしょうか?
次回は、この問題について、より深く分け入っていくことにしましょう(つづく)。
コメント