蔵王温泉
鶴岡から月山を越えて山形経由で、無事、蔵王温泉に到着しました。
老舗の旅館において、その翌日に学会が開催されるので、それに参加するためでした。
夕食前に、やや時間がありましたので、初めての蔵王温泉の街中を散策しました。
折から、サクランボの佐藤錦が安く売られていましたので、それを少しばかり購入して食べてみました。
その本場のみごとな美味しさに心を動かされました。
その後、旅館に帰ってから、目当てのひとつであった蔵王温泉の湯に浸かりました。
周知のように、ここの温泉は強酸性温泉であり、その温泉の解説書には、水素イオン濃度(pH)が1.5であることが示されていました。
pH1.5の強塩酸温泉のなかに入る、これは滅多に経験できないので、どのような体感を覚えるのか、非常に興味津々でした。
しかし、この時は、学会主催の夕食兼懇親会が始まる時刻も迫っていましたので、短時間の入浴にならざるを得ませんでした。
そのため、この蔵王温泉の良さを十分に理解することができませんでした。
この学会は、温泉を主題にした学会でしたので、その前日に懇親会を行うというユニークさを有していました。
おかげで、同伴のK先生と共に、みなさんとの交流を深めることができました。
温泉好きの方々が方々から集まっておられましたので、話題の中心はやはり温泉体験談であり、みなさんの自慢の温泉のことが熱心に語られていました。
また、この時、もう一つ印象深かったことは、そこで出された「大山(おおやま)、山形の酒)」という日本酒が辛すぎて、それをなかなか美味しく飲めなかったことでした。
寒いところでは、このように辛い酒を好むのか、その気候が、この酒の辛さをゆうきさせたのであろうかとおもいしりました。
私どもは、山口、高知、広島の甘い酒を飲みなれていましたので、この辛さを経験したことがなかったのでした。
その夜は、例によってK先生と、互いに飽きることなく、光マイクロバブル論議の花をとことん咲かせることができました。
朝風呂
翌朝は、昨夕の入浴不足を反省して早めに起きて、たっぷりと、この強塩酸温泉を堪能することにしました。
温泉の色は乳白色であり、屋根付きの露天風呂が風情を醸し出していました。
この入浴の前に、その温泉成分の表示解説を読んでいましたので、しかもpH1.5という強塩酸温泉に入ったことはなかったので、心のなかでは恐る恐るの状態で、じわじわと身体を温泉水に浸けていきました。
「あれっ、何も感じない、どうしたものか!」
これが最初の感想と印象でした。
お湯の温度は、おそらく40℃以下で温めでした。
当然のことながら、熱すぎて、すぐに出てしまうということはなく、ゆっくり温泉に身を任せることができました。
そのうち、ピリピリ感を覚えるようになるのか、ともおもっていましたが、依然として少しも何かの刺激を知覚することはありませんでした。
上述の温泉表示には、3~5分程度の入浴時間が推奨されていましたが、それを軽くオーバーして約20分間、そのまま浸かってから出浴しました。
私よりも、少し早く出浴したK先生に尋ねました。
「何も感じませんでしたが、K先生は、どうでしたか?」
「同じですよ。何も刺激はありませんでした」
「やはり、そうでしたか!」
こんな会話を交わしながら、ふと目の前に大きな鏡がありましたので、それを見て、吃驚仰天しました。
身体中の皮膚表面が、赤くなってピンク色を呈していたからでした。
それらを手で触ってみましたが、どこにも炎症はなかったことから、これは皮膚表面の毛細血管において大幅な血流促進が起きたことによるものではないかとおもいました。
「そうか、自覚には至らないにしても、皮膚は、みごとに反応していたのだ!」
こう、認識することができました。
この肌色の変化現象は、強塩酸温泉水による酸化刺激によって、皮膚細胞中の知覚神経が刺激されて、皮膚表面付近の毛細血管の血流促進が一斉に起こったことによるものではないか、そうに違いないとおもいました。
さて、この蔵王温泉と同様に、強塩酸温泉水として有名なのが秋田の玉川温泉水です。
ここはさらに強塩酸温泉水で、そのpHは1.2だそうです。
ここには、末期がんの方々が全国から集まって来られ、この温泉治療をなされています。
おそらく、この強塩酸水による知覚神経刺激作用によって、皮膚表面付近の毛細血管における血流促進が同様に起こっていて、それが治療に役立っているのではないかと推察されます。
ある大学医学部の研究者が、この温泉水を用いて知覚神経を刺激し、マウスの体内において「IGF-1」というホルモン物質が大幅に増加することを見出しました。
そして、その方において、今度は水道水を用いた光マイクロバブル水の実験をしていただいたことがありました。
そしたら、そのホルモン物質が、それぞれの内臓や身体物質において、ほぼ同量が生成されたことが判明しました。
これは、強塩酸による知覚神経刺激作用と、ほぼ中性の光マイクロバブルによる、その作用効果がほぼ同一であったことを意味していましたので、そのことを踏まえると、
「光マイクロバブルによる知覚神経刺激作用とは何か?」
を探究することが、それ以後において極めて重要な課題と浮上してきたのでした。
さて、蔵王温泉の朝風呂を堪能し、その出浴後に体表面の色変化に驚いた私たちは、二人して、朝食をいただきに、食堂に向かいました。
そしてまた、ここで、二人の身体において、非常におもしろい現象に出くわしたのでした。
次回は、その現象に詳しく分け入ることにしましょう(つづく)。
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