そろそろ、このブログ記事再開を記念しての、本シリーズも終わりに近づいてきました。

本日で17回目、当初の予定を大幅に超えて書き続けることになりました。久しぶりのブログ再開でしたので、いつもより力が入っていたのかもしれませんね。

前回の記事で示したように、大船渡湾初のバージンオイスターの誕生の可能性は、実験開始後約1カ月目において非常に高まってきたことを確認していました。

後は、その成長を見守ればよいので、次の試験テーマに移行することにしました。

それは、引き続き、カキの成長を観察することに加えて、その影響範囲を調べること、さらには、海底の状況を観察すること、そして、装置の点検をしながら、その連続運転を行って、マイクロバブルの大量発生を維持することなどが、その課題となりました。


もともと、本カキの養殖実験を行った海域は、カキを養殖するにはほとんど適さないところであり、かつては一度も養殖がなされたところではありませんでした。

おそらく、この漁場は、津波で船がほとんど流されていましたので、陸地から近い水域に、残されたわずかな筏を設置したほうがよいという判断が選定されたようで、現場の漁師によれば、ほとんどカキの成長が期待できないところのようでした。

しかし、その不利な条件を背負いながらも、マイクロバブルの大量供給によって、その後もカキは、順調な生育を遂げ(実際は吃驚するような成長であった)、11月中旬には、すでに10月16日と19日の記事で示されたような立派に成長したカキが出現するようになりました。

また、マイクロバブルの影響は範囲は、マイクロバブルとして水中を拡散する領域が20~数十mの範囲であり、さらに、それが溶解して溶存酸素濃度の値として拡散している範囲が、およそ100~200mの領域にわたっていることも、その現地観測から明らかになりました。

さらに、水中カメラを用いて、海底の様子の撮影も行いました。その結果は、海底付近に大量のヘドロが堆積しているものの、それが海流によって(干満差や風による吸送流)巻き上がり、常に流動していて、その停滞による酸欠および無酸素化には至っていないことも確かめられました。

これは、大船渡湾が狭くて長い、そして比較的浅いという地理的条件によって、その海底付近も含めた流動が常に起こっていることで、未だ、漁場として成り立つ能力を有していることも明らかになりました。

さらに、大津、波によって、湾口に会った巨大な防波堤が破壊され、外界の潮が湾内により入り込みやすくなり、これが、カキの成長に寄与したことも重要な変化の要素として踏まえておく必要があります。

最後に、もう1点、強調しておきたい問題があります。

それは、このマイクロバブルを供給したカキが、その成長速度を冬場になっても緩めることがなかったことでした(下図参照、縦軸は殻長、横軸は経過日数である)。



これまでの常識では、冬場になると、カキの成長速度が落ちるのですが、じつは、この常識がまったく成り立たないことが起こりました。

この非常識とは、冬場においても、ますます、その成長速度を増加させながらカキが成長の一途をたどったことでした。

これは、マイクロバブルよる成長促進が、さらに、漁場の好転によって加速されたことを意味していて、これこそ、大津波の恩恵ではないかと推察させていただきました(この稿終わり)。