なぜ、水槽内のホタテが死ななかったのか?
耳吊り後に水槽内に入れられたホタテが、連鎖反応的に死ななかったのか?
すなわち、一つが死んでいても、それだけに留まったのか?
その斃死防止に光マイクロバブルがどのような役割を果たしたのか?
当時は、これらの疑問に関して不明なことが多く、それらを詳しく究明するまでには至っていませんでした。
ただ、光マイクロバブルの生理活性作用によって、その斃死防止が実現されたのであろうということに関しては、ほぼ間違いはないという確信を得ていました。
その生理活性作用とは、単に光マイクロバブルが酸素供給を行うということではなく、それが低酸素濃度においても、十分に生理的活性を引き起こすことで斃死から抜け出す生命力を発揮できるという意味においての作用のことです。
すでに斃死に至るまでに弱体化したホタテは、その周囲の低酸素濃度の向上のみでは、自らを生理的に活性化させて、斃死に近い状態から抜け出すことはできません。
それは、酸素呼吸がわずかしかできないほどに弱っているはずですから、その酸素呼吸が十分にできるほどの活性作用がもたらされないと蘇生できないのではないでしょうか。
こう考えますと、まず最初に重要なことは、斃死に抗する生理的活性作用を得ることが先で、それを得てから酸素呼吸を可能にする、この二つの段階があることを認識することが重要であるように思われます。
私たちにとって酸素は不可欠の物質です。
これを日常的に呼吸して生きています。しかし、その呼吸によって、何か特別の生理的活性が生まれているでしょうか?
それでは植物はどうでしょうか。一部の方々が、その植物に高濃度の酸素を与えて、その成長促進を図ろうとしましたが、その目的は実現されませんでした。
酸素が不足状態になっている生物、そして酸素不足のヒトにも酸素を与えることは有効であり、それによって呼吸ができるようになり、生命の回復や維持が可能になります。
しかし、それは生物的な特別の活性現象とはいえないように思われます。
その特別の生理活性的作用とは、低酸素濃度下においても生きることができ、その酸素呼吸を可能にするほどの活性作用のことです。
たとえば、すでに紹介してきたS社の排水処理におけるエアレーションタンクにおいては、溶存酸素濃度が2ppm前後という低酸素濃度下の状態にありました。
ここに光マイクロバブルを供給することによって、そのタンク内の微生物の総量が2倍になりました。
タンクの容量は1000トンでしたので、膨大な微生物の量が増加したことになります。
この現象は、酸素呼吸よりも、光マイクロバブルによって特別の生理活性作用を誘起させたものと考えることができます。
さて、ホタテの話に戻りましょう。
一つのホタテが死に、そこで腐敗菌が蔓延り、それらが急激に周囲の海水中の酸素を奪ってしまい、隣のホタテが瀕死に喘ぐようになる、この状態を考えてみましょう。
このお隣のホタテは、すっかり弱ってしまって、酸素呼吸を行うのが難しくなっています。
このホタテにまず必要なことは、十分な酸素供給ではなく、酸素を呼吸できる生理的な活性力ではないでしょうか。
この活性力の付与によって、それこそ、そのホタテが元気になることで呼吸力を回復させるようになるのではないでしょうか。
この回復によって、生き続けることを成し遂げたからこそ、一匹は死んでも、その周囲は死なない、この現象が起きたことから、ホタテ斃死の連鎖反応を食い止めることができたと推察しています。
この斃死の連鎖の防止は、広島のカキ養殖、そして、その噴火湾のホタテ養殖、さらには、英虞湾の阿古屋貝養殖によっても実証されました。
周囲の筏においては、悲惨なほどに斃死が進行していても、光マイクロバブル供給の筏では、その防止がなされて立派に生きている、これが、それらにおける共通の注目すべき現象だったのです。
ホタテもカキも密殖状態で育っている
ホタテやカキ、そして阿古屋貝の稚貝段階では、かなりの密殖状態で育っていますので、それが一概に悪いわけではありません。
それぞれの稚貝では、酸素呼吸や餌のプランクトン供給において差支えないほどに少ないから蜜の状態で育ててもよいのです。
ということは、十分な酸素と餌の供給がなされれば、かなりの密殖がなされてもよいという結論があり得ることになります。
北海道からの訪問者のHさんに忠告された専門家は、その密殖育成の構想を奇想天外で常識外れと一笑に付されたそうですが、それでは、十分な酸素と餌を補給することができないと考えられたからではないでしょうか。
そこで、もう一つの密殖事例を、次回において紹介しましょう。
この事例は、Hさんの構想を後押しする理由のひとつになりうるものでした
そして、それは、水産業におけるブレイクスルーの可能性を見出すヒントにもなりました。
(つづく)
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