はじめに(2)
以来20年余が経過し,マイクロバブル技術は,当初の予想をはるかに超える分野にまでの広がりを見せ,徐々にではあるが,着実な発展を遂げていくようになった.それを可能にした最大の理由は,マイクロバブルとマイクロバブル水が格別に優れた物理化学的特性と新たな機能性を有する「新たな物質と液体」であったことにあった.
しかも,これらの特性と機能性が,現場の技術と適合しやすい性質を有していたことから,あたかも燎原の火のように既存技術との結合と融合を成し遂げ,富士山のように広大な裾野を形成しはじめたのであった.
この文章において、まず重要なことは、当初の予定をはるかに超えて、(光)マイクロバブル技術が、あたかも燎原の火のように拡大・発展していったことです。
周知のように、現代の科学技術の発展は急激であり、日々の更新が絶えずなされています。
そして、そのなかで新たなものが生まれ、それ以上に古くなったものが消え去っています。
そのことは、コンピュータや電機産業の世界を見れば、すぐにお解りのことでしょう。
わたしたちに対しても、「5、6年もすると、マイクロバブルも消えて無くなっていくでしょう」とよくいわれたものでした。
しかし、(光)マイクロバブル技術は、そのような甘く、正確でない予想を大きく裏切るものとなり。四半世紀を経た今もなお、弛まず持続的な発展を遂げています。
それが可能になった最大の根本的理由は、「光マイクロバブルと光マイクロバブル水が格別に優れた物理化学的特性と新たな機能性を有する『新たな物質と液体』であったことにあった」ことでした。
この「格別に優れた物理化学的特性」とは何でしょうか?
この物理化学的特性とは、第1に、光マイクロバブルが収縮することであり、その収縮する過程で高温高圧化し、光を放つことを繰り返すことです。そして第2に、その高温高圧化された光マイクロバブルという小さな閉ざされた空間の中で特別の化学反応を生起させることです。
これらの注目すべき現象は、1995年における光マイクロバブル技術の公表以来、持続的な研究を行うなかで新たに発見されたことであり、そのことが、単なる収縮しない膨張するマイクロバブルと収縮する光マイクロバブルの本質的な相異であることも明らかになりました。
さらに「新たな機能性」とはいかなるものなのでしょうか?
その最大の特徴は、光マイクロバブルの物理化学的特性に裏付けられて光マイクロバブル水が「固有の生物活性」を示したことにありました。
これを最初に見出したのは1997年のことであり、私と女子学生(高専4年生)二人で行った血流促進実験でした。
最初は、なぜ、大幅な血流促進が起こるのか、その意味も理由も解らず、わが目を疑いました。
しかし、何度行っても、同じ結果が出てきましたので、それは衝撃から確信へと変化していきました。
そして、この結果を踏まえて、広島カキ養殖改善に取り組みました。カキが、なぜ光マイクロバブルで急成長したのか、瀕死の状態を、なぜ救ったのか、これらの結果について当時のNHKニュース7は、半年ごとに3度にわたって連続的に報道し、少なくないみなさんから拍手喝さいを浴びたのでした。
そのときまでの微細気泡の常識は、次のようなものでした。
①気泡は、小さくなるのではなく、膨張して大きくなっていくものである。
この常識に基づいて、小さくなっていく気泡(光マイクロバブル)の研究は皆無でした。その最大の理由は、収縮が可能な光マイクロバブルを発生させる装置が、この世に存在していなかったことにありました。
②気泡には、そのなかの酸素を溶かして酸素溶解濃度を向上させる機能はあっても、それが生物活性を引き起こすことはまったく想定外のことであった。
この生物活性は、光マイクロバブルの物理化学的特性に結びついた新たな機能を発揮することによって成し遂げられるものであり、そこにこのような科学の世界があることは、予想だにできなかったことだったのです。
それゆえに、光マイクロバブルと光マイクロバブル水は、「新たな物質」であったのです。
この新物質に関する研究が、今や世界中でなされるまでになっていますが、それでも、この世界の奥行は広く、深いのです。
それが、5年どころか、今や25年たっても、いまだに、それが汲みつくせず、多くの未知の分野を有している根本的理由なのです。
光マイクロバブル技術のもう一つの優れた特徴は、既存の技術と融合して、時には、それを小さな革命的成功に導いていることにあります。
これまでにおいて限界を迎えていた既存技術が、光マイクロバブル技術との融合において、再生し、さらに蘇生して新技術に変身していく事例をいくつもゆかいに観てきました。
その意味で、既存技術は不十分なままで能力を発揮できなかったことが、その融合と発展によってみごとに証明されるようになりました。
そして、今や。光マイクロバブル技術は、富士山のような広大な裾野を形成し始めました。
この裾野形成は、当然のことながら低いところから始まっています。
そして、この裾野が土台となって、より高い水準の裾野が積み重なっていくのです。
このような技術の裾野形成を誰が予想できたでしょうか。そして。それを実感できたでしょうか。
当然のことながら、この技術の創始者である私にとっても、このようなことは予想も想定もできなかったことでした。
それゆえに、この予想をはるかに超えた現実を俯瞰するたびにゆかいになり、喜びを感じています。
「人生は短し、学問は長し」
これは生物学者の山本宣治さんが遺した言葉ですが、齢を重ねるにしたがってますます胸に響くようになりました。
光マイクロバブル技術は、これから100年、いや1000年以上も生き続けていくにちがいありません。
もちろん、そのころには私は生きていないわけですが、5、6年どころか1000以上も持続していく技術だと思っています。
次回は、次の下りの解説に分け入ることにしましょう(つづく)。
この時期(1995~2014年)における発展の特徴の第1は,あたかも「吃驚現象」とも呼べるような成功事例が,次々に先行的に起こったことであった.当然のことながら,これらの成果が重要な刺激となり,後追いながらも科学的および技術的研究が広くなされるようになっていった.
同時に,もともと好奇心が強く,吃驚現象が好きな日本国民にとってマイクロバブルは受容しやすい技術であり,その成果がメディアを通じて報道されるたびに,その理解も徐々に広がっていった.
その典型的事例として,図1に,マイクロバブル育ちのカキ(大船渡湾で育った無放卵カキ(「バージン・オイスター」と呼ばれた)を示す2).短期間にみごとに成長を遂げた白銀色のカキであった.
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