この映画のもう一人の主人公が、吉永小百合によって演じられた福原伸子でした。
「母べえ」、「夢千代日記」、「長崎ぶらぶら節」、「ふしぎな岬の物語」など、お母さんや年配女性としての際立つ演技において第一人者の風格と演技力を発揮し続けてきたのが、吉永小百合さんでした。
彼女は、1945年生まれですので、私よりも3歳年上ですが、ほぼ同世代としての人生を歩まれてきました。
そのデビューは、たしか「キューポラのある街」だったと思います。
これは1962年に封切られていますので、私は中学生の時でした。
この時、同級生たちのほとんどが、吉永小百合さんのブロマイドを持っていて、それを見せていただいたことを思い出します。
以来、「青い山脈」、「若い人」、「伊豆の踊子」など、大活躍の女優となっていきました。
私の印象深い思い出の映画は、大学生時代に見た「愛と死を見つめて」でした。
癌に侵された関西の大学生の主人公と東京の大学生の悲恋の実話をもとにした映画であり、この映画のテーマソングでもあった「禁じられた遊び」のギター曲を、当時の大学生たちの多くが弾いていました。
山田洋次監督とのコンビは、二度にわたる「男はつらいよ」の出演からでしょうか。
彼女は、第9作と第13作に登場してきますが、いずれも、思うような人生を送ることができずに、思い悩んでいる女性として登場してきます。
そこに、安らぎを与える車寅次郎との「ふれあい」が生まれるという設定になっていて、ここに山田映画の妙があるように思いました。
とくに、第13作は、島根県の津和野の小さな図書館で働く吉永さんが登場し、決して幸福とはいえない生活を送っている彼女と寅さんの「かけあい」が見事に示されていました。
また、その図書館がある水路に、きれいな鯉が何匹も泳いでいて、それとアヤメが美しく撮影されていたのが印象深い情景でした。
さて、今度は、その吉永さんが、若い大学生であった福原浩二のお母さん役として登場していました。
このお母さんと息子の会話の様子を何度も繰り返し見ているうちに、このお母さん役の吉永さんの演技がすばらしく、それに息子役を演じる二宮さんが、自然に引き込まれていることが解るようになりました。
この姿をずっと眺めているうちに、これは、どこかで観たことがある「かけ合い」だということに気づきました。
その伸子には、安心できる抱擁感があり、浩二は、それが好きで何でも母に話しかけて、ときには、自分が幽霊であることを忘れてしまうほどになります。
この安心感、抱擁感の持ち主は、だれか?
それは、ほかならぬ車寅次郎であり、その兄の妹である「さくら」との会話が、その母と子の会話によく似ていると思えるようになったのでした。
その会話における吉永さんの演技は、すばらしく、おだやかで優しく、上品でした。
名演技とは、このことをいうのでしょう。
この名演技を観て、それは、車寅次郎を演じた渥美清さんに匹敵すると思うようになりました。
渥美清に並ぶ、名優、それが吉永小百合さんではないでしょうか。
そう思いながら、再び映画「母と暮らせば」を数回、繰り返して観ました。
「やはり、私の下した名優の結論は、まちがいない」
このような思いをますます深めることができました(つづく)。
母と息子のような白い彼岸花
「母べえ」、「夢千代日記」、「長崎ぶらぶら節」、「ふしぎな岬の物語」など、お母さんや年配女性としての際立つ演技において第一人者の風格と演技力を発揮し続けてきたのが、吉永小百合さんでした。
彼女は、1945年生まれですので、私よりも3歳年上ですが、ほぼ同世代としての人生を歩まれてきました。
そのデビューは、たしか「キューポラのある街」だったと思います。
これは1962年に封切られていますので、私は中学生の時でした。
この時、同級生たちのほとんどが、吉永小百合さんのブロマイドを持っていて、それを見せていただいたことを思い出します。
以来、「青い山脈」、「若い人」、「伊豆の踊子」など、大活躍の女優となっていきました。
私の印象深い思い出の映画は、大学生時代に見た「愛と死を見つめて」でした。
癌に侵された関西の大学生の主人公と東京の大学生の悲恋の実話をもとにした映画であり、この映画のテーマソングでもあった「禁じられた遊び」のギター曲を、当時の大学生たちの多くが弾いていました。
山田洋次監督とのコンビは、二度にわたる「男はつらいよ」の出演からでしょうか。
彼女は、第9作と第13作に登場してきますが、いずれも、思うような人生を送ることができずに、思い悩んでいる女性として登場してきます。
そこに、安らぎを与える車寅次郎との「ふれあい」が生まれるという設定になっていて、ここに山田映画の妙があるように思いました。
とくに、第13作は、島根県の津和野の小さな図書館で働く吉永さんが登場し、決して幸福とはいえない生活を送っている彼女と寅さんの「かけあい」が見事に示されていました。
また、その図書館がある水路に、きれいな鯉が何匹も泳いでいて、それとアヤメが美しく撮影されていたのが印象深い情景でした。
さて、今度は、その吉永さんが、若い大学生であった福原浩二のお母さん役として登場していました。
このお母さんと息子の会話の様子を何度も繰り返し見ているうちに、このお母さん役の吉永さんの演技がすばらしく、それに息子役を演じる二宮さんが、自然に引き込まれていることが解るようになりました。
この姿をずっと眺めているうちに、これは、どこかで観たことがある「かけ合い」だということに気づきました。
その伸子には、安心できる抱擁感があり、浩二は、それが好きで何でも母に話しかけて、ときには、自分が幽霊であることを忘れてしまうほどになります。
この安心感、抱擁感の持ち主は、だれか?
それは、ほかならぬ車寅次郎であり、その兄の妹である「さくら」との会話が、その母と子の会話によく似ていると思えるようになったのでした。
その会話における吉永さんの演技は、すばらしく、おだやかで優しく、上品でした。
名演技とは、このことをいうのでしょう。
この名演技を観て、それは、車寅次郎を演じた渥美清さんに匹敵すると思うようになりました。
渥美清に並ぶ、名優、それが吉永小百合さんではないでしょうか。
そう思いながら、再び映画「母と暮らせば」を数回、繰り返して観ました。
「やはり、私の下した名優の結論は、まちがいない」
このような思いをますます深めることができました(つづく)。
母と息子のような白い彼岸花
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