つい最近、私たちの仕事を振り返り、これからを展望することを認める機会を得ましたので、それを2800回記念シリーズとして紹介することにします。

 今のところ、このシリーズは、7~8回の連載で終わる予定ですが、書き進めているうちに、筆が進むようになると、より多くの連載へと発展していく可能性が出てくるかもしれませんので、それは、一応の目途という程度のものです。

 さて、今世紀も20年近くになり、その初頭としての特徴を顕わにし始めています。

 前世紀においては考えられないような出来事が次々に起こり、変化の流れは、ますます加速度化しています。

 すでに、ご承知のように、かつての超優良電機メーカが相次いで身売りや倒産の危機に瀕しています。

  身売りしたS社、かつては私が幼いころから憧れていた名女優がテレビのコマーシャルに出ていましたが、もう、そのような出会いは期待できなくなりました。

 そして今ではT社が上場企業ではなくなる恐れもあるというのですから、事態は深刻です。

 関連も含めると全社員数は19万人、これから万単位でのリストラの嵐が吹き荒れることでしょう。

 この工場が、地元大分県にもあります。

 そこの社員や下請けの社長さんが、技術相談に来られたこともありました。

 しかし、ここも他社へ身売りすることが決まったと聞いております。

 一体全体、「製造業は永遠に不滅です」と、見栄を張ってきたみなさんは、どう考えておられるのでしょうか。

 この不振は、S社やT社に留まるものではありません。これらに続いて、H社や重工の最大手M社までもが「大変な状況に陥っているのではないか」と囁かれています。

 しかも、大手企業は100兆円を超えるという内部留保金を有しているといわれるなかでの、このような不振が連続して起こるのですから、ここには典型的な「跛行性」の進行が顕わになってきています。

 周知のように、ある経済学者は、「自動車以降、日本経済を牽引する『エンジン』が無くなってしまった」といい、新聞紙上では、イノベーションを起こすことや、それを加速させることが盛んにいわれ続けてきましたが、いまだに、その「新エンジン」は見つかっていません。

 また、別の経済学者は、行き詰まりの現状を打破する新たな先端産業づくりが必要とも主張していますが、それが何なのかについては明確に示されてはいません。

 そんななか、第4次産業革命の旗頭として、AIやIOTなどに期待を寄せる声も出始めています。

 しかし、これらの技術が、イノベーションを次々に起こし、日本経済を牽引する「新エンジン」になっていくことは、当面、ないのではないかと推察しています。

 そこで、私が検討してきた21世紀型の日本経済を牽引する「新エンジン」の必要条件は、次のようなものではないかと考えてみました。

 1. もはや、自動車や電機のような単一の分野における技術イノベーションを起こすことによって、そのエンジン形成を行う時代が終わり、これからは富士山のように広大な裾野を有する分野において、その技術的土台づくりが進むことで、それが初めて創造されるようになる。

 この壮大な創造を通じて、新エンジンの形成が可能となる。

 2. 一部の特定の大手企業のみでなく、圧倒的に多い中小企業や第1次産業の関係者、さらには市民が数多く参加して知恵を出し、工夫がなされることで、その裾野における適用分野を豊かに発展させることができるようになる。

 また、それぞれ個別の分野でイノベーション形成を可能にし、それらを連続的に発生させることで、持続的でより規模の大きなイノベーションへと発展させる。

 3. 科学に裏打ちされた独創的アイデアを基本とする、わが国発のオリジナル新技術の適用と発展を可能にし、その成果を踏まえて世界をリードしていくことを可能にする。

 4. 本イノベーション技術を、最も困難が山積している地域においても実践可能にし、それを軸とした地域の再生、拠点づくりを可能にする。

 5. 老若男女、個人・企業を問わず、多くの人々が実践的に技術の基本を意識的に学習し、研究し合う場の形成を可能とする。

 これらの5つの必要条件に最も近く、そして実現の可能性を有している技術の一つとして、マイクロバブル技術があるのではないかと密かに思ってきました。

 すでに、いくつかの分野においては、個別の実証を試み、その最初の段階における成果を得てきたものもあります。

 その意味で、本記念シリーズのテーマ名を「マイクロバブル技術が21世紀の未来を切り拓く」として、その世界に果敢に分け入ってみたいと思うようになりました。

 真にささやかですが、21世紀の未来を切り拓くために、マイクロバブル技術が果たすべき役割を考えてみたいと思います。

 次回は、マイクロバブル技術の適用分野を具体的に3つに区別し、それぞれの特徴を、これまでの20年余を振り返りながら考察してみたいと思います(つづく)。

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 陽光に輝く梨の花(YO氏提供)