「円危機」

 じつは、第3950回記念シリーズとして「ウルトラ・パラダイムシフト」と題する記事を2020年4月17日から2021年2月13日まで14回にわたって執筆をしてきました。

 これらは、主としてコロナパンデミックによる経済不況について解説を試みてきたのですが、今年に入って、新型コロナウイルスの流行と共に、ウクライナでの戦争が勃発し、より大規模で深刻な経済状況が進展しております。

 そこで、「パラダイムシフト2022」という新たな題目で記念シリーズを開始しました。

 新型コロナウイルスは、オミクロン株を中心にして今後も蔓延が予想され、専門家によれば、これから2、3年は感染が継続していくという指摘も出てきています。

 また、ウクライナ戦争も、一向に終結する気配はなく、ますます長期戦の様相を帯び始めています。

 これらの事情を考慮して、本シリーズを、「ウルトラ・パラダイムシフト(3950回記念)」と接合させて、上記の「ウルトラ・パラダイムシフト2022(4700回記念)」と改題することにして、その第7回を届けることにしました。

 その理由は、今世界的な規模で起ころうとしているパラダイムシフトが、ますますウルトラ級になり始めていることにあります。

 最初の話題は、なんといっても、4月20日に1ドル129円を突破し、1ドル130円、さらには150円の壁に向かうことが予測され始めたことです。

 この異常事態を迎えて、元朝日新聞記者の山田厚史志(デモクラシータイムス代表)さんは、「これは単なる円安現象ではなく、『円危機』である。かつて『ポンド危機』と呼ばれるものがあったが、それよりも大規模で深刻である」と指摘していました。

 同じように、群馬大学名誉教授の山田博文さんは、A紙において次のような重大な指摘をなされています

 「しかし、この肝心な時に、日銀は『物価の番人』として身動きできない事態に追い込まれています。アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策の悲惨な末路です」

 「円安はむしろ、国民生活を苦しめる事態を引き起こしています。原油・天然ガス・原材料・食料を海外に依存する日本の輸入物価を高騰させ、高騰した輸入物価が企業物価を押し上げ、それが一番川下の消費者物価に転嫁されるからです。

 円安が進めば進むほど、国内の物価が上がり、生活は苦しくなる悪循環に陥っています。

 こんな状況にもかかわらず、日銀が身動きできないのは、アベノミクスの負の遺産に縛られているからです。

 異常な低金利水準を維持しないと、財政破綻や株式バブル崩壊を引き起こし、場合によっては日本発の大恐慌が発生するからです

   以上のように、今の日本経済は、「円危機」、「財政危機」、「バブル崩壊」、「日本は発の大恐慌の恐れ」すらある、真に空恐ろしい状況になりつつあります。

 これらは、不況と物価高による「スタグフレーション」という最悪の事態が日本に襲ってくる可能性を指摘しており、文字通りのウルトラ級のパラダイムシフトの悪循環に入り込もうとしています。

 すでに、アメリカを始めとする先進主要国は、過度のインフレを防ぐために国債の長期金利の利上げを実行しています。

 日銀は、これと同じ政策を断行すべきなのですが、それができずに、その金利差の拡大を放置したままになっているのです。

 その「一番の番人」の日銀総裁の黒田さん、あなたは、なぜ、何もしないのですか?

 このまま、円の危機的状況を黙って見ているだけなのですか?

 この無策と無責任の看過が、事態を一層奈落へと突き落としているのではありませんか?

 今や、日米の国債の金利差は約10倍に広がっています。

 さらに、アメリカのFRBは、0.5%増の金利上昇を来月に行うことを明らかにしています。

 そうなると、ますます日米の金利差は拡大してしまいます。

 すでに、日本の企業が円を売ってアメリカ国債を大量に買っているではありませんか。

 あなた方と政府の無策が、この日本売りを促進させているのですよ。

 国民は、相次ぐ値上げラッシュで悲鳴を上げています。

 このまま、国民に生活苦を強いるのであれば、その鉄槌の反撃を受けることになるでしょう。


 この日本特有のスタグフレーションの凄まじさは、一内閣を吹き飛ばしてしまう規模と辛苦を孕んでいるのではないでしょうか。


 なぜ、ゼロ金利策に固執するのか?
 
 アメリカのFRBを始めとする政府系銀行のように、計画的に国債の金利を上げていくことができないのか、ここに、黒田日銀総裁の苦悩があります。

 何事も、アメリカに従属して自らをことごとく追従している日本が、この問題においては、それができないのは、なぜか、ここには二重の問題を抱えています。

 その第1は、そのゼロ金利政策の下で大儲けをしてきた企業に対して背を向けることになるからです。

 現在の国債の金利は、0.2%程度ですので、100万円分の利息は2000円にしかなりません。

 かつては、5%前後であったことから考えると5万円の利息が2000円にしかならないわけで、差し引き48000円は、吸い上げられてしまったことになります。

 このように国民に払うべきものを無くしてしまうことで、破格の大儲けをしてきたのは誰でしょうか?

 ここで簡単に国債の金利を上げてしまうと、その方々の期待に背いてしまう、どうしようか、これがかれの深い悩みなのです。

 それにしても、自分でも無茶苦茶をしてきたな、と思っているはずです。

 それは、赤字国債の総額、すなわち国の借金が1000兆円を超えてしまったことであり、世界一の借金大国になってしまったことです。

 借金だから、それを返していく必要がありますが、この1000兆円余は、返すことができる額をはるかに超えています。

 かれは、国会において、国債の金利が1%上がると、その払うべき利息はいくらかと聞かれて、「23兆円」と答えています。

 現在が0.2%ですので、4.6兆円の利息を払っていることになり、おそらく、これが限度に近いのではないでしょうか。

 その何倍もの利息を払う、そんなことを考えると、怖くて身が縮む思いになっているのではないでしょうか。

 さらに、怖い話があります。

 それは、円の危機、日本発の大恐慌へ進む途上にあることなのかもしれません。

 次回は、その、もう一つの奈落への入り口に分け入っていくことにしましょう(つづく)。

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フリージャ(中庭)