未来は青年のもの (9)
  
 2024年の春を迎えて、二人の若者が大活躍しています。

 まず、その一人が大谷翔平選手です。ドジャーズ(ドッジボールのように投げ合う人々のことらしい)に無事移籍されて伸び伸びと活躍されています。

 それは、前球団のエンジェルスの時の打順と大きく異なっていることと関係しています。

 この時の大谷選手は2番か3番の打順であり、その前後はトラウト選手でしたが、かれは昨シーズン怪我が多かったこともあったことから、大谷選手の四球が結果的に多くなってしまったようです。

 これに対して、ドジャーズにおいてはMVPトリオが並んでいますので、この勝負しないための四球が急減したのではないかと考えられます。

 しかも、今年の大谷選手の打撃は二塁打、三塁打が多く、これを可能にしているのが、かれの足です。

 全速力で大股で走る姿には大変な迫力を覚えます。

 ホームランは、これまでに3本を売っていますが、これから、徐々に量産化を遂げていくことでしょう。

 現在は、元通訳の詐欺に出会って苦渋を嘗めていますが、これに負けずに正々堂々と頑張っていただきたいですね。

 今年のメジャーリーグでは、たくさんの日本人が活躍していますが、やはり、大谷選手の魅力は格別です。

 それは、どんなに忙しくても大谷選手が出ている試合は熱心に、ついつい視てしまうことに示されているのかもしれませんね。

 さて、二人目は、藤井聡太八冠です。

 昨日の豊島九段との名人戦第一局は、ものすごい闘いでしたね。

 中盤までは、挑戦者の豊島九段の方が優勢であり、それが終盤戦にまで続き、しかも余裕のある闘いがなされているようであり、解説者も、その優勢さを強調されていました。

 しかし、ここからが藤井八冠の真骨頂が滲み出てくるのであり、今回も、その凄いドラマが起こりました。

 双方の持ち時間が短くなってきたにもかかわらず、相変わらず二人が対峙している盤面は複雑で、どんどん、その局面が変化していきました。

 ここで豊島九段が攻め、藤井八冠が守りの手を指し続けていました。この時、AIの評価は、75対25でした。

 ここで、豊島九段の攻めが続かなくなり、やや怯んでしまうと、そこから藤井八冠の反撃が始まり、両者のスコアは五分五分に戻っていきました。

 そこで、土壇場における詰碁(つめご)を可能にする鮮やかな一手が指され、強固な豊島陣営が一挙に崩れて投了がなされました。

 この最終盤における妙手を創造できることが藤井八冠の最大の特徴ですが、これが、いかんなく発揮され、八冠としての強さが改めて示されることになりました。

 挑戦者にとっては、どんなに上手く指しても、最後には、このように逆転されて負けてしまうのですから、この逆転による敗戦には小さくない落胆とショックを覚えられたのではないでしょうか。

 しかし、このようにみごとな勝利を修めても、常に謙虚なのが藤井八冠の人間性です。

 かれの自己確立は、幼い時から将棋の修行によってなされたのではないかと思われます。

 おそらく、最終盤における深い読みと創造的に妙手をひらめくことができるのは、この自己確立における優れた修行と洗練さがあるのではないでしょうか。

藤井八冠の創造性

 この藤井八冠の優れた創造性は、どのようにして養われ、洗練されてきたのか、この問題は、非常重要で有益な問題を含んでいます。

 将棋連盟の前会長の佐藤九段は、藤井八冠が、非常によい挨拶をされると、かれのことを誉めていました。

 また、人の名前を間違えずによく覚えていて、その正確な紹介をなされることにも感心されていました。

 しかし、私は、感想戦の前に必ず行われるインタビューにおける藤井八冠の受け答えに注目してきました。

 それは、非常にゆっくりと、よく考えて、一見たどたどしい発言を繰り返されていることでした。

 この受け答えについては他の棋士と大きく異なっています。

 たとえば、王座戦の激戦を繰り広げられた永瀬王座のインタビューにおいては、永瀬棋士は、敗れたとはいえ、非常にスムースに受け答えをなされていました。

 これを比較すると、言語能力においては、明らかに永瀬王座の方が優れていました。

 しかし、ここに非常に重要な藤井八冠の特徴が隠されているのではないか?

 次回においては、その重要な問題に分け入っていくことにしましょう(つづく)。

enndou
エンドウの花(緑砦館1)