「2001年宇宙の旅」から22年(9)

モノリスの科学(5)

 モノリスは、ホモ・ハビダスたちが見え上げるほどの大きな石碑でしたが、そこから、ヒトとしての英知が生まれる湧泉を意味していました。

 それゆえに、2001年に至っても、その謎を究明するために、人類は、宇宙船ディスカバリー号を飛ばすことになり、その旅が始まりました。

 現在は、その旅から23年後ですので、この旅はどうなったのでしょうか?

 未だに、宇宙船ディスカバリー号は地球へと帰還していないのでしょうか?

 そして、その旅の目的は達成されたのでしょうか?

 気になりますね!

狩りのイノベーション

 さて、「プロメテウスの火」を手に入れたホモ・ハビダスたちは、その後、どうなっていったのでしょうか?

 夜になって周りが暗くなっていても、火があれば、猛獣たちが襲ってくるという心配がなくなり、それまでの樹上の生活から地上への生活への転換が可能になり、夜も安心して眠ることができるようになりました。

 それまでは、猛獣たちがいつ襲ってくるのかわからなかったことから、常に怯え、逃げ回る生活を余儀なくされていました。

 そして、猛獣たちには敵わない、闘っても勝てる相手ではないと思っていました。

 しかし、火という道具を手に入れたホモ・ハビダスの男たちは、その火を、夜において身を守る安全装置として使うだけでなく、昼間の狩りにおいても積極的に使うようになりました。

 火のたいまつを翳しておれば、猛獣たちは、それを恐れて決して近づこうとはしなかったからでした。

 「火があれば、決して負けることはない!勝つことができる!

 勇気あるホモ・ハビダスの男性の若者たちは、その火を用いた狩りの方法を創造していきました。

 集団で火のたいまつを掲げ、狩りを行なう動物を狭いところや谷に追い込み、投てきや殴打によって仕留めるアイデアを考案したのでした。

 火を持っていなかった時は、ほとんど死肉をあさるしかできなかったのですが、今度は、生きた肉を手に入れることができるようになったのです。

 柔らかくておいしい生肉を食べる、あるいは、それを焼いてさらに美味しく食べることができたホモ・ハビダスは、驚くべく身体的特徴を遂げるようになりました。

 その第1は、死肉に寄生していた病害虫を排除して食することができるようになったことであり、これによって急激な身体的健康を確保することができるようになりました。

 第2は、それまでの穀物や木の実を中心にした食生活から、生肉を焼いて食べる方法が加わることによって、より急速に胃のなかの消化と腸における栄養吸収が短時間においてなされるようになり、身体的成長と筋肉の形成が促進されるようになりました。

 第3は、その促進によって脳の急速な発達が誘起され、より賢く、より鋭い直観力を身に付けるようになっていったことです。

 第2は、脳の発達が促進されるようになりました。

 これらよって、よりたくましく、強壮なホモ・ハビダスの狩人の形成が可能になっていったのです。

料理のイノベーション

 一方、若い女性のホモ・ハビダスはどうだったでしょうか?

 彼女らの主要な役割は、食事の用意と子供たちの世話をすることでした。

 一早く火の開発を行ったオンディーヌは、それを料理に役立たせました。

 収穫した野菜や木の実、穀物を火で炒め、より柔らかく、そしてより美味しく食べることができるようにしました。

 硬くなった肉を焼いて柔らかくし、美味しくしました。

 冷たい水を沸かして飲めるようにし、身体を温めることができるようにしました。

 これらの料理法の改善は、夫や父母、そして子供たちを喜ばせました。

 しかし、何よりも彼女にとって嬉しかったことは、それまで8時間以上も費やして料理を大幅に時間短縮させたことでした。

 当時の彼女らの生活時間は、食事の準備に8時間、食事に8時間、残りの8時間でその他の家事と子供の世話、睡眠を行うというものであり、余裕は少しもありませんでした。

 これは男たちも同じで、彼らも、食事の時間と狩り、そして睡眠という余裕のない生活に追われていました。

 しかも、その狩りにおいては、獲物がなかったという日も少なくなく、苦労していました。

 火を用いて料理をするというオンディーヌのアイデアは、たちまち評判になっていきました。

 「モノリス村には、オンディーヌという料理の達人がいるらしい、彼女の料理を見に行こう、食べに行こう!」

 あちこちから、料理好きのホモ・ハビダスの女性たちが、その評判を聞いて集まってきました。

 その母親には子供も一緒でしたので、いつしか、大勢の目の前でオンディーヌは料理教室を開くようになりました。

 その女性と子供たちは、いろいろな食物を手土産に持ってきていましたので、それらを食材にして、最先端の料理法が、あれこれと工夫され、その評価をみんなで行ったことから、この評判はさらに拡大していきました。

 こうして、火の発明家オンディーヌは、料理の達人としても大成をなしていきました。

 火のイノベーションが、料理のイノベーションを誘起させたのです(つづく)。

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ハゴロモジャスミン(前庭)