本日は、上記「マイクロバブルの特徴」で示した「溶解」についての考察を進めることにしましょう。

 じつは、「溶解とは何か」について、ある学会において大議論が毎回なされるということを耳にしたことがあります。

 当時、この話を聞いてから、私も「溶解」という言葉の使用には、ことさら注意を払ってきました。

 そこで、ここでは、マイクロバブル、すなわち気体成分が溶解して液体になっていくことに限って、その究明を試みたいと思います。

 周知のように、マイクロバブルのほとんどすべては、その発生直後から約9ヘルツの周波数で振動を繰り返しながら、収縮していきます。

 この過程は、マイクロバブル、マイクロナノバブル、ナノバブルへの変化として説明してきました。

 ここで重要なことは、マイクロバブルが、なぜ、短期的には収縮と膨張を繰り返しながら、全体としては収縮していくのかという問題でした。

 すでに、マイクロバブルが収縮して最終的にはナノバブルになっていくという客観的な可視化データが筆者らによって提示されています。

 ここで、すぐに頭に思い浮かぶことは、気泡が小さくなることによって表面張力が増大するのではないかということです。

 たしかに、気泡が小さくなるという問題に限っていえば、それだけ、表面張力を増加させるという主張は成立します。

 しかし、一方で、マイクロバブルの収縮過程においては、その内部の圧力と温度が変化していきますので、これは表面張力を増加させるのではなく、低下する側の要素として作用することになります。

 この圧力と温度の上昇に伴って、界面付近の液体の物性値も変化するわけですから、その表面張力も、その影響を深く受けることになります。

 それゆえ、マイクロバブルの高温高圧化現象を、表面張力のみで説明しようとすることには無理があり、小さくない誤りを生んでしまう可能性があるといえます。

 また、表面張力説は、結果論的考察であり、これによっては、マイクロバブルが、なぜ収縮していくのかを説明することができません。

 そして、その説のなかには、「溶解」という概念が入り込む隙間もありません。

 以上を踏まえて、その「マイクロバブルの溶解現象」をより詳しく考察することにしましょう。

 そこで、ここでは、その溶解を、「マイクロバブル内の気体成分が、溶けて液体成分に変わる現象」と定義しておきます。

 この溶解問題を解りやすくするために、マイクロバブルの溶解仮説に関する下記の概念図を示します。

 
 次回においては、この解説を詳しく行うことにしましょう(つづく)。