「円危機」(2)

 先週の金曜日に、アメリカのダウ平均株価は、1日で1000ドル低下という暴落になりました。

 FRBのパウエル議長が、アメリカのインフレ来策として国債金利を上昇させる態度を明確に示したからでした。

 この暴落を前にして、投資家やトレーダーたちは目を丸くして驚愕していました。

 これによって週明けの日本では、株安と共に円安がさらに進行するであろうと予測されています。

 アベノミクスの異次元金融緩和によって、円を異常なほどに刷りすぎた結果、莫大な過剰円が発生しました。

 円をたくさん刷って市場に出せば、それが自分で動いて投資を増やし、同時に物価を値上げさせて。デフレから脱極できるという、真に甘い経済政策にもならない政策によって株価を吊り上げ、維持させたのみの金融財政政策の破綻が、コロナとウクライナ戦争によって、真に鮮やかに晒されてきました。

 日銀は、自分で円を大量に刷って国債として世の中に出すことができますが、それを自分で買うことができません。

 そこで、その国債を銀行に買ってもらうように仕向けました。

 銀行は、利子で儲けていく商売ですので、それが高い金利だと買うことができません。

 それゆえ、日銀は、その金利をマイナスからゼロにして、銀行が買いやすいようにしました。

 もちろん、銀行側は、それで儲けることができたので、その国債を買いまくりました。

 そして、その金を日銀内の当座預金として積み立ててtいきました。

 なぜなら、市場においては、国内での設備投資のための資金需要がほとんどなくなっていましたので、日銀内の当座預金として積み上げるしかなかったのです。

 その当座預金の総額は、550兆円にまで上り詰めてしまいました。

 日銀の経常利益は」、せいぜい1兆円ですので、じつに、その550倍もの金が預金として貯めこまれているのです。

 ここで重要なことは、これが何にも運用されていない、ただ積み上げているだけの、ある意味で「無駄な金」なのです。

 さて、現在の日本国債の金利は0.25%です。

 海の向こうのアメリカ国債の金利は2.8%であり、それを日本と比較すると、じつに11.8倍になります。

 最初の話題は、なんといっても、4月20日に1ドル129円を突破し、1ドル130円、さらには150円の壁に向かうことが予測され始めたことです。

 しかも、アメリカのFRBは、この5月に、さらに金利を引き上げ、今の2.8から3.3%にすることを表明しています。

 こうなると、その金利差は、13.2倍にまで上昇します。

 この金利差が主な原因になって、日本の国債を売り、アメリカ国債を買う流れが大きく強まっています。

 これに対して、日銀は打つ手がなく、先週におけるアメリカの大学での講演において、黒田総裁は、今の円安の急速な進行に何も言及できませんでした。

 すなわち、これによって市場は、今の円安が黒田日銀総裁によって容認されたと解釈したのでした。

 おそらく、今週から来週にかけて、さらに円安が進み、1ドル130円を軽く突破、1ドル150円に迫るという状況が生まれる可能性が高まってきているようです。

 しかも、この円安傾向は、対アメリカのドルに対してのみではなく、ユーロを始めとする世界の25過去国のほとんどすべてにおいて強まっているという超異常事態に陥っているのです。

 日本から世界を見るのではなく、世界から日本がどのように観られているのか、が重要なことなのです。

 この円安の急激な進行は、日銀と日本政府がほとんど何もできないどころか、むしろそれを容認しているようにすら観えるシグナルとなっているのでしょう。
 
 アメリカのFRBに追随して日本国債の金利を上げていきたい、それしか、今の異常な円安を止めることができない、こう理解しているものの、それができない、ここに、これまでの破綻の付けがどっと押し寄せてきているのです。

 仮に、今のアメリカと同様に、日本国債の金利を2%に上げたらどうなるのでしょうか?
 日銀は、当座預金の550兆円に対して、11兆円の金利を支払わなくてはならなくなります。

 その金利だけで、日銀の利益の11倍ものお金が必要になります。

 これを毎年行うようになるのですから、その当座預金の金利の支払いだけで、日銀は債務不履行という「世界初の破綻」に至ってしまいます。
 日銀が破綻すれば、全国の銀行も立ち行かなくなるでしょう。

 加えて政府も成り立たなくなってしまうでしょう。一内閣の破綻どころの騒ぎでは済まなくなるでしょう。
 まさに、末恐ろしい事態が進行しています
(つづく)。


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チューリップ(中庭)