「マイクロバブル?」

聞いたこともない、何か不思議な機械が配達されてきまし

た。

「お父さん、これは何ですか。『マイクロバブル』とかいう機械

のようですが、これを、あなたが頼まれたのですか?」

「そうだよ、おれが、先生に特別にお願いして、頼んだ機械だ

よ!」

「これで、なにをするのですか?」

「これはねぇ、風呂に入れるんだよ!聞くところによると、身

体によいそうだよ!」

「そうですかね、だって水と空気しか使わないのでしょ、そん

なものであなたの身体がよくなるのですかね?」と、思わずい

いそうになりましたが、奥さんは、ぐっとこらえて黙ってきいて

いました。なぜなら、初めてOさんが、自分の身体のことを奥さ

んに向ってまじめに語ろうとしたからでした。

「夫がそうであれば、わたしにもよいかもしれない」、こう思う

と、奥さんの方が、その「マイクロバブル」とやらについて興味

を持つようになりました。

「さっそく、今夜から入ってみよう!」

夫は、こういいながら、すぐに機械を設置してしまいました。

こういうふうに気が向くと、すぐに身体が動くところが、夫のよ

いところでした。

説明書によれば、入る前に15分間、マイクロバブルを発生さ

せるほうがよいとのことで、まず、それを実行しました。

15分を過ぎると、夫は喜び勇んで風呂に入りに行きました。

「お父さん、どうでした?」

いつもよりも長風呂をした夫に尋ねました。

「なんだか、よくわかんねーゃ、すこし、ぽかぽかするけど

ねぇー」

そういう夫の顔を見て、今度は奥さんが驚きました。顔に赤

みが差し、色つやのよい元気な顔を、最近は見たことがな

かったからです。それに顔の皮膚が幾分輝いているようにも

思えました。

「それでは、私も入ります」といいながら、奥さんは風呂に向

かいましたが、そこでまた愕然とすることになりました。

「お父さん、風呂のお湯が黒くなっていますよ。これはどうし

たのですかね?」

こういうと、夫も慌てて風呂のお湯を見に来ました。

「これは、どういうことであろうか? 今度、先生に聞いておくわ!」

このときは、それで済んだのですが、次の日以降も、入浴後

のお湯が黒くなっていたので、O夫妻は、そのことが徐々に気

になっていきました。

Default