「イノベーションの本質(1-9)」

 何もわからない状態から、無謀にもエアレーション装置の技術改良に挑んでいったことから、それこそ、犬も歩けば棒に当たるが如く、そこから、いくつかの問題点とおぼろげな課題が明らかになってきました。

 それらを、再度確認しておきましょう。

 また、その参考として、新たに開発したW型装置の外観と内部構造を示します。

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W型装置の外観と内部構造(『マイクロバブルのすべて』から引用)

 A)より微細な気泡を発生させることができたのか?また、その微細な気泡の発生量を増加させたのか?

 結果:リベットがない方が、より微細な気泡を発生させることができた。また、その微細な気泡の発生量も、リベットがない方が多かったことから、リベットを除去することを改良の重要点とした。

 B)水槽内における気液二相の流体をより促進させたのか?それを可能にするマクロな気泡の作用は、どのようなものになったのか?

 結果:マクロな気泡の発生においては、その直径が数ミリメートルのものがほとんどであり、しかもその数が増加したことから、水槽内の気液二相流の流動が促進されるようになった。

 C)B)の水槽内の流動機構とA)の微細気泡の発生分布は、どのような関係を有するのか?

 マクロな気泡は、水槽全体の流動に寄与し、微細気泡は、その流動の中央部分(前記事の模式図参照)に滞留した。

 これらの特徴の重要な点を示します。

 1)微細気泡化

 微細気泡のより微細化については、OHR曝気装置において数百マイクロメートル(㎛)の気泡が主だったのに対し、この改良装置においては、約80~100㎛の気泡のピークを有していました(拙著『マイクロバブルのすべて』参照)。

 結果的に、その微細化はある程度達成されましたが、しかし、それで十分ではありませんでした(その理由は後述)。

 2)マクロ気泡の小規模化

 センチバブル(センチメートルサイズの気泡、OHR装置では1~3㎝程度)をミリバブル(ミリメートルサイズの気泡、具体的には、気泡径が数㎜)の小規模化することができました。

 しかし、この改良は、次の長所と短所を有しており、エアレーション装置としてはかなりの新規性と進歩性を有していたものの、気泡の微細化に関しては、単に一歩前進したことに留まっていました。

 ①長所

 ●より微細な気泡の発生が可能になり、その発生分布のピークは80~100㎛であった。

 ●また、マクロ気泡を2~3㎝を数ミリメートルにまで小規模化できた。

 ②短所
 
 ●80㎛以下のマイクロバブルを発生することができなかった。しかも、これらの気泡は、時間経過とともに膨張していったことから、上昇速度成分を有していた。

 ●しかし、この微細気泡の量は、マクロ気泡のボリュームと比較して圧倒的に少なかった。

 ●それゆえに、より微細気泡化が実現されても、それによって効率的な溶存酸素濃度の効向上ができなかった。

 また、この時点においては、微細気泡の気泡径を正確に計測する手法が確立されていませんでした。

 実際、この計測は、水中に厚さ5㎜程度のハロゲンランプスリットを挿入し、一眼レフカメラで接写撮影を行いました。

 この場合、10㎛以上のマイクロサイズの気泡径を計測するために、その撮影印画紙画像を約90㎝に拡大して、そこに撮影された気泡径を計測したことから、そこにはかなりの計測誤差が含まれていました。

 以上を踏まえて、本開発は、OHR曝気装置よりも、微細気泡のより微細化、マクロ気泡のより小規模化を達成して、排水処理におけるエアレーション装置としての改善がなされ、新たな特許の申請はなされたものの、より優れた微細気泡発生装置としては、次の理由で不十分な開発に留まったのでした。

 その理由とは、微細気泡とマクロ気泡の発生容量の比が、おそらく1対100以上もあり、これでは微細気泡発生装置ということができなかったことにありました。

 私がめざしていたのは、いつのまにか、より深くなっていて、この比を逆にすることであり、あるいは、100対0、すなわち、マイクロサイズの気泡のみを発生させる装置を開発することになっていました。

 ここで、この開発の階段は14段目となっていました。

 「どうしたら、マイクロバブルのみを発生させることができるのか?」

 そう考えても、よいアイデアは少しも浮かばず、これまでの改善から得たヒントを頼りにして、コツコツと、その階段を粘り強く上っていくしかない、こう思い続けていました。

 実際、その14段目から階段を上っていくことは容易ではなく、足下の階段のステップの高さは私の背丈以上になっていて、まるで壁のように立ちはだかっていました。

 次回は、その壁に立ち向かっては跳ね返され続けた苦労に分け入ることにしましょう(つづく)。

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クチナシの花(前庭)