報告(3)
 
 昨日の報告の続きです。

 そのために、次のスライドを再録します。

hikari-112

 具体的には、1)海岸の説における続きを述べます。

エビの大群
 
 当時のNHKには、「二人の英雄」がいて、HKさんは、その一人でした。

 かれは、大島で、若いカメラマンの研修において指導者として参加していました。

 その時に、海のなかに小さな洞窟を見つけて、そのなかを進んでいったそうです。

 そしたら、かれの浸入に驚いたのでしょうか。

 イセエビの大群が、かれの方に向かって押し寄せてきたそうです。

 その洞窟は一本道だったので、イセエビたちは必至で逃げるには、かれが進んできた洞窟においてかれに向かっていくしかなかったなかったのでした。

 このイセエビの大群の押寄せはしばらく続いたそうで、かれはそれを呆然として見ていただけだったそうです。

 この体験を感慨深く述べておられました。

 そして、その体験談の最後に、その洞窟の海水の色が真っ白だったことを付け加えられました。

 「先生、あれはマイクロバブルですよ。

 イセエビたちは、このマイクロバブルに引き寄せられて棲息していたのではないでしょうか?」

 「そうかもしれませんね。きっと、そこがここちよく、そして、そのエビたちが生きていくうえで貴重なものがあったのだと思いますよ!

 おもしろい現象ですね」

 こういうと、HKさんは、さらに喜ばれていました。

 これらのように、マイクロバブル(光マイクロバブル)は、ウニやイセエビたちが棲息している特殊なゾーンに存在していたようです。

 ここで、昨夜、光マイクロバブル入浴していた時に閃(ひら)めいたのことを紹介しておきましょう。

 昨日の記事において、ある研究者が、自然海岸においてマイクロバブルの計測していたことを紹介しましたが、その観測において、その最少気泡は70㎛でした。

 この時、それがなぜ、70㎛なのかについては考察を行っていませんでした。

 じつは、その後の実験において直径が65㎛以上のマイクロバブルは、すぐに膨張して浮上していきますので、それ以下のマイクロバブルを自然界において目視によって見出すことは困難だったのです。

 ここに、その可視化計測の難しさがあり、たとえ、そこに実在していても、それが見つけられることはなかったのだと思われます。

 2)山地河川など淡水域における微細気泡

 河川においてマイクロバブルを連続的に供給するとどうなるのか?

 河川の流れを研究していた私にとって、これは非常に興味深いテーマの一つでした。

ゴルフ場池のマイクロバブル実験

 このきっかけは、近くのゴルフ場の池の水質浄化実験を行ったことにありました。

 その実験池に立ち寄ったときに、マイクロバブル装置の周辺にほとんどすべての鯉が集まっていたことを観察しました。

 この時、酸素濃度が濃い水域を鯉が望んだからであろうと推察しましたが、その後のさまざまな同様の事例に出合う度に、単に酸素濃度の問題だけではないのではないかと思うようになりました。

小河川のマイクロバブル実験

 その一つが、地元の周南市の小河川においてマイクロバブル実験を行ったことです。

 街中の下流域に装置を設置して、マイクロバブルを発生し続けました。

 実際の河川においては、さまざまなものが上流から流れてきますし、雨が降ると土砂が混じり、水位変動も起こりますので、常時正常な運転を行なうことはなかなかできませんでした。

 したがって、小まめに点検を行う日々が続いていましたが、ある時、マイクロバブル装置を設置していたブロックのなかに大きな鯉が入っていて吃驚しました。

 「そうか、鯉はマイクロバブルが好きなのか!」

と、改めて認識を深めました。

 その後、さらに吃驚したのが、そのマイクロバブル装置の周辺に驚くほど多数のハヤとウグイが育っていたことでした。

 しかし、この魚の増加をきちんと事前に数えて比較していなかったこと、さらには、下流の植生変化については調査をしていなかったこと、また、最下流においては鯉が多数増えて、ボラと一緒に及んでいたことなどについては、それらが観察されたことを示すのみに留まりました。

浄水場池のマイクロバブル実験

 しばらくして、この魚類の増殖問題が、より一層明確になったのが、周南市におけるI浄水場貯水池における実験でした。

 まず最初に驚いたことは、魚類が無数に増えていたことでした。

 実験前に、貯水池周辺を観察していましたが、その陸地から見える領域においては、魚類がほとんどいませんでした。

 ところが、実験後は、たとえば、1m四方において10数匹の小魚が泳いでいて、さすがにこれには相当に驚かされました。

 また、第二の吃驚は、貯水池の底面においてマイクロバブルを発生させている下流に巨大な植生群が形成されていました。

 たとえば、オオカナダモは、幅10m余、長さ数十メートルに渡って群生していました。

 水中眼鏡でそれを観察すると、そこにもたくさんの小魚がいました。

 また、トリゲモという水草の大群の大繁茂もあり、その上をボートでゆっくりと進んでいる私は、あの黒澤明監督の映画に似たシーンを思い浮かべていました。

 まことに、そこには「あり得ない世界」が存在していました。

 早速、この様子をHKさんに報告しました。

 かれは、ぜひこの様子を撮影したいといっていましたので、その打診を行いましたが、別の理由があったようで断られました。

 真に残念でした。

torigemo-11
トリゲモの大群生

 さて山地河川には、急流がいくつもあり、その落差地点においては大量のマイクロバブルの発生がなされています。

 途中に滝があれば、さらにマイクロバブルの大量発生が起こっているでしょう。

 その様子を調べるために、文部科学省化科学研究補助金に申請したところ、その採択がなされ、山地河川と滝におけるマイクロバブル発生と、その生物学的機能に関する調査を開始しました。

 この時の問題意識は、山地河川や滝において発生したマイクロバブルの生物活性作用が、水生生物(魚や貝、植物)に重要な関係を有しているのではないかとよいうことにありました。

 また、そのことが、鮭や鮎の遡上にも関係しているのではないか、マイクロバブルが生み出す物質とその機能が、鮭や鮎を呼び集めているとしたら、これは非常におもしろい問題であり、そこに小さくないロマンを覚えていました。

 これまでの専門家の研究によれば、河川から生成されるアミノ酸が、鮭の遡上に関係しているという研究成果もあるようであり、そうであれば、そのアミノ酸はどのようにして生成されたのかという問題にも結びつきます。

 しかし、その途中で、東日本大震災における緊急支援プログラムにおける採択がなされ、やむなく、こちらに傾注することになりました。

 このようにして、山地河川と滝のマイクロバブルとの相関に関する研究は中断してしまいましたが、今になって、少々思い当たるものが浮上してきましたので、改めてこの問題の再考を行なうことになりました。

 それでは、上記スライドの2~4の問題について解説を行いましょう。

 マイクロバブル(後の光マイクロバブル)を大量に発生させる装置があるのか、これを盛んに調べてみましたが、それはどこにもありませんでした。

 また、その気泡に関する文献も、どこにもありませんでした。

 それが明確になった時点において、一瞬途方に暮れてしまいました。

 なぜなら、既報の文献を読んで研究をするということしかできていなかったことから、いざ、その研究を自分で行うことは、それこそ危険な道だったからでした。

 「頼るのは自分しかない!」

 真に、我のみぞ知るの世界に入って行くしかなく、そこには、それまで以上の勇気が必要であり、その頃好きだった「青年は荒野をめざす」の歌をよく口ずさんだものでした。

 マイクロバブルを大量発生させる装置が、この世に存在していなかったのだから、当然のことながら、それを計測する装置もありませんでした。

 マイクロバブル(後の光マイクロバブル)は、1995年に学会において発表するまで、この世の世界においては「あり得ない」ものだったのです。 

 次回は、さらに講演の解説を進めることにしましょう(つづく)。