マイクロバブルの科学と技術に関する、この20数年を俯瞰してみると、次のような特徴と問題がありました。

 マイクロバブル技術は、その固有の物理化学的特性、生物活性の優秀性によって、現場の技術とさまざまに結びついたことから、非常に広大な分野における技術的確立の試みがなされてきました。

 この過程は次の特徴を有していました。

 ①現場にマイクロバブル技術を適用した結果、予想以上の成功を得て、世間の注目を集めた。

 ②この注目に触発されて、マイクロバブル(ナノバブルを含む)に関する科学的研究が開始され、徐々に発展し始めた。

 ③マイクロバブル技術と科学の研究成果が相互に影響し合い、相補的発展を求めてきた。

 ④しかし、一方で、互いの問題点もあり、その解決法の探索が本質的に重要になってきた。

 ⑤その結果、科学的にはより深い究明が求められるようになった。

 とくに、その研究対象は、マイクロバブルのみでなく、ナノバブルにまで拡大した。

 ⑥また、技術的には、より広い大規模な普及を可能とする技術革新的な実践が求められるようになった。

 そして、社会的には、国民の生活様式と産業をブレイクスルーするような「革命的商品」の創出が期待されるようになった。


 この①~⑥の特徴は、より本質的な究明をめざす指向と、一方で、広大な技術的裾野形成のもとで、そこに洗練された技術的確立をめざすという指向が互いに絡み合い、啓発し合ってきたことにありました。

 そして、その過程において、次の問題と課題を明らかにしてきました。

 (1)偶然を含めた技術的成功の適用事例が生まれても、そこに内在している科学的(物理化学的、生物的)特性を見出さない限り、そこから本質的な発展を得ることができない。

 (2)より本質的な科学的探究がなされても、それが十分でない限り、その成果を技術的発展に結びつけるのは容易ではなく、その確立には相当の困難を伴った。

 (3)(1)における発見や成功には、その先駆的要素はあっても、それが十分に洗練されていない場合が多く、その機械的な適用のあまり、結局は失敗してしまう事例も少なくなかった。

 (4)時には、科学的裏付けもないままに、安易な技術適用のみに走って、成功に至らず、社会的混乱のみを生み出してしまうこともあった。

 (5)技術的には、そのニーズに対応するとともに、そのレベルアップが重要であり、国民や産業界を魅了できる最高に近い水準の技術力に裏打ちされた商品力を有する商品の創出が期待されている。

 これらの(1)~(4)の問題を解決し、(5)の課題に、どう結び付けていくのか、そのことが、切に今日的に問われているのだと思います。

 この数年、その重要性をますます深く認識するようになり、そこでの探索と検討が粘り強く試験されてきました。
 
 その希少な成果を踏まえて、2017年は、その本格的な実践を行っていく時期を迎えるに至っていますので、それを確実に前に進めて行く必要があります。

 その心を、次の高浜虚子の句に寄せて示しておきましょう。

 「春風や 闘志いだきて 丘に立つ」

 これは高校を卒業する際に、先生に示していただいた懐かしい歌であり、以来半世紀にわたって私の胸の中に存在し続けてきました(この稿おわり)。

komatuna
小松菜の茎の成長