第六報における視点

 今回の第六報(高専発のマイクロバブル技術(1))の執筆においては、予め6つの考察の視点を示すことにしました。

 平易にいえば、なぜ、この考察を行うかについて、予めに明らかにして、読者の、その理解を手助けするようにしました。

 じつは、この執筆は、それだけでなく筆者の執筆においても筋道が明らかになるという利点がありますので、好んで採用する記述方法でもあります。

 その視点について、順番に、より詳しく解説することにしましょう。

 以下は、その本文です。

 「その第1は、前述のように地元企業との排水処理に関する実践的な技術開発の共同研究を実施した成果を踏まえて考察することである。

 その際、検討対象としたのは、世界12か国の特許取得済みの微細気泡を発生させる装置であり、これを、どう性能的に乗り越えるかが真正面から問われた。

 すなわち、その開発目的は、その可否において、最初から目標設定がなされていた」

 この時のいきさつについては、何度か紹介してきましたので、ここでは省略しますが、何の契約書も交わさない、さらには、共同研究費も受け取らないままの、それこそ安請け合いの共同研究の始まりでした(後に、それは少し解消されました・・・)。

 第二の特徴は、かれらが、世界最高水準の曝気装置(OHRエアレーター)として推奨し、採用していた装置を相手にしたことでした。

 なにせ、世界12か国の特許を取得済みということで、それを採用されたみなさんは、そのことを信じ込まれていました。

 ここで、私が怖気づいて二の足を踏んでいたら、後のマイクロバブル発生装置の開発はあり得なかったのですが、その装置のことを詳しく知らないままに、解説書を読んで検討を開始したら、すぐに、それは誤りではないかという部分を見つけることができました。

 それは、微細気泡を発生させる基本のところであり、そこでは、水と空気を混ぜたやや旋回性のある二相流体をリベット状の突起物に衝突させることで、微細気泡を発生させるというものでした。

 私の専門は、流体力学における乱流を研究していたことから、それは、そのリベットがない方がよいのではないかと考え、その「在る無し」を実際に実験的に比較してみました。

 そしたら、私の推論の方が正しいことが判明しましたので、ここで「第一のブレイクスルー」が起こりました。

 同時に、その二相流を上昇させながら旋回性を付与するという作用が弱いと思い、これを実際に、当時、プラスチック加工をしていた地元の工場のNさんに相談しに行きました。

 かれは、その時、同じような効果を発揮する羽板を製造していたので、それを見せていただき、より旋回性を増す羽板の製作は可能かと尋ねると、にやりと笑って、「できますよ!」と返答されたのでした。

 この新たな羽板の配備が「第二のブレイクスルー」となりました。

 結局、この2つのブレイクスルーが決め手になって、新たなエアレーション装置が開発可能になり、それを「W型装置」と名付けました。

 ここで学んだことは、特許になっていても、それが実際の自然法則に則っているかどうかについては問題がある、ということでした。

 当時、高専では、「教育と研究が精一杯で、開発はとてもできない」といわれていました。

 しかし、この結果は、そうではなく、「やってみれば、できた!」ということ示していましたので、ここから、技術開発への道を歩んでいくことになりました。

 また、その結果を踏まえて、特許を申請し、その取得も行いましたので、特許の勉強をすることができたことも、私にとっては重要な収穫でした。

 しかし、この特許の出願は、地元の中小企業が行いましたので、私には発明者の権利しかありませんでした。

 最終的には、その企業が、この発明を大きく生かして活用できなかったので、その権利を行使することもできませんでした。

 それでも、この開発と知財の検討は、その後の私に小さくない影響をもたらし、そのよい勉強ができたように思われます。

 未熟でしかなかった私にとっても、開発は可能なのだ、やればできたじゃないか、こう思うようになったことは、その要請を真正面から受け留め、実践的な検証を重ねたからだったのではないでしょうか。

 この成果は、次の光マイクロバブル発生装置の開発の基礎となっていきました。

 人生とはおもしろいもので、ここから私の光マイクロバブル人生への接近が始まったのでした(つづく)。

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ミモザの実が生り始めました(前庭)