第六報における視点(2)-2
今回の第六報(高専発のマイクロバブル技術(1))における第2の視点についての続きの解説を試みましょう。
以下は、その本文であり、赤字の部分が、本記事における該当部分です。
「第2は、現場における技術開発の目標達成が優先されたことから、微細気泡に関する物理科学的特性を究明することが、常に後追いで究明されるという過程を経たことである。
しかも、国内外に先行的な研究事例はなく、その装置開発、計測法、物理化学的特性、生物的機能性などの関しては独自の手法を見出し、評価・確立する必要があった」
可視化されたマイクロバブルは、100~400倍に可視化されていますので、それが撮影された画面を通り過ぎていくのは非常に短時間であり、一瞬の出現と通過と表現してもよいものでした。
これを自動追跡する方法はあるか、あったとしても、相当に金と時間がかかりそうだと思い、ここ方法は除外して考えることになりました。
しかも、その通り過ぎる画像を丹念に観察していくと、この挙動は、2次元ではなく、3次元の挙動をしているようでした。
それが証拠には、画面上でのマイクロバブルの挙動が、一旦ピントを合わせた鮮明画像が、その次には微妙にぼやけてしまうことが解ったからでした。
静水中において上昇する際に、そのまますっと2次元の挙動を示すわけではない、これは、その3次元挙動を正確に捉えて可視化しようすれば、相当に厄介なことであると認識しました。
どうしようか?
ここは、機械制御力よりは、人力制御力に期待するしかない。
こう思って、手動の3次元トラバース装置を購入することにしました。
これに、マイクロスコープレンズを据え付けました。
このレンズに可視化されたマイクロバブルを観ながら、その三次元トラバース装置を操って追跡していくという方法を考案したのでした。
しかも、マイクロバブルは時々刻々と収縮していきますので、そのレンズの拡大率を連続的に上げていくことも必要でした。
さらには、撮影されたマイクロバブルの大きさを正確に計測するために、その水槽壁面にマイクロスケール(最小単位10㎛の目盛りをいれた100㎛のモノサシ)も組み込みました。
このマイクロバブルの挙動を詳しく撮影するてめの練習を学生たちと一緒に行いました。
まず、私が最初に試してみて、「これは、なんとか、行けそうだ」ということだけを確認して、それを私が行うことは、すぐに諦めました。
なぜなら、次の能力がないと不可能な人力制御だったからでした。
①目がよくないと、マイクロバブルを追跡できない。
②マイクロバブルの挙動を画面で追いながら、同時に3次元のトラバース装置の調整ネジを動かして追跡し、そのピントも合わせていくという、神業のような動作をしなければならない。
➂この制御法を熟練して身につけるには、相当の時間と修行が必要であり、学生の方が、より早く、より正確に身につけることができる。
こう思って、その担当の学生に、こういってお願いしました。
「これができるようになったら、それはあなたしかいない、世界中探しても、あなたしかいないとなると、それは非常に貴重なことですので、これができるようになると、あなたの研究の半分は終わったことになりますね。頑張ってください」
その学生は、こういわれて嬉しそうでした。
そしていとも簡単に、この装置を操ることができるようになっていました。
おかげで、この実験から、いろいろなことが判明しました。
なかでも、一番大切だったことは、マイクロバブルは、その中の気体を溶解させることだけではなかったことが明らかになったことでした。
お礼に、何度も、パスタランチを一緒に食べに行きました。
マイクロバブルの物理化学的特性(1)
それが、マイクロバブルの物理化学的特性でした。
物理と化学、この2つの分野からアプローチをしていくことが、まず、マイクロバブルの特徴を理解するうえで非常に重要でした。
その物理学的特性とは、どんなものだったのでしょうか?
1)短時間において縮まるという収縮運動
2)縮まることによって、マイクロバブルのなかの温度と圧力が高まっていく現象
3)収縮と共に増加していく負電位特性
4)そのなかで何回も繰り返す発光現象
これらは、まことふしぎで魅力的な運動と現象でしたが、しかし、それらを科学的に究明していくプロセスは、なかなか容易ではありませんでした。
この経験を「試練のマイクロバブル」と表したこともありました。
次回は、その試練のマイクロバブルのなかに分け入ることにしましょう(つづく)。
海水マイクロバブル(江田島湾、ナノプラネット研究所提供)
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