「今日も来ているかな?」 熱い夏の陽射しが和らぎ、涼しい風が吹き始めた湖のほとりに人々が集まってくる時刻になり、いつもの場所に佇みながら少し辺りを見渡していた。

 「やぁ!今日も会いましたね。お元気そうでなによりです」

 「いやぁ!こちらこそ、先日は大変楽しい会話をすることができました」

 ワインや絵画の話でお互いに盛り上がったことであった。

 「それにしても、ここは良いところですね。毎夕、みなさんが集まってくる理由がよくわかります。湖面にはハスの花が覆われ、その上を涼しい風が渡ってきます。

 水底には、大きな亀が住んでして、昔から、戦争を止めさせた神の存在として大切に扱われているようです」

 「私も、すっかり、ここが気に入りました。孫たちも好きで、ここに来ることを楽しみにしています」

 「そういえば、お顔の色つやがとてもよさそうですね。お元気な様子でなによりです」 

 「そうなんです。おかげですっかり元気になりました」

 「かつては、長い間病気を患っておられたそうですね」 

 「なかなか厄介な病気で、ひどい時には、家からほとんど外出ができないほどでした。それが、ここまで元気になって外国で生活できるようになるなんて、まるで夢のようです」

 「そうですか、健康になられて、ここで、みなさん楽しく生活する、これがなによりも一番ですね」

 「そうなんです。これも、『マイクロバブル』とかいう小さな気泡のおかげです」 

 そういえば、この方と最初に知り合ったころに、この気泡の話を聞かされ、私も、その愛好者であることを告げていた。

 「マイクロバブルが健康改善に役立つ、そのことはよく理解しているのですが」

 こう思いながら、どうして、この国にまで、それを持ってきて愛好しているのか、それがよくわからないので、返答に困っていたら、彼は、こう続けていった。 

 「いやぁ!ハスの花ですよ。この国では、あのようにハスの花が池一面に咲いています。

 昔、この国の王様は、そのハスの葉の上に集まった水滴を集めさせて毎朝お風呂に入ったそうですよ」 

 「お風呂にですか? どうして、それだけ集めたのでしょうか?」

 「ハスの茎には、根から吸収した水分を葉の上まで持ち上げる能力があり、その上昇過程で水も濾過させてきれいなハスの成分を持つ水が葉っぱの上までくみ上げられるのです。

 ですから、王様は、ハスの茎の成分のお湯のなかに入るのです」

 「ハスといえば、お釈迦さまですね」

 「そうです。ハスには、いくつもの健康成分があり、この国では、ハスの胚芽が売られています。

 これをお風呂に入れると健康になるといわれています。お釈迦様と健康改善のイメージが重なって捉えられたのではないでしょうか。この国ではハスのお茶もあります。

 少し苦いですけど、これになれるとなかなかよいお茶といえますよ!」

 「それでは、ハスの胚芽をお風呂に入れて入浴を試されたのですね」

 「はい、これが、結果的に非常によい効果をもたらしました」(つづく)

  

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