光マイクロバブルとは何か (2)

 前記事において、光マイクロバブルの定義を次のように示しました。

 「光マイクロバブルとは、その発生時において1~65㎛(1/1000mm)の直径を有する極微細で、その発生後は、自ら収縮していく気泡である」

 この定義において、その正しい理解のために、以下の問題を明らかにしておく必要があります。

 ①「その発生時」という時間的提示を行ったのは、なぜか?

 ②なぜ、1~65㎛というサイズの限定範囲を設定したのか?

 ➂自ら収縮する気泡とは何か?

 まず、①の解説から始めましょう。

 光マイクロバブルは、常に動いており、一時たりとも同じ形態に留まることはありません。

 自己運動を呈し、常に変化を遂げている、これが光マイクロバブルなのです。

 鴨長明の『方丈記』の冒頭の文章である、

 行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし」

にあるように、水も泡も、「消えては生まれる」中で常時変動しているのが自然の姿なのです。

 それゆえに、その動きの起点が重要なのです。

 この場合の起点とは、発生装置のなかで光マイクロバブルが発生させられ、それが、その装置の出口から噴出された瞬間が、「その発生直後」ということができます。

 「その発生直後」が「時間的起点」であり、ここから、光マイクロバブルの収縮が開始されます。

 すなわち、「その発生直後」とは、「光マイクロバブルの収縮開始」時点のことであり、この時点設定がないと、光マイクロバブルは、いつでも、どこでも常に変化していますので、その自己運動の挙動を正確に観察することができません。

 次に、②の解説に進みましょう。

 最初は、光マイクロバブルのサイズの下限を1㎛とした問題です。

 これは簡単に説明できることで、それよりも小さくなるとマイクロメートルサイズからナノメートルサイズになりますので、その小さの限界値が1㎛なのです。

光マイクロバブルの最大サイズ

 それでは、大きい方の65㎛は、どのように決められたのでしょうか?

 この問題に関しても、きちんとした次の根拠があり、それを徒に、あるいは思い付きで決めたわけではありません。

 一時期、この値を「50㎛」という説があり、それが「なぜなのか?」が説明されないことによる一種の混乱が生まれていました。

 ある学会の席上において、その学会幹部の方から「50㎛ではなかったのですか。なぜ65㎛なのですか?」と尋ねられたことがありました。

 その方は、その上限値が、どのように科学的に決められたのかを知りたかったようで、なにも解らないまま、その上限値が「50㎛である」と聞かされ、そのことに疑問を抱いておられました。

 それでは、その根拠を示しましょう。

 その第1は、実際の発生頻度分布を計測し、その分布形状から判断したことです。

 じつは、光マイクロバブルの発生頻度分布を求めることが容易ではありませんでした。

 数㎛~数百㎛の光マイクロバブルを精度よく可視化し、その大きさを測定することが難しかったのです。

 高性能の計測装置を用いて、この発生頻度分布を計測することはできません。

 その理由は、それらの類の計測装置のほとんどにおいて、その計測に20分前後の時間を要することから、その時間において光マイクロバブルが変化してしまうことから、何を捉えて何を計測していることが不明なことにあります。

 そこで私たちは、独自の計測装置を開発し、ほぼリアルタイムで気泡径を計測できるようにしました。

 この精密計測において、私どもが最も苦労したのは、発生直後の光マイクロバブルを鮮明に可視化できるようにすることでした。

 しかも、この光マイクロバブルは、常に変動しながら水中を上昇していますので、その追跡できるようにすることでした。

 これらの問題を解決するために、独自の可視化計測装置システム(可視化水槽、精密可視化装置(マイクロスコープ)、3次元トラバース装置など)を考案しました。

 このシステムを熟練使用することによって、光マイクロバブルの発生頻度分布を精度よく求めることができました。

 この分布の特徴は、その最頻値が25~30㎛である、その分布の幅は、5~65㎛であることにありました。

 すなわち、光マイクロバブルの発生頻度の最大値が65㎛であり、それ以上の大きさでは、ほとんど発生していないことから、その65㎛が決められる根拠のひとつとなりました。

 第2は、光マイクロバブルが収縮するか、あるいは膨張するかの境界値に関することです。

 私が開発した超高速旋回式発生装置によって発生させられた光マイクロバブルは、その発生直後から、自分で収縮するという、それまでの気泡の常識を覆す特徴を有していました。

 光マイクロバブルが収縮する、この新現象が発見されたことは、私だけでなく、少なくない気泡の専門家を、腰を抜かすほどに驚かすことになりました。

 なぜ、このような非常識の気泡が生まれたのか、それを探究するだけでなく、どこで、その気泡の収縮現象が発せしなくなるのかを明らかにすることも重要な課題でした。

 そこで、様々なサイズの気泡を精密計測し、それらが収縮していくのか、あるいは反対に膨張していくのかを詳しく調べてみました。

 この結果から、光マイクロバブルの収縮と膨張の境界値が65㎛であることが明らかになりました。

 すなわち、65㎛よりも小さいと光マイクロバブルは収縮し、それよりも大きくなると膨張していくのです。

 以上の結果を踏まえて、光マイクロバブルの発生範囲を「1~65㎛」と、具体的に示すことにしました。

 上記➂については、次回において解説することにしましょう。

(つづく)

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隣の花壇に咲いていた