昨年の台風19号がもたらした河川災害は、戦後の河川行の小さくない破綻を示しました。

 これまでの治水思想や土地利用の考え方、さらには安全な国土づくりに関する根本的な見直しが迫られるほどの強い衝撃を内外に与えたのです。

 この反省が多少生まれたのでしょうか。

 先日、BSフジのプライムニュースを視ていたら官房長官がおもしろいことを述べていました。

 これは、かれがテレビのインタビューにおいて、なんらかの積極的発言をしたかったことを意味し、わざわざ時間を取って丁寧な説明を行ったことに現れていました。

 それは、今回の大災害を踏まえて、その改善を行なおうとした積極面を有していました。

 本来なら管轄である国土交通大臣がいうべきところなのに、わざわざ官房長官が提案したことにも、かれの意をくみ取ることができました。

 その内容は、今回の台風19号のような大災害をもたらす可能性がある場合には、台風の進路にあるダム貯水池を空っぽにして、大量の流入水をダムに貯留し、それによって洪水調節を行おうという案でした。

 これには、その司会者が、即座に疑問を呈しました。

 「もし、予想された降雨が少なくて、結果的にダムに水が溜まらなかった場合には、どうするのですか?」

 これも事前の打ち合わせしていたのでしょう。

 官房長官は、すぐに、次のように返答しました。

 「仮に、ダムに水が溜まらくなった折には、その不足分を政府が財政的に支援しますので、問題ありません」

 司会者も、「なるほど」と納得されていました。

 このやり取りを聞いて、こう考えました。

 ①今回の大水害は、これまでの治水思想と方法を根本的に改めないと同じ規模の災害を繰り返すことになる。

 おそらく、この被害はますます拡大し、深刻化していくであろう。

 ②国土交通省内の検討であれば、これまでの治水方式を抜本的に変えることはできずに部分的な改善案しか出てこない可能性があるのではないか。

 ③ダムにおいて貯水を維持する経済効果と河川災害による被害額の差が極端に多くなり、その重大性に関する国民の理解が進展している。

 ④どんなことがあっても安全であるという「原発神話」が崩れ去ろうとしている今、ここ数年の河川災害によって、同様に「河川は安全であるという神話」も大きく崩れかけている。

 結果として、国民は、より安全で災害がない地域を選び始めている。

 おそらく、来年も、今年と同じように、さまざまな災害がやってきて、その対策に追われることになると予測できますので、その対策を自分でしっかりと講じていく必要があります。

 そうしないと自分の生活の安全は守れない、確保できない時代がやってきているのだと思います。

 「今だけ、金だけ、自分だけ」の時代は、すでに各方面から雪崩を打って崩れ始めているのです。

 「わが亡きあとに洪水はきたれ!」といって逃げ出せる人は一部の人たちだけであり、これらの為政者やその周辺の方々にこの国と私どもの生活を任せるわけにはいかないと思います(つづく)。

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タンポポ