「イノベーションの本質(2-2)」

 本日も、マッド・リドレーの名著『人類とイノベーション ー世界は「自由」と「失敗」で進化する』における第6章「イノベーションの本質」の関する考察を続けましょう。

「イノベーションとはアイデアの『生殖(セックス)』である」

 これは、リドレーイノベーション論の本質的命題のひとつということができるでしょう。

 アイデアの生殖、このような概念を目にしたことはありませんでした。

 ここで、その生殖について、これまで示してきた光マイクロバブル発生装置の開発過程を具体的な事例にして考察してみましょう。

 すでに、その過程は、13もの階段をステップアップしてきたことを明らかにしてきました。

 しかし、それでも、この開発は未だ途上のものでしかなく、最終的なブレイクスルー(突破)には到達できていません。

 おそらく、階段の13番目とは、その道半ばの頃ではなかったかと思われます。

 さて、リドレーは、アイデアの生殖、すなわち、既存のテクノロジーと新たなテクノロジーの「組み合わせ」、あるいは「組み換え」によってイノベーションが生まれることを強調しています。

 生物においては、父親の遺伝子と母親の遺伝子の組み換えがなされることによって、新たに子供が生まれるように、イノベーションは、既存のアイデアと新たな技術とが、生殖し合うことによって融合し、そこから、より新たな発展的な新技術となることによって誕生することになります。

 この見解には説得力があり、同様のことを、あのスティーブ・ジョブズは、次のようにいっています。

 「開発とは、創造性を技術につなぐことである」

 かれは、この極意を、レオナルド・ダ・ヴィンチから学んでいました。

 この生殖は、人が多く集まっている都市で起こりやすく、その典型がルネサンスの時期のイタリアなどでした。

 すでに別稿において述べてきたように、レオナルド・ダ・ヴィンチのイノベーションは、ヴェロッキオというよい教育的師匠のもとに集まった弟子たちとの実践的取り組みによって開始され、発展していったものでした。 

アイデアの生殖が生み出したもの

 光マイクロバブル技術の場合においても、このリドレーのイノベーション定義がよく適合しているように思われます。

 周知のように、光マイクロバブル技術は、従来の空気と水が利用されてきた真に幅広い分野の既存技術と巧みに融合して、新たな技術として発展していくという特徴を有しています。

 これは、既存のアイデアを備えた技術が、光マイクロバブルという新技術と合体、融合し、その生殖の結果として、新たなアイデアが創成されていくというパターンを形成させているのです。

 たとえば、水産養殖の分野においては、400数十年のカキ養殖技術が存在し、そこに光マイクロバブル技術が適用され、赤潮で弱体化していたカキを救い、逆に、その生理活性作用によって大幅な成長促進を実現させました。

 そして、このカキ養殖技術は、ホタテ養殖、真珠養殖へと広がり、さらに工夫された技術として創造的発展を遂げていきました。

 この発達過程は、ヒトにおいても同じであり、親から子へ、そして孫へと生殖の成果が受け継がれ、ヒトとしての発展と進化を遂げていっています。

 本ブログで紹介してきた孫の「しらたまちゃん」は、すでに中学二年生になりました。

 つい最近まで幼子だったと思っていたのに、真に「光陰矢の如し」のように成長を遂げています。

 かれの好きなことは楽器を鳴らすことであり、読書を行うことです。

 前者は、家内、娘の遺伝子の反映でしょう。

 後者は、どうやら私の影響のようで、それが人生の糧になってきました。

 そのしらたまちゃんが、幼いころから、絵本が好きだとわかって、これまでに、絵本や書物、そしてマンガを、ほぼ1、2カ月に1度の頻度で送付し続けてきました。

 最近は、若いころに愛読した手塚治虫の有名なマンガ小説を選んで送っています。

 思えば、私が大学4年生の時のことでした。

 同じ研究室のI君が、松本清張全集を毎月1冊のペースで購入していました。

 私には、そのような金銭的余裕はなく、かれのことをうらやましく思い、それをかれが読んだ後に借りて読ませていただいていました。

 これで、すっかり清張のファンになりました。

 T高専に赴任して、しばらくしてから、I君のように毎月一冊の本を定期的に購入したいという夢が叶い、その全集の最初に選んだのが手塚治虫のマンガでした。

 それゆえに、いつのまにか、我が家には、手塚治虫の各全集がいくつもあり、そのなかからしらたまちゃんの成長に応じて適当なものを選び、送り続けています。

 最近は、『ブッダ』の全巻の送付を完了させました。

 かれとは、いろいろなことでよく心が通じ合う仲ですが、これからも、残りの手塚マンガを
送付していくことになるでしょう。

 そのために、次回の送付本として『ブラックジャック』の単行本2冊を書斎より見つけ出しました。

 先人の文化を用いて孫を育てる、これもアイデアの創造に基づく遺伝的営みのひとつといえるでしょう。

 このマット・リドレーの著作も、かれが大学生になったころに読んでいただきたいものですね

 次回は、その階段の14段目以降に分け入ることにしましょう(つづく)。

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フリージャ(中庭)