未来は青年のもの (3)
  
 私が注目しているもう一人の若者は、藤井聡太竜王です。

 かれは、大谷選手よりも約10歳若く、先日は、20歳の誕生日において棋王戦に勝利するという快挙を成し遂げました。

 残り5勝すれば、初の夢の八冠達成という大偉業を成すことができます。

 プロ棋士としていきなりの29連勝を達成し、あれよあれよという間に、7冠まで奪取してきました。

 史上初の七冠を達成した羽生九段は、最も苦しかった時期は、七冠達成後ではなく、その直前であったそうです。

 藤井七冠は、その最も苦しい時期に遭遇しているのですが、そんなことはどこ吹く風で、次々に勝利を重ねて、それを乗り越えてきています。

 振り返ると、大きな山場は、渡辺明名人に挑戦者として臨んだ名人戦だったのではないでしょうか。

 藤井竜王以外の棋士に対しては、圧倒的に高い勝率を上げていた名人が、なぜか、藤井竜王に対しては極めて低い勝率でした。

 そう思って、名人戦を観ていましたが、そこから、その理由がなんとなく解ったような気がしました。

 それは、藤井竜王と渡辺名人の実力差が、渡辺名人と藤井竜王以外の棋士との実力差との比較において、前者の方が相当に大きかったことによって生まれたものではないかと考えられたことでした。

 現に、藤井竜王は、圧倒的に優れた戦いを繰り広げ、一時期は劣勢になっていても最後には優勢になって勝ち抜くということをやり遂げました。

 結果的に、4勝2敗でタイトルを奪取しましたが、そのうちの1敗は、最後の最後まで優勢でしたが、最後に間違えて負けたものでした。

 その意味で、渡辺名人が作戦勝ちしたのは、わずかに1勝のみだったのです。

 藤井聡太論(1)

 羽生九段は、藤井竜王の特徴は、終盤に差し掛かった時の読みの深さ、正確さ、即ち「終盤力の強さ」があると指摘されています。

 これは、幼いころからAI将棋を用いて培ってきた能力だとよくいわれています。

 しかし、それだけではなく、最近のタイトル戦において、かれの実戦力は鍛えられ、だれもが持ちえない洗練を成し遂げているのではないでしょうか。
 
 その勝ちパターンには共通性があり、ここぞという時に、誰もが持ちえない冴えを発揮し、勝利へと盤名を導いていくのです。

 もう一つの驚きは、かれの集中力の強靭さです。

 たとえば、そのタイトル戦が、2日で、持ち時間が8時間の場合には、それぞれが、これを使い果たし、秒読みになったとすると、合計で18時間前後の闘いになります。

 この間、相手を前にして集中して盤面を読み、指し続けていくのです。

 藤井聡太竜王の集中力は一度も途切れることはなく、考え、読み込んでいくのです。

 普段から鍛えているとはいえ、なかなか、このようにできるものではありません。

 偶に、相手の作戦が上手くいって劣勢になることもありますが、それを徐々に改善し、最後には優勢へと向かわせるのです。

 なぜ、このように集中力を発揮できるのでしょうか?

 そして、劣勢を優勢に転じていく力は、どのようにして形成されたのでしょうか?

 さらには、大谷翔平選手との共通性は、どこにあるのでしょうか?

 いずれも探究しがいのある問題ばかりです。

 藤井聡太竜王と大谷二刀流、この未来を切り拓く若者の素晴らしさについて、私流に分け入っていくことにしましょう(つづく)。


haze
ハゼの花