報告(4)
 
 私の講演における、次のスライドを示します。

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 マッド・リドレーは、イノベーションの特徴として、ありえなかったものを創り出すこと、しかし、それだけでは不十分であり、その創り出したものが「広がっていくこと」を指摘しています。

主役は技術
 
 この広げることを担うのが技術です。

 技術には、かならず目的があり、その目的を達成していくことで、技術が広がっていきます。

 リドレーは、その典型としてパン細切り機の事例を述べています。

 パンを細く切るための機械を誰もが欲していたにもかかわらず、その発明はなされませんでした。

 なぜなら、パンを細切りしても、それはすぐに乾燥してしまうことから、サンドイッチには適さないとみなされていたからでした。

 ところが、アメリカの田舎のパン屋さんが、その細切り機とともに、その乾燥防止器を同時に開発したことから、そのセットが爆発的に広まったのだそうです。

 かつて、私は、日出町(大分県)のパン屋に、イギリスパンをよく買いに行っていっていました。

 その際、一斤のイギリスパンを厚さ5㎜に細切りしていただきました。

 5㎜にまで細切りするお客はいなかったようで、パン屋の売り子が首を傾げながら、その細切りをしていました。

 そして、その一斤分が乾燥しないように、乾燥防止の袋に入れられたものを受け取りました。

 もちろん、塩気の利いたイギリスパンに野菜を挟んでサンドイッチを美味しくいただきました。

 もうひとつの典型的事例は、井深大が開発したトランジスタです。

 かれは、アメリカで開発されたトランジスタを用いた補聴器を見て、すぐさま、それをラジオにできるのではないかと思いました。

 そこで、アメリカに渡り、その補聴器の発明者にトランジスタに関する特許の許諾を申し込みました。

 そしたら、その発明者は、トランジスタをラジオにできるはずがないと嘲笑したそうです。

 それでも粘って、井深は、その特許権を購入することができました。

 折から、たくさんの大学卒業生が就職してきていましたので、かれらに、トランジスタラジオを開発せよと厳命したところ、それが実現したという、おもしろい逸話があります。

 このおかげで、トランジスタは、補聴器とは比較にならないほどに市場を広げていったのでした。

 これらは、巧みな智慧を用いて新たな技術を創出させたことによって大きく広がっていったというイノベーションの特徴をよく表しています。

 それでは、マイクロバブルの場合は、どうであったのか?

 その巧みな智慧の発揮はあったのか?

 すでに、この経緯については、別稿の「光マイクロバブル・イノベーション(5500回記念)」において詳しく報告されていますので、ここでは、次の主要な問題についてのみの指摘に留めます。

 その第1は、微細気泡(ミリバブル)からマイクロバブルを発生させるという技術的発展には、独創的なマイクロバブル発生装置の開発が必要だったことです。

 この開発なしに、マイクロバブル(後の光マイクロバブル)技術の発展はなく、そして光マイクロバブル技術の世界が発展していくこともあり得なかったのです。

 第2は、この発生装置の開発に15年という長い年月を有したことでした。

 この開発過程を階段に例えて、上記の記念シリーズにおいて述べていますが、現在は、その階段を徐々に上ってきて第13番目を迎えています。

 おそらく、現在の光マイクロバブル発生装置に至るまでには、まだ数段を上っていく必要があり、まことにゆるやかで、ゆっくりとした改良に次ぐ改良の日々の連続でした。

 第3は、その発生装置が、さまざまな分野において広く活用され始めたことです。

 この拡大は、それこそ燎原の火のごとくであり、その裾野は富士山のようでした。

 この富士山型の広大な裾野を有したことが、光マイクロバブル技術の最大の特徴の一つとなりました。

 この裾野における、それぞれの場所において、光マイクロバブル技術は、それまでの既存の技術とみごとに融合し、そこから固有の新たな発展を遂げていくようになりました。

 たとえば、医療や健康の分野においては、新たな治療法やリハビリ法として活用され、医師や患者のみなさんに喜ばれています。 

 こうして、本技術を1995年に公開してから、今年で29年余が経過しました。

 その間に、本技術は、産業や人々の生活に深く入り込み、そこで新たな方法として見出され、新たなものを創り出すという重要な営みを誘起させてきました。

 次回は、その新たな方法が、どのように具体的に見出されてきたのかについて、より深く分け入ることにしましょう(つづく)。

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シュンギクの苗