書斎にパソコンを配備

 私の書斎に、新しいパソコンとモニターが入り、さらに、オフィスのソフトも配備していただきました。

 これで、この書斎を基地として本格的な秋の陣に臨むことができるようになりました。

 実際は、この狭い書斎(研究室2)を拠点にしながら、やや広い研究室1にも足を運んで行ったり来たりで、せっせと懸案に取り組んでいます。

 また、その合間に実験作業も行うという、やや複雑な行動パターンになっています。

 その新たな実験については、条件を変えての2つ目の実験を終えることができました。

 その結果は、1回目とよく似ている傾向のようで、この実験方法を踏襲して第3回目の実験を行うことにしました。

 しかし、ここで私がミスをしてポンプを故障させてしまいました。

 これで実験の続行は不可能になりましたので、新たな装置の組み立てを行うしかなく、その前に装置をきれいに清掃することにしました。

 なた、その合間に得られた実験結果をサンプル瓶に収め、それを机の上において毎日眺めていました。

 そしてら、ふと、あることをひらめきました。

          そうか、そうだったのか

 何気ない、わずかな変化が、時として、大きな問題になることがあります。

 「真理は細部に宿る」といわれますが、最初に、それに気づくときは、それこそ、ちらりとしか見えず、時として、それがほんの一瞬のことだったりするのです。

 今回は、ある材料の開発問題でしたので、それをどのように、どこまで試せばよいのかわからないままの開始だったのですが、意外と、その素人性が役立ったようです。

 まずは、無処理のサンプルが基準になりますが、これがどんなものかをよく理解していませんでしたので、その勉強から始めました。

 なるほどそうだったのか!

 何度か資料を繰り返し手読んでいて、それが頭の中に刻まれていきました。

 こんな時は、これまでの経験を振り返り、その解明ができて思い当たることがいくつもあると、それは、ほとんど科学的に合っているという経験を有しています。

 ここで用いる素材はAとB、前者は、これまでのものと違ってゆっくり均一に反応させるために開発されたそうで、これに対してBは、そのAを防御するためにあるようで、この両方の作用効果を一際抽出できるようにすることができないか、これが狙いのようでした。

 普通には、AとBが、それぞれの個性を持って独立に性質を発揮していますので、それをともに引き出すことは、まことに「虫のいい話」といってよいでしょう。

 そんな神業に近いことができるのかどうか、これはm真剣に考えると真に悩ましいことですが、私の流儀は、ここであまり悩まず、何か出てくるかもしれないと楽観的に考えて実験をすることです。

 運よく、そこから何かを見つけることができれば儲けものなのです。

 しかし、いくら前向きに実践を行うとしても、私どもの実験場には、ほとんど実験用の器具や計測器がありませんので、頼りになるのは私の五感と光マイクロバブルの発生装置しかありません。

 「それで、そんな難しいことがよくできるな?」

と思われてしまいますが、これが私のやり方であり、このような流儀で意外と上手くいくことがあります。

 しかし、そうでない場合もあります。

 悪質な事例では、そのノウハウだけを知ればよいと露骨に迫ってくる方がいました。

 その代わり装置を買ってやるから文句はないだろう、と思っていたのでしょう。

 いきなり初対面で、機密契約書案を作成し、厚かましくも、それに加えて共同研究案まで持参してきた企業がありました。

 それを読んで、さらにあきれ返りました。

 共同研究費は払わない、特許は自分のものであり、こちらには、特許を出すなと迫ってきたものですから、これは危ういと思いました。

 どうやら、どこかの補助金をいただいて、その目的を達成できないので縋り付いてきたようでした。

 「時間がないから、何とかしていただけませんか?」

と謙虚に依頼するのであれば、まだ考慮の余地はあったのですが、それが補助金による研究開発であることをいわないまま、「とにかく時間がない」とおかしなことばかりをいっていました。

 これでも社長なのかといいたくなりましたが、そこはぐっと我慢して対応しましたが、結局のところは、先方のいうままにならなかったことで、この話は案の定、頓挫してしまいました。

 必然の頓挫、このようなことばかりを繰り返しているのかと、半ば気の毒になりました。

             徐々におもしろくなってきた

 最初にAだけで実験してみてください、という依頼がありましたので、最初に、その実験から始めました。

 ところが、この実験はだめだということがすぐに解りました。

 水槽内が泡だらけになり、泡で光マイクロバブルを製造している状態になり、いわゆる空回りの泡づくりとなってしまい、泡だらけで終わりました。

 そこで、Aに少々Bを加えてみました。

 すると、どうでしょうか。

 いつもの光マイクロバブルの発生音がして、それがいつまでも持続していました。

 これならば、光マイクロバブルがきちんと出ているはずであり、これが、どう変化していくのかを想像しました。

 まずは、短時間で、その実験をいったん終了し、サンプルを採取しました。

 処理前のサンプルとそれを瓶に入れて並べると、その違いは一目瞭然でした。

ーーー おかしなことが起きたな?なぜこのようになったのであろうか?

 しかし、その理由は皆目解りませんでした。

 それが解らないままでしたが、実験を継続していくと、やはり、同じ現象が認められました。

ーーー そうであれば、何か、本質的なことが起こったのかもしれない?

 こう思ったものの、その原因はいまだに究明されていません。

 次は、この変化が、何をもたらすのか、その作用効果を調べてみることにしました。

 すでに、光マイクロバブル技術の開発においては、なぜ、なぜ、と思うことが多く、それを考える、試してみることによって、その謎が徐々に解けていく、この経験を何度も味わってきました。

ーーー もしかして、こうなのではないだろうか?これは、何に役立つのであろうか?そして、これはひょっとしたら、すごい発見になるのではないだろうか?

 このように、ワクワクしながら想像する、これが、この段階において、じつに楽しいことであり、これが開発者の冥利ということができます。

 この冥利は、多くの場合、「なんだ、その程度のことだっったのか」で終わるのですが、偶に、そうではないこともありますので、ここが、じつに、ゆかいなことなのです。

 そう思いながら、より詳しく探究していくと、その光マイクロバブルの結果の優秀性がしだいに明らかになっていきます。

 さて、今回の新たな実験においては、そのように光マイクロバブルの女神が微笑んでくれるのでしょうか?

 この道程はゆるやかで「急がば回れ」のようですが、しかし、それが、じつに楽しく、ゆかいなことなのです。

 (つづく)

yaruika
ヤリイカ(税込みで1000円、国東安岐港)