「七島イ」産業革新のための二課題
 
 この課題のための最初の突破口(ブレイクスルーポイント)が、次の③と④に関することです。

 ③毎年、計画的に安定した生産量を十分に確保可能な「七島イ農作技術」において「未発達」な部分がある。

 ④七島イ「二期作」が、さまざまに試みられてきたが、いずれも成功には至らず、いわゆる「二期作ブレイクスルー」が実現されていない。

「二期作」問題の解決方法の探究(3)
 
 今年2022年は、この解決方法が本格的に試されることになるでしょう。

 単なる「思い付き」や「ひらめき」に終始するのではなく、実践的に、その探究がなされることが必要になるでしょう。

 従来の七島イ栽培は、国東の最も適した天候環境の下で実施されてきたことから、この一期作のみでよいのであれば、その概念を創造的に破壊する必要は少しもありません。

 しかし、それでは治まらずに二期作というブレイクスルーを成功させようとするのであれば、従来の方法に拘ることは、むしろ好ましくなく、危険性すらあるように思われます。

 むしろ、それを壊して、真っ新の状態で考え直す方がよいのではないか、とさえ思います。

 これを七島イ栽培法の創造的破壊と呼ぶことにしますと、それには、次の必要条件が備わる必要があるのではないでしょうか。

 ①自然の田圃においては、天候を制御できませんが、ハウスのなかですと、それが可能になります。

 断熱性の良いハウスでは、真冬でも、国東程度の寒さであれば、春のようなオアシスの状態を造り出すことができます。

 七島イは、冬から春にかけて苗を育てていきますので、それをより早期に行うことができれば可能性が生まれてくるのではないでしょうか。

 ②ここまでは、誰からも疑問を投げかけられることはないでしょう。

 また、それは、もしかしたら実現できるかもしれないと、少なくない方々が思われることでしょう。

 ここで必ず出てくるのが、次の疑問です。

 「たとえ、それが可能になったとしても、ハウス栽培では経費が嵩んで、採算が採れないでしょう。

 現状と比較しても、あまりにも費用が掛かり過ぎて話にならないではないですか?」

 かつて、トマト栽培をしている農家の方が、そのハウスのなかで七島イを栽培されていましたが、かれも、このような問題を指摘されていました。

 そのかれは、

 「試しに栽培しているだけで、実用化は無理です。これで生計を立てることは考えていません」

と、きっぱりいっていました。

 ③大概は、ここで終わってしまうのです。

   すなわち、それ以上には、科学的に、そして、その問題を突破(ブレイクスルー)する方法を探究しないことから、当然のことながら、その解決方法を見出せないままで止まってしまっているようです。

 その科学的なブレイクスルーの方法とは何でしょうか?

 その課題を解決していくには、次の3つを検討していくことが重要です。

 1)土耕か、水耕栽培か?

 これまでは、前者の栽培法が主であり、それを基本にして技術的な発展を遂げてきました。

 また、後者については本格的な探究がなされたことはなく、その発展も確立もなされていませんでした。

 そのことは、どのような水耕栽培方法が七島イに適しているかについては、未検討のままであることを示唆していました。

 もともと、七島イの苗は、田圃に水を張った状態で植え込まれます。

 また、東南アジアにおいては、水張がなされた湿地帯で七島イが自生していますので、これを水耕栽培のひとつと考えてもよいのです。

 重要な問題は、単なる水を張る程度の水耕栽培ではなく、七島イの大幅な成長と高品質化が可能な革新的な水耕栽培方法を、どのように開発し、その確立によって、新たな地場産業の再生を実現していくかにあるのではないでしょうか。

 2)断熱特性に優れたハウスか、それとも普通のビニールハウスか?

 これまでに、3つの断熱特性が異なるハウスにおいて、七島イ栽培を試験してきました。

 以下に、それぞれの断熱特性を示します。

 A型:小型ビニールハウス 約4㎡ 天窓なし
 
 B型:小型ポリカーボネート板ハウス 約6㎡ 天窓あり

 C型:厚手のポリカーボネート板ハウス 40㎡ 窓あり

 AからCへと向かうのしたがって、その断熱特性は向上していきます。

 A型は、これまでよく使用されている農業用のビニールハウスと同じであり、これには天窓がなく、上部に高温の空気が溜まりやすいことから、背の高い七島イは、その高温の影響を受けやすく、そのために成長が阻害されてしまいます。

 すなわち、通常のビニールハウスでは屋根の部分が低すぎて、そこに高温の空気塊が溜まりやすく、さらには、その側面部における天井丈が低いために、七島イ栽培には不向きなのです。

 それゆえ、このビニールハウスにおいて七島イ栽培を行った事例は、ほとんど、これまでに見かけたことはありません。

 通常の農業用ビニールハウスは、背丈の小さい農作物の栽培用に開発されたものなので、それを七島イ栽培に転用するには無理があります。

 安くて、温室効果を得やすい農業用ビニールハウスなのですが、それが七島イ栽培には適用できないことから、七島イ専用の栽培ハウスを考えなければならないことが、七島イ栽培のハウス栽培への転換を困難にしていたという技術的問題があったのではないかと思われます。 
 
 そこで、⑴ハウス上部の高温空気塊を排除する、⑵側壁部の背丈を高くすることが可能な、⑶温室効果を高めることを可能にするハウスとして上記のB型ハウスの導入が検討されました。

 次回は、この温室効果についてより詳しく分け入ることにしましょう(つづく)。

Bgata
               B型ハウス(2017年8月)