大分県は、鶏肉の消費量で全国一を誇っています。

 これは、昔から、ごちそうといえば鳥肉であり、かしわめし(鳥めし)、水炊き、唐揚げなど、人気の伝統的な料理があります。

 このうち「唐揚げ」は、大分市別府以北の地域での呼称であり、一方で大分市以南では「とり天」と呼ばれています。

 この唐揚げ発祥の地は、私の故郷である宇佐市だそうで、今では、お隣の中津の唐揚げも有名になっています。

 この唐揚げは、母の得意料理でもありましたので、弁当の中によく入っていて、これを見つけると喜んだものでした。

 こうして、みなさんが唐揚げを好んで食べますので、街の至るところに唐揚げ店が出されています。

 そして、地域の人々は、あそこのが旨い、あの店の唐揚げが好み、といいあって喜ばれています。

 私も、2、3度、国東市武蔵町で評判の唐揚げ店に買いに行ったことがあります。

 唐揚げを注文して、それが出来上がるのを待っていると、次々に予約が入ります。

 それを耳にして驚きました。

 なんと、その注文量が、唐揚げ5㎏とか、3㎏と、私たちが注文する量とは桁違いの注文がなされていました。

 何か行事があると、このように大量に唐揚げを出すのが常だそうで、その話を店主から聞いて、こちらが吃驚しました。

 「どうりで、唐揚げ店がたくさんあっても成立っているのですね」

 他の県では成立ちようがない唐揚げ店の林立を、大分県人の食欲が支えていたのです。

 「これなら、鶏肉消費量が全国一になるわけだ!」

 そこで、子供の頃の郷愁の味のこともあり、私も「唐揚げ味めぐり」をすることにしました。

 まずは、地元国東市において評判の店を聞きだしました。

 ここは、「花ちゃん」という店で、この唐揚げがすっかり気に入りました。

 たれが醤油味で、衣は薄目でした。

 肉の味もよく、「これだとわざわざ買いに行き、お客さんにも出すことができる」と思い、かなり味にうるさい福山の方に出すと、これをおもしろいように食べるではありませんか。

 これは、他の都市にも通用する味だと思いました。

 この店主によれば、鶏肉は宮崎県から仕入れていると仰られていました。

 唐揚げが、大切なお客さんのもてなしとなる、このようなことが通用するのは、なかなかないのではないかと思います。

 さて、こうして私の唐揚げ行脚が始まりましたが、次は宇佐市編、中津編と続く予定です 
(つづく)。
shouno
                    広重東海道五十三次 庄野