「イノベーションの本質(1-7)」

 前記事は、OHR曝気装置に関する、次の2つめの特徴についてを考察しました。

 ②リベット状の突起物に気体塊を衝突させることによって微細気泡が発生するとされているが、それは本当か?

 この考察については、さらに続きがありますが、その前に、3つめの特徴について検討しておきましょう。

 ③装置の形状が円筒形であることから、それは気体塊の上昇速度を一定程度に留めているのではないか?

 OHR装置の形状は円筒状になっていたことから、これを改良することは容易でした。

 その際に思い浮かべたのは煙突の形状でした。

 周知のように、煙突は、下が太く、上に行くほど細くなっています。

 これは、なかの煙と温かい空気が冷めないうちに早く煙突から放出するために考えられた工夫です。

 この場合は、より大きな速度で、気液混合流体を装置から放出する必要があったことから、その形状を円筒状からメガホン状に変更した方がよい、このように考えました。

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OHR曝気装置の構造模式図 
 
 そこで、前述のOHR装置の特徴と問題点の①~➂を次のようにまとめました。

 1)下部に設けられていた回転用の羽板の曲がりは小さすぎる。もっと回転させたほうが良いのではないか。

 2)気液の混合流体をリベット状の突起物に衝突させることによって微細気泡を発生させようとしていることの仕組みが特許になっていても、そこには物理的な無理があり、ほとんど、そのような微細気泡の発生は実現されておらず、もっと別の改良方法を考えた方が良い。

 3)円筒状の外形を煙突型に改良した方が流体力学的によい。

 このなかで、2)の問題が最も重要な問題でしたので、その可否については実験的に確かめることによって、先に1)と3)について改良したモデルの製作を行いました。

 それらの改良のポイントは、次のように工夫しました。

 ①羽板の曲がりを90度から360度に変えました。それに伴い、羽板の段数を1段から2段に変更しました。

 これには、すでに述べてきたようにN工場長に示していただいた180度モデルが役立ちました。

 ②全体形状を2段に分け、下部は円筒状、上部はメガホン状とし、より円滑な流動を可能とする形状にしました。

 ③装置の材質は透明アクリル樹脂とし、内部を可視化できるようにしました。

 また、その上部においては、OHRと同様の突起物を配置し、同時にその取り外しも可能にして、その両者を比較できるようにしました。

 さて、これらの改良における本質的問題は、次の3つにありました。

 A)より微細な気泡を発生させることができたのか?

 また、その微細な気泡の発生量を増加させたのか?

 B)水槽内における気液二相の流体をより促進させたのか?

 それを可能にするマクロな気泡の作用は、どのようなものになったのか?

 C)B)の水槽内の流動機構とA)の微細気泡の発生分布は、どのような関係を有するのか?

 これらの検討結果を、前述の開発委員会において報告すると、縦長の水槽モデルとOHR曝気装置に固執していたメンバーの方々が、こぞってよく理解してくださるようになりました。

 そして、当初の訝っていた様子から急変し、私の提案を積極的に受け入れるようになりました。

 この委員会への参加依頼は、Y県の工業技術センターのM所長からなされたのですが、かれは、私の報告と提案を非常に喜ばれ、より積極的に支援してくださいました。

 そこで、私が提案したのは、OHR装置の設定基準であった3mに拘って縦長の水槽モデルではなく、逆に横長の水槽モデルを透明アクリル樹脂で製作していただくことでしたが、これもすぐに承諾されました。

 それらの両モデルの比較を行っておきましょう。

 これを観れば、すぐにその流動機構の優劣がおわかりになるでしょう。

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 縦長水素モデルと横長水槽モデルの比較

横長モデル水槽に改良装置を設置

 上図に明らかなように、このエアレーション実験によって、縦型水槽モデルと横型水槽モデルでは、微細気泡のサイズと発生量、そしてマクロな気泡による水槽内の気液二相流体の流動状況、さらには、その流動における微細気泡の拡散・滞留状況などの問題が明らかになってきました。

 そこで上記のA)~C)の問題の詳細な科学的究明が非常に重要になりました。

 こうして、次のステップ(11段目の階段)を上っていくことになりました。

 次回は、その探究に分け入ることにしましょう(つづく)。