「イノベーションの本質(1-12)」

 Mさんから寄せられた感想とコメントを紹介します。また、その回答を示しておきましょう。

 以下は、その最初の文章です。

 旅日記〈20〉いよいよ興味深いところに入ってきました。『今振り返れば、マイクロバブルの発生原理に関する本質的理解に達していなかった』。(21)でその本質的理解に到達することを期待しております。

『毎分100200リットルのマクロ気泡(直径数㎜)と毎分約0.10.5リットルの微細なマイクロ気泡を発生』ではOHR曝気装置と同工異曲と評価されてしまうかも知れません。

 『その課題達成は、日本はおろか、世界中で挑戦されていたことだったのです』が、O先生が世界で初めてその課題達成されたということですね」

 ご指摘のマイクロバブルの発生原理の本質的理解の件ですが、これは科学的および技術的理解と言い換えることができます。

 その理解は、現象的な観察から始まり、いかに小さい微細気泡を発生させ、それを定性的に計測可能にし、さらに、その数も定量的に把握するという実体が明らかとなる実体論へと進みます。

 しかし、この段階においても本質的理解には達成してはおらず、最後の過程において、そこに貫かれている科学的および技術的法則性が明らかになること、これによって初めて本質的理解が可能になります。

 これらの認識と到達点を、これまでの記事で段階的に示してきましたが、その数は14でした。

 これらは、単なる技術的改良にすぎず、その積み重ねによって、当時の世界12か国の特許を獲得していたエアレーション技術であったOHR曝気装置を実用的にはかなり改善したことになりました。

 これによって、地元の中小企業の要請に応えた開発を遂げたことになりましたが、それは「改良発明」すぎませんでした。

 この発明を、地元中小企業の社長のY氏や技術開発委員会座長のY県産業技術センター長のM氏は、非常に評価され、喜ばれていました。

 しかし、この開発を終えた私の頭のなかには、それで満足できない、次の思いが過っていました。

 「排水処理装置としては、このW型エアレーション装置でよいかもしれないが、もっと改善できる余地があるのではないか?

 極微細なマイクロバブルのみを大量に発生させることはできないか?

 今度は、自分自身で、そのマイクロバブル発生装置の開発に挑んだらどうか?」

 上記のMさんのメイル文の続きです。

 「『毎分100200リットルのマクロ気泡(直径数㎜)と毎分約0.10.5リットルの微細なマイクロ気泡を発生』ではOHR曝気装置と同工異曲と評価されてしまうかも知れません。

 『その課題達成は、日本はおろか、世界中で挑戦されていたことだったのです』が、O先生が世界で初めてその課題達成されたということですね」

 このご指摘のとおりであり、上記のW型エアレーション装置の開発は、OHR曝気装置ほかの装置と比較しても、50歩100歩の改良でした。

 そのことは、その後の現場における利用具合や普及の少なさによって明らかであり、この装置が排水処理装置として独創的技術として市場に広く入っていくことはありませんでした。

 しかし、その後、数々の山あり谷ありを乗り越えてマイクロバブル発生装置を独創的に開発したことは、少なくない研究者や技術者によって次のように評価されました。

 「その開発は、世界中の研究者や技術者がやりたかったことであり、企業の研究所や大学などで盛んに探究されていた課題だったのです」

 このようなことが、かなり年月を経て私の耳にも届くようになり、恥ずかしながら「そうだったのか!」と、その事情を理解したのでした。

 さて、Mさんからは、非常に興味深い紹介がありました。

 次回は、その問題におもしろく分け入ることにしましょう(つづく)。

mimo-1111
ミモザ(前庭)