アコウ
一昨日は、珍しく、生きている「アコウ」という魚が手に入りました。
私も初めて見る魚であり、高級魚の一つとして知られています。
しかも、これを生きている状態で買ったのですから、これも大変な幸運事でした。
買って帰って、まな板の上で筋肉が動くほどでしたので、新鮮そのものでした。
早速、刺身にしようとされていましたので、その一切れをいただきました。
これは、いわゆる「つまみ食い」でした。
まず、その弾力性の豊かさが通常の魚とは比べ物になりませんでした。
そして、これを噛んでいっても、それが簡単に切れないので、いつまでも口のなかに残り続けました。
そして、それを噛み続けることによって、真にすばらしい旨み成分が出てきて、「これは旨い」と思うようになりました。
ーーー これが、高級魚といわれる魚の旨さなのだ!
と思い知らされました。
「これは、最高に旨いね。いくらだった?高かったのでは?」
「いいえ、そんなことはありませんよ。鯛と一緒に買いましたから、その2つで競り落とし値が800円でしたから、私が買った値段は1104円でした」
「ええっ、そんなに安かったの? 鯛も小ぶりだけど色つやがよかったので、400円か500円はしたでしょう。そうすると、このアコウは、700円か800円になりますね」
「そのくらいの買値になりますね」
「生きている体長30㎝のアコウが、7、800円? そんなことはありえない、吃驚するような安値だよ。今日は、お客さんが大喜びするでしょう」
案の定、お客さんのお一人が、このアコウの刺身を見て驚愕し、大きな声を挙げました。
この方は、相当な食通であり、アコウのおいしさ、貴重さを知り尽くされていましたので、大喜びでした。
「アコウの刺身を食べたら、他の魚を食べることができなくなります。その刺身を二切れください」
こういいながら、その刺身を満喫され、その言葉通り、他の刺身には一切箸を伸ばそうとはされませんでした。
こうして、アコウの刺身を絶賛しながらにぎやかな会話をしていると、真にタイミングよく、次にアコウの粗だけで作った汁が出てきました。
この食通は、このアコウの汁には塩も調味料も何も入っていなかったのですが、そのほうがよいといいながら、
その鍋を覗き込み、
「この頭の部分を入れてください」
といいました。
ーーー こいつは一番おいしいところを知っている!
と思いましたが、大切なお客さんの要望ですから、それに従うしかありません。
このアコウの頭が入った汁を自分のものにしたのですから、真に大喜びで、それをちびりちびりいただきながら、その幸せの声を大きく張り上げていました。
その様子を見ながら、あまりにも美味しそうなので、その椀を私の方に投げ出させて、その一番おいしい目の付近の肉をいただきました。
たしかに、大声を張り上げておいしさに感嘆しているだけの味を覚えました。
もちろん、その部分をいただいただけで、それをすぐに持ち主に返しました。
このお客さん、帰る時まで、「まさか、国東でアコウに出合うとは思わなかった」を繰り返されていました。
真に素敵なおもてなしができ、国東のすばらしい海の幸に感謝いたしました(つづく)。
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