トリマーになられた方々が、最初に思うことは次の4つです。
①ワンちゃんを、きれいに洗いたい。
②できれば、てきぱきと短時間に洗いを済ませたい。
③仕上げはふわふわにしたい。
④ワンちゃんを洗浄するだけでなく健康にして飼い主さんを喜ばせたい。
これまでの洗浄法においては、この①の課題を達成する際に、どのようなシャンプーを選ぶか、それが決定的に重要でした。
シャンプーは何のためにあるのでしょうか?
それは、泡立ちをよくして、その泡で汚れを洗浄する必要があるからです。
それでは、その泡は、なぜ、汚れを落とすことができるのでしょうか?
これには、泡の特徴が関係しています。
「泡」とは、広辞苑によれば「液体が空気を含んで丸く膨れたもの」です。
なかには気体があり、その周囲は液体の薄い膜で囲まれています。
液体には、自分の容積を最小限にしようとする力があり、これを「表面張力」といいます。
泡が丸いのは、この表面張力が働くからで、この張力は、表面の接戦方向に働き、互いに引っ張り合うことで、薄い球形の泡が形成されます。
この表面張力は、「単位面積当たりの表面エネルギー」で定義されます。
表面エネルギーは、解りにくい用語ですが、泡のように容積を最小にしようとするエネルギーと理解すればよいでしょう。
この場合、単位面積あたりですから、泡が小さいほど表面張力の値は大きくなることも、おわかりでしょう。
じつは、小さい泡ほど、その表面張力が大きく、その力によって汚れを剥がし、落としやすくすることができるのです。
すなわち、小さい泡ほど汚れを落としやすい、洗浄力が高いということができます。
普通の水では、泡を造ることができませんので、泡づくりのためにシャンプーを使用します。
シャンプーのなかには、界面活性剤というものが入っていて、これが界面活性剤を含む液体の表面張力を低下させることによって、より容易に泡を造りやすくしています。
わずかな液体と空気の界面の変動によって、そこに泡を造りやすくしているのです。
泡を造って汚れを落とす、この原理は、ワンちゃんだけでなく、ヒトが洗濯機で洗濯をするときにも適用されています。
いかに、短時間に泡を造り、汚れを落とすかについて知恵を絞っています。
たとえば、洗濯機を用いた場合、洗濯時間を設定するようになっています。
通常は、洗剤を投入してから洗濯を行いますので、その時間は、7分とか8分になります。
その間にかき混ぜ、泡を造り出すのです。
しかし、洗剤を入れていても、そう簡単には泡は出てきませんので、グルグルとかき回し、ようやく大量の泡が形成されるのに、それだけの時間を要してしまいます。
できるだけ、短時間に、たくさんの泡を造らせて、かき回すことによって、洗濯物に付着した汚れが落ちていくようになります。
逆にいえば、洗剤を入れて、洗濯物のなかで大量の泡を発生させるのに、どうしても7、8分ほどかかってしまうのです。
この大量の泡づくりが、それこそ2、3分でできるようになれば、それこそ画期的な洗濯機の開発が可能になるでしょう。
ワンちゃんの場合は、それを洗濯物のように取り扱うことができませんので、人力で泡づくりをしなければなりません。
シャンプーをワンちゃんにかけながら、いわゆる「ごしごし洗い」を手で行いながら、被毛内で泡づくりを行います。
ここで短時間に大量の泡を造るには、次の条件が必要になります。
1)シャンプーをふりかける量を増やす。
低濃度だとなかなか泡立ちません。
しかし、むやみやたらにシャンプーの使用量を増やしますと経費節減ができません。
2)ゴシゴシ洗うスピードを速める。
これを一日何回も行うようになると、手荒れが起きてしまいます。
いくら、ワンちゃんの被毛が柔らかいとはいえ、毎日、ゴシゴシとシャンプーをかけながら洗っていると、どうしも指や掌の皮膚を傷めてしまいます。
しかし、トリマーが思うほど、泡を大量に、そして欲をいえば小さい泡を大量に造り出すことは、なかなか容易なことではありません。
小さいワンちゃんならともかく、大きい犬になると、そのゴシゴシ泡立ても大変な作業になってしまいます。
トリマーのみなさんは、苦労をしながらゴシゴシ洗いをして泡を大量に作りだし、たとえ手荒れがおきても、それを我慢して泡立てをやるしかないのです。
傷口にシャンプー液を沁み込ませると、ますます手荒れが改善しにくくなります。
そして、どんなに優れたベテランであっても、この泡立てに数分間も要し、これは避けて通れない操作だと長く考えられてきました。
近年、このような問題を改善するために「泡だて器」なるものが登場しているようですが、それを購入するには小さくない経費が必要になります。
しかし、「泡立て器」を使用した場合においても、単に泡を大量に造ればよい、ということではありません。
問題は、どのくらい小さい泡を造ることができるかどうか、それによって汚れを落とす主役、すなわち表面張力の大きさが、どのくらいなのか、にあります。
次回は、そのことについてより詳しい解説を試みることにしましょう(つづく)。
ゴシゴシ洗いの泡立てをせずにいきなりマイクロバブルフォームづくりを行っている様子(トリマーは国東市のMさん)
①ワンちゃんを、きれいに洗いたい。
②できれば、てきぱきと短時間に洗いを済ませたい。
③仕上げはふわふわにしたい。
④ワンちゃんを洗浄するだけでなく健康にして飼い主さんを喜ばせたい。
これまでの洗浄法においては、この①の課題を達成する際に、どのようなシャンプーを選ぶか、それが決定的に重要でした。
シャンプーは何のためにあるのでしょうか?
それは、泡立ちをよくして、その泡で汚れを洗浄する必要があるからです。
それでは、その泡は、なぜ、汚れを落とすことができるのでしょうか?
これには、泡の特徴が関係しています。
「泡」とは、広辞苑によれば「液体が空気を含んで丸く膨れたもの」です。
なかには気体があり、その周囲は液体の薄い膜で囲まれています。
液体には、自分の容積を最小限にしようとする力があり、これを「表面張力」といいます。
泡が丸いのは、この表面張力が働くからで、この張力は、表面の接戦方向に働き、互いに引っ張り合うことで、薄い球形の泡が形成されます。
この表面張力は、「単位面積当たりの表面エネルギー」で定義されます。
表面エネルギーは、解りにくい用語ですが、泡のように容積を最小にしようとするエネルギーと理解すればよいでしょう。
この場合、単位面積あたりですから、泡が小さいほど表面張力の値は大きくなることも、おわかりでしょう。
じつは、小さい泡ほど、その表面張力が大きく、その力によって汚れを剥がし、落としやすくすることができるのです。
すなわち、小さい泡ほど汚れを落としやすい、洗浄力が高いということができます。
普通の水では、泡を造ることができませんので、泡づくりのためにシャンプーを使用します。
シャンプーのなかには、界面活性剤というものが入っていて、これが界面活性剤を含む液体の表面張力を低下させることによって、より容易に泡を造りやすくしています。
わずかな液体と空気の界面の変動によって、そこに泡を造りやすくしているのです。
泡を造って汚れを落とす、この原理は、ワンちゃんだけでなく、ヒトが洗濯機で洗濯をするときにも適用されています。
いかに、短時間に泡を造り、汚れを落とすかについて知恵を絞っています。
たとえば、洗濯機を用いた場合、洗濯時間を設定するようになっています。
通常は、洗剤を投入してから洗濯を行いますので、その時間は、7分とか8分になります。
その間にかき混ぜ、泡を造り出すのです。
しかし、洗剤を入れていても、そう簡単には泡は出てきませんので、グルグルとかき回し、ようやく大量の泡が形成されるのに、それだけの時間を要してしまいます。
できるだけ、短時間に、たくさんの泡を造らせて、かき回すことによって、洗濯物に付着した汚れが落ちていくようになります。
逆にいえば、洗剤を入れて、洗濯物のなかで大量の泡を発生させるのに、どうしても7、8分ほどかかってしまうのです。
この大量の泡づくりが、それこそ2、3分でできるようになれば、それこそ画期的な洗濯機の開発が可能になるでしょう。
ワンちゃんの場合は、それを洗濯物のように取り扱うことができませんので、人力で泡づくりをしなければなりません。
シャンプーをワンちゃんにかけながら、いわゆる「ごしごし洗い」を手で行いながら、被毛内で泡づくりを行います。
ここで短時間に大量の泡を造るには、次の条件が必要になります。
1)シャンプーをふりかける量を増やす。
低濃度だとなかなか泡立ちません。
しかし、むやみやたらにシャンプーの使用量を増やしますと経費節減ができません。
2)ゴシゴシ洗うスピードを速める。
これを一日何回も行うようになると、手荒れが起きてしまいます。
いくら、ワンちゃんの被毛が柔らかいとはいえ、毎日、ゴシゴシとシャンプーをかけながら洗っていると、どうしも指や掌の皮膚を傷めてしまいます。
しかし、トリマーが思うほど、泡を大量に、そして欲をいえば小さい泡を大量に造り出すことは、なかなか容易なことではありません。
小さいワンちゃんならともかく、大きい犬になると、そのゴシゴシ泡立ても大変な作業になってしまいます。
トリマーのみなさんは、苦労をしながらゴシゴシ洗いをして泡を大量に作りだし、たとえ手荒れがおきても、それを我慢して泡立てをやるしかないのです。
傷口にシャンプー液を沁み込ませると、ますます手荒れが改善しにくくなります。
そして、どんなに優れたベテランであっても、この泡立てに数分間も要し、これは避けて通れない操作だと長く考えられてきました。
近年、このような問題を改善するために「泡だて器」なるものが登場しているようですが、それを購入するには小さくない経費が必要になります。
しかし、「泡立て器」を使用した場合においても、単に泡を大量に造ればよい、ということではありません。
問題は、どのくらい小さい泡を造ることができるかどうか、それによって汚れを落とす主役、すなわち表面張力の大きさが、どのくらいなのか、にあります。
次回は、そのことについてより詳しい解説を試みることにしましょう(つづく)。
ゴシゴシ洗いの泡立てをせずにいきなりマイクロバブルフォームづくりを行っている様子(トリマーは国東市のMさん)
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