宇佐市は、唐揚げ発祥の地、それだけに、唐揚げ店だけでも50数店もあるそうです。

 いわば、唐揚げのメッカであり、唐揚げ料理と文化の源泉地ともいうべきところでしょう。

 中学、高校と、お昼の弁当に、この唐揚げが入っていることが多く、その時には、その美味しさのあまり、大いに喜んだものでした。

 私の脳裏には、かすかに、この時の母が作った唐揚げの味のことが、かすかに残っており、この宇佐での唐揚げ行脚は、その母の味を探し出すことでもありました。

 しかし、その味はなかなか見つからず、「たしかに、美味しいのだけど、どこかが違う」ものばかりでした。

 そして、この探索は、宇佐市の中心市街地から、そのはずれにある院内へと広がっていきました。

 速水から中津に向かう高速道路の途中に、「院内」という出口があります。ここから、山手の方に向かって車で15分のところに「道の駅院内」があります。

 こじんまりとした道の駅ですが、ここには地元産の野菜や食品がありますので、時々立ち寄ることにしています。

 また、この道の駅の入り口付近には唐揚げ店があり、揚げたての熱々の唐揚げを食べることができます。

 ここへは、中津での仕事を終えた後に行くことになり、そこへの到着時間も17時を過ぎてしまうことがよくありました。

 都合がよいことに、この17時から、その日の売れ残りの食物の半額セールがあり、運がよければ、鳥めしや唐揚げがいくつか残っていました。

 これらを「間に合った」という思いで買い込み、帰りの車中でいただくと、それが結構美味しく、いつの間にか、それを常とするようになりました。

 「これで仕事の疲れが吹っ飛んでしまう」

 「結構、おいしいね!」

 「夕食があるけど、ついつい食べてしまうよね」


 毎回、このような軽口が車中で飛び交います。

 これは、きっと、そのわずかな食べ物のせいで、旅が楽しくなったからでしょう。

 ヒトは、ある意味で単純な動物です。

 「この唐揚げは、結構いけるじゃないの?」

 「そうですね。おいしいですね。もうひとつください!」

 隣の運転手は、いつも私の2倍は食べますので、これは、必然の要求でした。 

 これに、鳥めしのおにぎりが加われば、最高の組み合わせになります。

 「なぜ、こんなに美味しいのですかね?」

 「そうだね、きっと、鶏のせいだと思うよ。ここの鳥めしの味は、ほかと違うから、唐揚げの衣というよりは、鶏の肉質が違うことが大きいではないかと思うよ!」

 「旨い味の脂がよく染込んでいますね」

 「そうだよね、旨みが、この脂から出ているようだ。それから鳥肉の旨みがご飯によく出ているよね。きっと地元産の鶏肉を使っているのかもしれないね」

 しかし、この道の駅の唐揚げも確かに美味しかったのですが、それは、私が探し求めている「母の味」とは、どこか微妙に異なるものでした
(つづく)。
karaage
大分県名物の唐揚げ