「まちづくり」における第3の目標は、「大分空港が立地する先端産業の集積地」というものです。

たしかに、大手電機メーカーの工場が並ぶ「先端産業の集積地」であることには間違いがありません。工業出荷額においても、県内では三番目に位置していますので、この先端産業を発展させることがとても重要です。

ところが、昨年から今年に続いて、大手電機産業の不振は顕著になり、一社で何千億円という赤字を出し、同時に,何千人という規模で人員整理も進められています。

今や、半導体においては韓国企業に、電化製品においては中国の企業に大きくリードされることになり、わが国の産業競争力は世界で27位にまで下がっています。

モノはつくっても、国内はデフレで、そこそこしか売れず、海外では、その商売において負け続け、生産中止、向上廃止が珍しくなくなってきているのです。

こんな状況の影響を受けて、現在稼働中の向上においても人員整理や再編がなされるようになり、最新の工場においても例外ではなくなっているのが現状のようです。

ですから、単なる「先端産業の集積地」ということでは、現在の深刻な状況を乗り越えることができなくなっているのです。

それから、空港に近いという利点も小さくなり、多くの企業が海外へとシフトして、そこで利益を上げようとしていることから、国内では、どこでも進展がなく、苦労する状況が生まれているのです。

これらを踏まえ、「大分空港を生かして先端技術を学びに来るまち」を提案させていただきました。

大分空港は、国内は東京、大阪、名古屋の空港に発着し、同時に韓国にも飛ぶことができます。これらを利用して、全国から、この地に先端技術を学びに来るようにすることが重要です。

1800年前には、ここに全国から修行僧が集まり、学問を積み重ね、修業をしたのですから、今度は、ここで世界をリードする技術を生み出し、常に、そのノウハウを学びに来るところにする必要があります。

そのために、この「まち」を「知的な創造」が常に生まれる集積地にする必要があります。

これには、イノベーションを用意するアイデアと実践に加えて、その構築、さらには現地における人材育成が不可欠になります。

思い起こせば、吉田松陰が「松下村塾」を開いて弟子たちとともに学びながら、彼らを育てた構図とよく似た状況が存在しています。

当時の山口に先端産業があった訳でもなく、藩が飛びぬけて優れてもいませんでした。そんな不利な条件の地から、十分に有利な条件を知恵と実践で生み出していったのです。

そのためには、松陰らが行ったように、このまちに優れた英知を集め、先端産業におけるイノベーションを用意出来るようなシーズの集積を実現する必要があります。

一見不利と思われるところにおいても、自らの足元を見つめ、その下を掘って行けば、思いもしないような泉がこんこんと湧き出てくる可能性があります。

それが可能となれば、みなさんは、それを求めて、この「まち」にやってくるようになるのです。

ここに、従来とは異なる発想と活路があるのではないでしょうか。

こう提案すると、会場のみなさんの目は、ますます丸くなっていました。

まずは、セミナー開講から、そして、「国東下村塾」の準備をすることから始めようと思っています。

つづく

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