6.花瓶の花が長もち

備前焼は、酒や醤油、ワイン、ウイスキーなどの味や香りを改善するといわれています。

長い時間をかけて多くの人々が、それを確かめることで、このようにいわれるようになったのでしょう。

そうであれば、水も同じで、水がよくなることによって、花瓶に生けた花を長期間生かすことができるとされています。

そこで、この問題を日本酒から考察していくことにしましょう。

日本酒業界において、一番悩ましい問題は、せっかく造った酒が半年しか持たないことにあります。

製造日から半年を過ぎると、酒の値段は半落ちになります。

これが、反対に、1年、2年、さらには10年と熟成されてウイスキーのようになることができれば、現在の日本酒業界の衰退を改善し、飛躍的に発展させることができます。

とくに、生酒においては、温度管理が厳格に行われ、その中に含む菌を死滅させないことが重要な課題になっています。

一方、日本酒の味や香りは、「酸味」、「コク」、「キレ」、「まろやか」などの用語によって説明されます。

これらについての詳しい説明は、本ブログ記事の「食品・飲用分野におけるマイクロバブル技術の可能性」のシリーズの後半においてなされる予定ですので、ここでは省略させていただきます。

その味と香りが改善されるというのであれば、この4つの指標のうちのどれか、あるいはすべてなのか、についてより詳しい検討がなされる必要があります。

しかし、私が調べた範囲では、これらについての詳しい究明はないようであり、ここに分け入っていく必要があるように思います。

その際、もっとも可能性があるのは、備前焼、表面の微細な凹凸や鬆(す)の形成によって、そこに微生物が住みやすくなり、その働きによって腐敗を防止し、日本酒の味や香りの改善を行っていることではないかと思われます。

この仮説が成り立つか、その科学的な実証試験を行って確かめてみる必要がありますね。

なお、他のアルコール類(ワイン、ウイスキー)についても、同じことが指摘できますので、ここではそれ以上触れることは差し控えることにします。

次は、花の長もち問題です。この場合、根が付いた花と切り花では事情が異なります。生け花ですと、後者の場合が多く、ここでは、それを前提にして考察することにしましょう。

切り花の場合、それが長もちするには、水分の補給をしやすくすることが重要な問題になります。

周知のように花は、葉と同じように開いていきますので、その分だけ、その表面から水分を蒸発させていきます。

この蒸発によって、花や葉、そして茎の内部において圧力がマイナスになり、下の根から水分や栄養を吸い上げることができます。

ところが、切り花の場合は、その水分の吸収機関がなくなりますので、この能力が極端に落ちてしまいます。

上部においては、水分が蒸発していくのに対し、その補給が不足することによって、花が萎れ、最後には枯れてしまいます。

備前の容器に入れると水が改善され、それによって花が長もちするのであれば、この水が切り花の断面からより吸収しやすくなる必要があります。

さらに、その時の微生物の働きによって、何らかの別の要素(たとえば、肥料成分の分泌、あるいは、何らかの活性作用などが考えられます)が生まれてくるのであれば、花を長もちさせることが可能になります。

これも、より科学的な実証が必要とされる問題であるように思われます。

「備前の七不思議」の奥は深いですね!
大甕

           85m巨大窯の内部を覗く(大甕の上部が鮮やかに見えている)