未来は青年のもの (10)
  
 NHKは、ドジャーズの大谷翔平選手の放送を行うために125億円を支払っているそうです。

 これによって、私たちは、ほぼ毎日、大谷選手の活躍を視聴することができます。

 本日も、いきなり、第25号のホームランをかっ飛ばしました。

 6月に入って、昨年と同様に全米を震撼させるほどの好調ぶりを見せています。

 別のリーグのニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手が29本のホームランを放っていますが、いよいよ彼と全米一を争う射程距離に入ってきましたね。

 しかも、今年は、首位打者とホームラン数で1位、打点で4点差の二位という三拍子が揃っており、「これがリハビリ中の選手なのか」と驚かれ、なかには異人的扱いまでされています。

 こうして、全米はおろか世界中から注目されるまでになった大谷選手には、日本企業が、それこそ競ってスポンサー契約をしたいという申し込みをドジャーズ球団に行っています。

 この球団側は、かれとの契約時には予想できなことだったとして、その度に吃驚しています。

 仮に、一社当たりの契約金を100億円とすれば、10社で1000億円になりますので、すぐに、かれとの契約金の額に到達してしまいます。

 これこそ、予想できなかった大谷効果であり、かれの活躍が続けば続くほど、ドジャーズ球団には、世界中の企業から、その契約の申し込みが殺到してくることになります。

メディアのモラル

 このような新たな状況のなかで、大谷選手は、ロスアンゼルスの郊外に約12億円の新居を購入したそうです。

 ところが、その新居を空から撮影し、また玄関前で、これが大谷選手の新居です、といって報道し、さらに、その新居内の一部を無許可で撮影して流した日本のF社とN社がありました。

 これを知って、大谷選手は怒ったそうですが、これはある意味で当然のことでした。

 治安が悪く、有名人の自宅が襲われることが珍しくないアメリカ社会ですので、街中の店舗には鉄格子が設けられています。

 私が住んでいた時も、「昨日は、ロスのダウンタウンで銃撃戦があった」とUSC(南カリフォルニア)の大学生から聞いたことがありました。

 視聴率を稼ぐために、何を行ってもよいと、それらの取材連中は考えていたのでしょうか。

 決して許されないことを行っていながら、すぐには謝罪しなかったことから、とうとう、ドジャーズ球団は、訴訟に持ち込むようであり、ここにも、その二社の配慮のなさが示されています。

 おそらく、取材であれば何をやってもよい、たとえ間違っていても謝ることはしない、このような考え方が浸み込んでいるのでしょう。

 真に恥ずかしくて情けない行為であり、メディアの腐敗は途方もないところまで進んでいます。

日米の球団比較

 また、日米の野球を比較してみますと、その球団に持ち方に大きな違いがあります。

 日本のプロ野球球団には必ずスポンサーがいて、そこから資金が提供されています。

 そのため日本のプロ野球選手は、いわば、そのスポンサー企業を宣伝することが担わされています。

 これに対し、アメリカのプロ野球の球団は、それ自身が企業体であり、その選手たちは、単なる広告塔だけではなく、その企業の構成員として位置付けられています。

 そのために、球団は事業収入を得るためによい選手を獲得し、勝ち続けることによってファンを増やし、その球団運営を大きく成功させていくことを目的にしています。

 その意味で、その成功を生み出す選手を大切にし、その証として大金を支払うことを堂々と行っているのです。

 この日米における決定的な違いが、選手の質を変え、野球そのものを世界一の水準にしていく原動力になっています。

 それゆえ、日本の優秀な若者がメジャーリーグに挑戦したいと思うのは当然のことであり、その先駆者として野茂英雄やイチローなどが活躍してきたのでした。

二刀流という創造性の凄さ

 その先輩たちの後を追ったのが大谷翔平選手であり、かれは、さらにスケールの大きな実践的偉業をみごとに為し遂げつつあります。

 その第1は、二刀流をアメリカ国民に見せたことでした。

 幸いにも、アメリカには、その大先輩がいて、大谷選手を観る度に、そのかれのことを思い出し、比較を楽しむようになりました。 

 堂々と、そのベーブ・ルースが行った挑戦を「今」という舞台で為し遂げていく雄姿に、アメリカ国民は魅惑され続けたのです。

 この二刀流をとことん追究する姿勢が、挑戦好きの国民性に適合し、一気にファンを増やしていきました。

 もともと大谷選手は、高校を卒業した時にメジャーリーグに投手として入りたいと思っていました。

 ところが、日本のドラフト会議において日本ハムが、大谷選手を指名したことで、当時の栗山英樹監督と大谷選手が話し合いを持つことができました。

 そこで提案されたことが、二刀流を実現させていくプログラムでした。

 大谷選手は、これを理解し、納得して日本ハム球団へ入りしました。

 この二刀流については、ほとんどの野球解説者が批判的であり、無理なことであり、かならず失敗するという見解が氾濫していました。

 しかし、栗山監督と大谷選手は、その批判には目もくれず、その前人未到の課題に挑み続けていき、そこに確かなものを感じ始めていたのです。

 かれにとって、ここでの準備と基礎作り、そして予想以上の活躍は、メジャーリーグへ行くための重要なステップとなりました。

 その挑戦と努力の成果が、エンジェルスという舞台において花開き始めました。

 アメリカや日本国民にとって、二刀流の先輩であったベーブ・ルースは映像のなかでの英雄でしかなく、大谷選手は、それを直に、そしてリアルに再現し、その記録を突破していったのでした。

 両国民は、新しいもの好き、挑戦好き、創造性好きであり、かれのありえない活躍は、すぐに心を揺り動かし、魅了させたのでした。

 第2に、大谷選手の試合態度や人格における素直さ、正直さが徐々に評価されるようになり、メジャーリーグの選手の模範となり、その選手や審判にまで尊敬されることまで起きました。

 そして今や、アジアを代表する選手、世界一の選手としての名声を得ています。

 また、大谷選手には、あまり金銭に拘らないようで、まず、母校の野球部に野球道具やバスをプレゼントしました。

 さらには、日本の約6万ある小学校にグローブを贈呈しました。

 各小学校に3個ずつですので、全部で18万個のグローブとなり、これも相当な金額でした。

 これによって、日本の小学生は大喜びし、大谷選手のようになりたいという夢を抱いたことでしょう。

 かつて、このような贈呈を行ったプロ選手がいたでしょうか?

 ここに、大谷選手の人格的素晴らしさと凄さが存在しています。
 
 6月に入って、昨年同様の調子を取り戻し、今やドジャーズを文字通り牽引する大活躍をし始めていて、おそらく、月間MVP獲得も射程に入ってきたように思われます。

 ますますのご活躍を祈念いたします(つづく)。

sakura0407-3-11
桜(近くの公営住宅の駐車場、再録)