「2001年宇宙の旅」から22年(6)
モノリスの科学(2)
モノリスから発生していたのは、動植物に対して生理活性作用をもたらす物質ではないか?
これが、映画『2001年宇宙の旅』を拝見し、その後において考え付いた私の仮説でした。
この生理活性物質は、知覚神経刺激、および神経伝達物質でもありうるのではないか?
これが、モノリスから発生していたことから、それを触ったホモ・ハビダス(類人猿)たちは、格別のここちよさを感じたのでしょう。
狩りに行っても、ほとんど生きた動物を捕獲することができなかったホモ・ハビダスたちは、せいぜい死骸の肉しか手に入れることができず、植物の果実も、他の動物たちが食べ残したものを手に入れるしかありませんでした。
しかも、夜になると猛獣たちに襲われることから、木の上で寒さに震えながら寝ることでしか、自らの身を守ることができませんでした。
粗悪な食べ物ばかりしか得ることができなかったことから、それをしっかりかみ砕いていただくには時間を要し、ホモ・ハビダスたちの食事時間は8時間を超えていました。
朝起きて狩りに出かけ、獲物を持って帰れば、すぐに食事をして寝る、これがかれらの日課でした。
そのように貧疎な生活であったホモ・ハビダスたちの前に、モノリスが現れたのです。
恐る恐る勇気のある男性の若者が、それに触ってみましたところ、なんと、それは、何ともいえない「ここちよさ」を覚えるものでした。
二人の若者
その若者は、そのモノリスを好んでいつも触るようになりました。
しかし、年寄りや中年層のホモ・ハビダスたちは、決してモノリスには近づこうとしませんでした。
何か見知らぬものに対して、危険で恐れ多いと感じていたからでした。
しかし、その勇気ある男性の若者が、ここちよくモノリスの前に立って、それに触れている姿を見て、自分も同じことをしてみたいと思うようになったのが、その若者の恋人の女性でした。
最初は、同様に恐る恐るでしたが、実際にモノリスに触れているとここちよく、心の中に初めて味わう充実感が湧いてきたのでした。
「なんと安らかな気持ちになることか!」
この女性の知覚は、その恋人のそれとは微妙に違っていました。
なぜなら、当時のホモ・ハビダスにおいては、女性は食事と子育て係、男性は狩りによる食物調達係と分けられていて、その手足や頭の使い方がかなり異なっていたからでした。
このモノリスに触れたことによって彼女の頭のなかにすぐに浮かんできたのは、
「美味しいものを自分で作って、みんなに美味しく食べさせ、自分も美味しく食べている姿」
ことでした。
「それは、どのようにしたら可能になるのでしょうか?」
さらに、彼女は、こう考え始めました。
一方、彼女の恋人の若い男性は、
「どうしたら、獲物を捕らえることができるのか?何か良い武器はないか?」
と問いかけていました。
モノリスから発生した生理活性物質は、この二人に、これらのような作用を促したのでした。
しかし、しばらくの間は、知能が未発達のホモ・ハビダスたちにとって、これは、単に「ここちよさを感じる」ことだけに留まっていました。
当時のホモ・ハビダスたちは言語を持っていませんでしたので、その左脳は未発達のままでした。
この男女が考え、行動を支配していたのは、もう一方の右脳の方でした。
すなわち、この二人が「ここちよさ」を知覚していたのは、左脳が司る言語能力が未発達であったために、その反対にある右脳そのものだったのです。
そして、その右脳とモノリスによる「ふれあい」から、ホモ・ハビダスの体内に生理活性作用が形成され、それを基にして創造性の発揮が実現され始めたのです。
道具の発明
その男性には、動物の死骸からもぎ取った骨を狩りにおける武器として使うことをひらめかせ、その女性には、収集された食物を切り、砕く石の欠片を利用することを促したのでした。
この戦いのための、そして料理のための道具を開発したことは、ホモ・ハビダスに重要な変化をもたらすようになりました。
戦いにおいて、硬い骨の武器を得たことは、狩りの相手を叩いて打ちのめすことができました。
また、その相手が襲ってきた際には、それを防ぐ重要な手段,にすることができました。
さらに、料理においては、それを細かく切り、砕くことによって、より美味しくし、同時に消化の良い食物にすることを可能にしました。
これによって料理の時間と食事の時間を短縮できるようになり、また、その消化の良さによって体力が向上し、脳の発達にも重要な寄与をもたらしました。
そして、このかのじょにとっては、偶然でしたが、非常に画期的なことが起こりました。
次回は、そのホモ・ハビダスにとって最大のすばらしい発明がなされたことに分け入りましょう(つづく)。
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