スーパー「エース」の海鮮丼
地元のスーパーであるエースに立ち寄った際に、時々、特製の「海鮮丼」を購入します。
じつは、こちらに来て10年以来、お気に入りの商品となっています。
この間、その値段がほとんど同じで、中身の手抜きもないところがよいですね。
さて、この海鮮丼の主役は、文字通りの新鮮な魚たちです。
ブリ、マグロ、鯛などの新鮮な刺身をより細かく切って、ご飯の上にふんだんに散りばめられています。
まずは、その写真を示しましょう。
これを見て、その魚と卵焼きの多さにびっくりされるのではないかと思います。
ご飯の量も多いことから、これを食べきると相当な満腹感を覚えるようになります。
そして、新鮮な魚の生の味がすばらしく、それのみを刺身として楽しむことができます。
こちらの郷土料理として「りゅうきゅう」というメニューがありますが、これは新鮮な魚の刺身を細かく切って、それに特製の醤油タレをかけていただきます。
この「りゅうきゅう」を好んで食べていますが、丁度、それをご飯の上に載せて食べる料理が、この海鮮丼に相当していると考えてもよいでしょう。
この丼のおもしろいところは、マグロ丼、ブリ丼、鯛丼、その他の白身魚丼というふうに、それぞれ味と旨味が違う丼を交互に食べていくという楽しみがあることです。
また、それらをミックスして一緒に複合的な味を楽しむこともできます。
海鮮丼といえば、前の職場があった周南市でもよく食べに行きました。
ここの行きつけの寿司屋では「司丼」と呼ばれていて、各種の刺身と卵焼きを丁寧に載せて食べる方式で、タレはかけずに、皿に入れた醤油に浸けて食べました。
おそらく、30年くらいは通った寿司屋ですので、最後の方は、その値段が1000円以上した記憶があります。
亭主のこだわりが生んだ、この「司丼」は、私が約30年通うほどに立派で飽きないものでしたが、その途中で、亭主がお亡くなり、息子さんと奥様が代わって務めておられました。
ある時、その司丼をいただきながら、奥様と歓談していたら、このようなことをいっておられました。
「亭主に代わって頑張っているのですが、やればやるほど赤字になるので、もうやめようかと思っています」
亡き亭主さんは、その司丼に拘って、小さな店から大きな店へと発展させ、その味と価格を守り続けたのでしたが、それを上手く発展できなかったのでしょうか、残念に思ったことがありました。
こちらに来て、じつは、大変すばらしい海鮮丼に出会ったことがありました。
そこは、杵築市の海岸沿いにある店でした。
相棒が、おいしいというので、何度か、そこに食べに行ったことがあります。
ここも、ご飯の上に新鮮な上に刺身を載せるという料理でしたので、司丼と同じ方式でした。
しかし、この海鮮丼のすばらしさは、刺身の飛び切りの旨さにありました。
なかなか、このように格別に旨い刺身を食べることはありませんので、深く印象に残りました。
値段は1300円であり、司丼と同様に、それだけの代金を払ってもよいと思えるほどの満足度がありました。
ところが、この写真の改善丼は399円ですので、破格的な値段です。
しかも、上記の丼に使われた魚よりも新鮮で、味の方も、そんなに劣ってはいませんので、ここは価格で勝負あり、といってもよいでしょう。
おそらく、都会で399円で販売されるのであれば、この海鮮丼は飛ぶように売れて大ヒット商品になることでしょう。
それは、輸送費を込みにして500円でも十分に好まれることでしょう。
一日1000食、単価を500円にすれば、総売り上げは50万円になり、ビジネスが立派に成り立つのではないでしょうか。
このことは、大ヒット商品になる種が、ここにはすでにあることを示唆しているわけで、おもしろそうなビジネスチャンスと想定してもよいでしょう。
さて、もう一つの重要な問題は、なぜ、このような価格帯での販売がなされているかということです。
その答えは、簡単明瞭です。
値段を上げると誰も買わなくなるからです。
おそらく、500円にしたとすれば、それだけ利潤が増えることになりますので、店長さんは大喜びするでしょう。
しかし、そうはならないのです。
それは、誰も買わなくなり、売れ残りが出てしまうからです。
なぜでしょうか?
時々、このスーパーのチラシを見ることがありますが、そこには、商品ごとに100円という価格が示されています。
すなわち、ほとんどの商品が100円を基準にして設定されているので、その100円商品経済が、しっかり形成されているのです。
これは、都会で100円ショップが繁盛していることと同じ現象と考えてよいでしょう。
この100円経済を基本としていますので、この海鮮丼の値段は、およそ、その4倍です。
それゆえ、このスーパーでは、かなり高級な商品の一つとして定着しているのです。
しかし、それでも夕方になると売れ残りが出てきますので、その場合には、3割引きの値札が加えられます。
その値段は約280円ですので、「これはシメタ!」と思って、すぐに籠に入れることにしています。
つまり、ここでは、ほとんどの食料品が安く、「100円経済」といってもよい状況が古くから持続され、定着しているのです。
それゆえに、年間所得が100万円であれば、ぜいたくをしないかぎり、悠々と生活することができるのです。
しかも、新鮮な野菜や果物、そして魚が、安く手に入るのですから、これこそ、今の時代にふさわしい豊かさ、そのものではないかと思います。
ガソリンや小麦など、すべての物価が上がり始めた昨今ですが、これに加えてコロナ危機がますます進行し、おまけに、この30年間の実質賃金は下がりぱなしで、これこそ踏んだり蹴ったりの生活を余儀なくされています。
起業は価格を上げて利潤を増やしたいのですが、それを上げると買う側は、賃金が上がらないので、買い控えになり、売る側はますます困ってしまいます。
そんななかで、真に豊かな生活とは何か、そのことを深く考えさせられた海鮮丼でした(つづく)。

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